第28話
やばい。
このままじゃ千都さんに迷惑がかかる。
現れた二つのラインに息をのんだ。
このまま証拠隠滅…。
いや、無理だ。
ここのごみ箱に捨てたところで簡単に見つかる。
「結愛」
「………」
「出てこい」
千都さんの声に冷や汗が流れる。
怖い。
反応を見るのが怖い。
怖いよ。
「結愛、出てこないなら無理矢理開けるぞ」
「ッ……」
そんなこと言われたら出るしかない。
カギを開けてゆっくりと扉を開くと、千都さんは私の持つスティックを奪い取った。
「っ……やっぱりな」
「ごめんなさい…ッ」
「は?」
「だって千都さんは嫌だから、毎回、あの…」
「誰が嫌だって言ったよ」
千都さんはくしゃりと笑って、私の体を抱きかかえた。
高くなった目線にパチパチと瞬きを繰り返す。
「嬉しいに決まってんだろ! あー、奇跡だな。俺の望みを叶えてくれるなんて神様やるじゃん」
「え? え?」
「ずっと欲しかったんだよ。お前との子供」
初めて聞く千都さんの想いに目が熱くなる。
「俺はそれなりの歳だけど、お前はまだ若いから負担にならないようにと思って言ったことねぇけど」
私のことを思ってくれてたんだ。
千都さんが望めば、私が否定する理由なんてない。
私は千都さんが好きなんだから。
千都さんが私を好きになってくれるずっとずっと前から好きだったんだから。
「わたしもうれしいです」
「俺も嬉しい。ありがとな、結愛」
こくこくと何度もうなずきながら、あふれる涙を袖でぬぐった。
「みんなに報告しようぜ。今日は宴会だな!」
千都さんに抱きかかえられたまま、私は彼の首に腕を回して抱き着いた。
大好きな千都さんとの子供を授かれるなんて幸せ以外のなんでもない。
こんなに幸せになれるなんて、数年前までは想像すらしていなかった。
この家に来て本当によかった。
千都さんを好きになって本当に本当によかった。
このことで海外への旅行はなくなり、私の両親に会う日程がずれた。
私が両親に会いに行くのではなく、両親のほうが帰国することになり数年ぶりに顔を合わせる。
それが今日にまで迫った。
あれから病院に行ったりして、いろいろ検査をしたりなんだかんだして二か月が過ぎた。
両親が護衛をつけて霧島家まで来るらしく、心臓がバクバクと音を立てる。
私を捨てたと思っていた両親が、まさか自分を守って国外で匿われていたなんて…。
本当のことを話してほしかったけど、本当のことを話されたところで私は今の生活を受け入れてはいなかっただろう。
なんだか複雑な気持ちだ。
それに再会が結婚&妊娠の報告だなんて…。
気まずいにもほどがある。
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