くしゃみ

それほど大きくはない定食屋で

昼飯を食べることにした。

2人がけの席に座る。

周囲にはサラリーマンが3名ほど。

町外れにあり、まだ昼時前だ。

私はそこで生姜焼き定食を注文した。

スマートフォンを

弄りながらしばらく待っていると、

特徴的なくしゃみが聞こえた。

余韻を残すような変なくしゃみである。

もう一度その音が聞こえた。

私だけが気づいたのか

それが異変だと感じてしまったのだ。

誰もくしゃみをしていない。

皆が皆、箸で食べ物を食べているのだ。

誰もくしゃみをしていません。

またもくしゃみの音が聞こえた。

またも、またも。

明らかに近くから聞こえる。

くしゃみの音、くしゃみの音。

あたりの面々が気づき始める。

誰が、いったい誰が。

くしゃみ、くしゃみ、くしゃみ。

「お待たせいたしました」

私の元に生姜焼き定食が届けられた。

「よくいらっしゃるんですよ」

店員の女性が私に言ってきた。

もう一つくしゃみが聞こえた後に、

私の目の前の椅子が勝手に後ろに下がった。

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