第36話 下剋上
「くっ……!? フラン……! お前、裏切ったのか!?」
「正解です。……でも、『ボス』が悪いんですよ? 先に僕の地雷に触れたのは、『ボス』ですから」
そう言いながら、僕は立ち上がり足元で痛みにうめく『ボス』の質問に答える。
「……地雷? 一体何のことだ? まさか、アマテラスのことか?」
「逆に何かあると思いますか? アマテラスは僕が先に見つけた獲物で、理想通りの魔法少女です。いくら『ボス』でも、彼女に手を出すのは許可できません」
「そんなことで……!」
「そんなこととは、酷いですよ。『ボス』にだって、譲れないものの一つはあるでしょうに。それが僕にとっては、アマテラスだった。ただ、それだけのことです」
先ほどは言えなかった本音を『ボス』にぶつけるが、まだ油断はできない。僕が自傷したとは思わずに、回復させようと近づいてきた瞬間を狙って、僕の肉体に同化させていた『シャドウ』さんに不意打ちを仕掛けてもらい無事に成功。
けれど、流石は『ボス』。全然致命傷にはほど遠そうだ。『シャドウ』さんに拘束してもらっていなかったら、僕の首は今頃地面に転がっていただろう。
「……何故、心臓がないのにお前は生きて――! もしかして、お前。魔法によって、自分の肉体に手を加えたな?」
「またまた大正解です。『ボス』の手が入った心臓がある限り、勝負の土台にも登れませんからね。心臓を引っこ抜いても、生きられるように頑丈な魔物の細胞をブレンドしたものを突っ込みました。
本当はアマテラスとの戦いでお披露目したかったんですけど、背に腹は代えられないですから。
せっかくですので、僕の新しい名乗りを聞きます?」
「正気ではないな……! その考え方も、やり方も……! そんなものに儂が興味あると思う?」
「……まさか、悪の組織のトップやっている人に正気を疑われるとは、僕も予想していなかったです」
そう会話しながらも、『シャドウ』さんには分体を『ボス』の肌から注射する形で体内に放ってもらう。物理的なダメージだけでの無力化は現実的ではない。
内側から肉体の支配権を奪うことで、より確実な勝利を狙う。
「――これは。ちっ! 今までの会話は時間稼ぎか。儂の体内に『改造人間』の分体を産みつけるとは、つくづく趣味が悪いな、お前は……!」
「褒め言葉と受け取っておきます。『ボス』がやりたかったことは分かりませんが、『アクニンダン』のことは心配しなくて良いですよ」
「お前、もしや――」
「――じゃあ、おやすみなさい。貴女が残してくれた組織も、貴女の肉体も有効に使ってあげますから」
■
「ふう……ようやく一息が吐けそうかな? 大活躍でしたね、『シャドウ』さん」
「■■」
不意打ちをした上で、『シャドウ』さんの分体による支配。これだけやっても、完全に安心できない所が厄介だ。
恒常的に『ボス』の自由を奪うとなると、『シャドウ』さんにはずっと張り付いてもらう必要がある。もう護衛を頼むことができない。
まあ突貫工事とはいえ、複数の魔物の細胞を取り入れた僕の肉体は、以前までの戦闘能力が皆無という弱点を克服した。
心臓は既に元に戻しているので、これまで通りに『生体改造』も使える。
これで隙はなくなった。
「……よし、休憩はほどほどにしておかないとね。やるべきことは多いから。ダイヤモンド・ダストの『調整』と平行して、『ボス』の方も『調整』しとかないと。
それに、他の幹部達への対応を考えておく必要があるなぁ……。実力行使で黙らせるにしても、『シャドウ』さんは戦力に数えられないし。
やっぱり、あそこでウィッチを失ったのは判断を間違えたかな? いや、あの時の状況で仕掛けても、アマテラスに倒されてただろうし、問題はなかった。うん」
自分を納得させる為だけの独り言は終わった。
「――じゃあ、始めようか。『アクニンダン』の新しいボスとしての仕事を」
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