第11話 コンクール明けの部活〜恵side〜

 今日はコンクール明け最初の合奏練習。

 コンクールが終わってから、先輩後輩の仲が一層縮まっているような気がしていた。

 悠くんの周りにもよく美咲ちゃんや玲奈ちゃん、美穂ちゃんがいることが多い。

 

 今日の合奏では、始まる前は「軽くやって合奏の楽しさを思い出してもらう」と言っていた悠くんが、コンクール時期同様の強い言葉で指揮を振っていた。

 そんな悠くんの悠くんらしさに思わず笑みが溢れそうになってしまっていると、指回しを少し油断してしまい、音を外してしまった。


「フルートピッコロは指回しを落としすぎ!コンクール時期にできてたことなのに急にできなくなるな!!」


 と、お叱りの声がする。

 やっちまったぁと思いながら、指揮者の顔を見ると、彼は一瞬だけニヤッと笑っていた。

 ここぞとばかりに指摘したことに、怒りたかったが、付き合っているからこその反応に、やはり頬が緩んでしまう。


「トランペット!さっきから音程ズレてるぞ!右から1人ずつ吹け!」

「ぎゃーーーー!」

「相川、叫ぶな!!じゃあお前からだ!」

「いじめだーーー!」


 みんながクスクスと笑う。

 コンクール時期の悠くんの厳しい合奏の中で時折起こる漫才のような掛け合いは、ピリついた合奏の雰囲気を緩和させるため、悠くんとしては敢えてやってるのだろうと思う。


 モヤッとするなぁ…


 最近悠くんが後輩や他の同級生と仲良くしているのを見ると、そう思うことが多い。

 綾華ちゃんはまだいい。あの人は悠くんを恋愛的に好きになることはないと思うし、悠くんと綾華ちゃんはお互いに信頼しているため、そこに私が介入することは野暮だと思うし、そこの関係こそが今の悠くんを形成していると思うから。


◇◆◇◆


「やっほー!ゆーとん!」

「おい、野沢、せめて先輩つけろあと敬語!!」


 美穂ちゃんはクラリネット歴が長いため、去年1年間悠くんに教えていた期間がある。そのため、悠くんに対して敬語を言う習慣を作れなかったから、ずっと同級生のようにタメ口で話している。

 帰り道で遭遇した玲奈ちゃん、美穂ちゃん、美咲ちゃんと怒鳴りながらも楽しそうに話している悠くんを見ていると、心がざわつくのを感じた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ヤンデレ後輩が噂を流し続けるせいで、俺の高校生活がピンチです ゆうくん @yuchan8

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ