第2話、聖女とブートキャンプ。

 ヴィクトリアの長い軍歴は10歳のときから始まる。

 子爵領の教会で聖具適正判定器を光らせた。

 これは全国民が受けさせられるものである。

 すぐに女神軍から徴兵令状あかがみが届いた。

 拒否すると異端認定され、人でなくなる。

 正確に言うと人として扱われなくなり、一族郎党身ぐるみ剥がれて火刑というやばいものだ。

 すぐに、聖女養成所、通称、フルメタルメイデンに放り込まれた。


 これから二年間のブートキャンプが始まる。


 このとき、子爵家でヴィクトリアにつかえていた侍女アンネマリーがついてきた。

 2歳年上で姉妹のようにすごしていたのである。


 180センチのガチムキ。

 カーキグリーンのTシャツが筋肉で膨らんでいる。

 ジャングル迷彩のアーミーパンツにアーミーブーツ。

 顔の半分が火傷におおわれていた。


「これからお前たちを指揮する、ハートウーマン軍曹であるっ」

「退役した元聖女だっ」

 頭には、シスターがかぶるアレが唯一元聖女であることを主張している。

 前にはヴィクトリアとアンネマリーを含めた十歳前後の少女たち。

 ハートウーマン軍曹と同じ格好をしていた。


「マゲッツ(ウジ虫)どもっ」

「これから返事は、イエスマムッだけである」

「ここではお前たちを、肌の色や人族、亜人、王族や貴族、平民などで差別しないっ」

「なぜなら、等しく価値がないからだっ」

「「イエスマムッ」」

「今のお前らは、悪魔の前で腹を裂かれて、中のクソをまき散らすゴミ袋にすぎんっ」

「だが、このキャンプで少しは使えるゴミ袋にしてやろうっ」

「返事はっ」

「「イエスマムッ」」

「声が小さいっ、腕立て五十回っ」

「「「イエスマムッ」」」

 昨日までは普通の少女たちだ。

 半分以上が途中で泣きだした。

「淑女が人前で泣くなっ、淑女教育はどうした、マゲッツどもっ」

 聖女である以上貴人の護衛とかもある。

 淑女教育も叩き込まれるのだ。

「追加で五十回っ」

「「「イエスマムッ」」」


 このようにしてブートキャンプの初日が始まった。



 ハートウーマン軍曹を先頭に、聖女候補たちが二列に並んでケイデンスを歌いながら走っている。

 当然ヴィクトリアとアンネマリーもいた。


 ザッザッザッザッ

「ワン、ツー、スリー、フォー、ファイブ、シックス、セブン」

「「「ワン、ツー、スリー、フォー、ファイブ、シックス、セブン」」」

 ザッザッザッザッ

「我ら無敵の女神軍っ⤴」

「「「我ら無敵の女神軍っ⤴」」」

 ザッザッザッザッ

「我ら聖女は最強だあっ⤵」

「「「我ら聖女は最強だあっ⤵」」」

 ザッザッザッザッ

「悪魔のチ〇コをかみちぎれえっ⤴」

「「「悪魔の〇ンコをかみちぎれえっ⤴」」」

 ザッザッザッザッ

「悪魔のチン〇は三本だあ⤵」

「「「悪魔のチ〇コは三本だあ⤵」」」

 ザッザッザッザッ

「お前によしっ、私によしっ、全てよしっ」

「「「お前によしっ、私によしっ、全てよしっ」」」


 他、射撃やサバイバルなどきびしい訓練が二年間続けられた。

 無事、卒業し戦場へ送られる。

 幸い最強の聖具である、巨大杭打機ロンギヌスの槍を扱うことができ、激戦区をアンネマリーとともに転戦した。

 必死に戦っているうちに少佐まで昇格していたのである。


 

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