腹減りトーキング

あと二十分で講義が終わる。

腹減ったな。

こんなに腹が減ったのは久しぶりだ。

やべえ、音が鳴る。

耐えろ、恥ずかしいだろ、やばいやばい。


<昼何食うんだ>

なんて?誰の声だ?

聞き覚えのない低い声。

周りは女子しかいないもんな。

このなにも近くで。

<何食うんだって>

低い声だやっぱり。

耳元、というよりも脳に響いている。

まさか、まさか自分の腹の音か?

<ようやく気づいたか>

おいおいおい、そんな。

そんなバカな話があるか?

<ある>

返事してるよこいつ。

<こいつじゃない、お前だ>

た、確かにそうだけど、

<もっと大きな音を出すぞ>

やめろやめろ、もうすでに視線を感じてる。

あと18分。

<いくぞいくぞ>

「やめろ」

やべえ、声出してしまった。

もうすでに脚光を浴びている。

悪い意味で。

<ははは>

はははじゃないんだよ、笑うな。

しんどいしんどい。

俺も腹が減ってる。

<早く、食え>

食えるもんなら食ってるよ。

なんでよりによって今なんだ。

<10.9.8.>

おい、おい、なんのリミットだ?

<7.6.5.4>

もういい、鞄に弁当がある。それがある。

<3.2>

食うから、もう黙ってくれ。

『おい、何弁当食ってる』

こうなることはわかっていた。

しかし、しかし止められない。

『食うのをやめんか』

やめられないんだ、止めてくれ。

<次は斜め前にいる彼の弁当だ>

体が言うことを聞かない

『立ち上がるのをやめんか』

どうにもならない止めてくれ。

食っても食っても足りぬ。

<次は後ろの彼女のサンドウィッチだ>

『こら!!』

<面倒なことになった、次は食堂へ行け>

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