第49話 お話はまた今度
『さっきぶりだね、アマテラス』
共有されたダイヤモンド・ダストの視界に映るのは、僕が愛して止まない魔法少女アマテラスの姿があった。
先ほど見た時とは違って、嵌めた主が死亡したことにより効力を失ったのか、あの趣味の悪い枷は外れていた。
恐らく僕が――ダイヤモンド・ダストが下した面子の中に、枷の持ち主がいたのだろう。
もう既にいなくなった連中のことを考えても無駄でしかない。むしろ、僕以外の人間がアマテラスに
だが、せっかくの
まあ、流石のアマテラスでもダイヤモンド・ダストの肉体を僕が操っているとは気がつかないだろうが。
それでも、アマテラスと触れ合う時間は大切にしたい。何れ僕の手元に置くことになっても、今のような新鮮な反応は拝めないだろうから。
良く見れば、アマテラスの表情は多少はマシになっている。喜ばしいことだ。他人から渡された壊れかけの玩具に止めを刺しても、僕は満足できない。
これで少しは遊び甲斐が、いじめ甲斐が出てきた。
それでも、今この場で遊ぶには道具も時間も足りない。増援として追加で送り込んだ魔物も、他所の支部から駆けつけてきた魔法少女に掃討されつつある。
時期に、この地下にもやって来るだろう。
横槍が入るのが分かっていて、欲望に忠実になれる程は節操のない変態ではない。断じて。
「……っ!?」
この場にやって来たアマテラスは、ダイヤモンド・ダストと床に転がる複数体の氷像を視界に収めると驚愕の表情を浮かべる。
(……この反応を見る限り、アマテラスはこの連中の正体は知っているみたいだね。さっきの思い詰めた表情は、今までの常識が全て嘘だったことに対する動揺も含まれていたのかな?)
初めて出会った時のように、正義を信じるだけの無垢なヒロインではないのだ。今のアマテラスは。
全てを救うことが可能になるかもしれない程の力にも覚醒し、この世界の真実も知ってしまった。
それでも、彼女の瞳には少しの不安の色が見え隠れしつつも、目の前の誰かを助けたいという意志が宿っている。
そういう人物であるから、僕は彼女に――。
(……物語の終盤でお決まりの「今明かされる衝撃の真実ゥ!」を告げる役割は盗られた上に、その場面を見ることはできなかったけど、これで次の――最終段階に入れる!)
「……貴女。ダイヤモンド・ダストさんじゃないよね?」
一人で内心盛り上がっていると、アマテラスがダイヤモンド・ダスト――ではなく、その向こう側にいる僕に声をかけてきた。
一瞬驚いてしまうが、ダイヤモンド・ダストの顔で笑みを浮かべると、すぐに聞き返す。
『ん? 何を言っているのかな? この体はどこからどう見ても、ダイヤモンド・ダストそのものじゃないか。そう思った根拠は?』
「……前にアリサちゃんが操られていた時の様子と似ていたから」
『正確にはちょっと違うけど、まあ正解で良いよ。それに、こいつらから大体のことは聞いているよね? 『アクニンダン』の『ボス』は実は――みたいな話』
「……うん」
僕の問いに、頷くアマテラス。
『なら、話は早い。この通り、世界を裏から支配してきた悪ーい魔法少女達は、全員死んでしまいました。
彼女達が使用していた洗脳や認識改竄の魔法はやがて効力を失い、世界は大混乱に陥ってしまうでしょう。
まあ、何だかんだで誰かがトップに立って『魔法庁』は再編されるし、少しは混乱は収めるでしょう。
仮初めの平穏はやって来るでしょう。
だけど、その隙を魔物は、『アクニンダン』は見逃してくれるでしょうか?』
「……何でっ!? 少なくとも、『アクニンダン』は……『ボス』は世界平和を目指していたんだよねっ!? どういう方法かは分からないけど、ちゃんと話し合えば、これ以上人を殺す必要はないはずだよ……!」
『あー、その辺の話は聞いてないのか……。もう時間はなさそうだし、次に会った時に話してあげるよ。僕の――『アクニンダン』のアジトでね。
君には必ず来て欲しいから、そこの彼女も連れて行くよ』
「あ、アリサちゃん!? いつの間にっ……!?」
会話の隙を突いて、ダイヤモンド・ダストの影に潜ませてていた『シャドウ』さんの分体に部屋の隅で転がっていたウィッチを回収する。
アマテラスへの人質も確保した。完全な包囲網が完成する前に、撤退させてもらうとしよう。
『じゃあね、アマテラス。月並みな言葉だけど、この子を返してほしかったら、『アクニンダン』のアジトに来てね。アジトの空間座標は、この紙に書いてあるから』
「待って!」
『足止めはよろしくねー』
「っ!?」
回収したウィッチを片手で抱きながら、もう片方の手で
それに虚を突かれながらも、アマテラスは瞬時に武器である刀を構える。
しかし、彼女の戦闘態勢が整う前に、数体の魔物を時間稼ぎ要員として呼び出す。
悔しそうに歪むアマテラスの表情に興奮しつつも、彼女に背を向けて全速力で撤退を開始した。
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