紅をのせた君の頬は、真っ白な肌に相まってまるで熟れた桃の様だ。

 

 熟れた桃は手で皮がぺろりと剥けるらしいが、今の君の頬にはそんな勿体ないことはしたくない。いつまでも留めて置きたいほどに美しく、儚く、憂いを帯びた艶のない頬。

 

 その昔、中国では少女に桃だけを食べさせて、その少女の排泄物から血肉に至るまで甘くさせ、貴族に愉しまれるという、なんとも信じ難い話があって。

 

 桃は、産地では硬いまま食べるそうだ。

 

 僕は産地の出身でもないから、とろりと蕩ける桃しか知らない。

 

 白い絹のような今の君にも、どちらが好みか聞いてみたいものだ。

 

 君の灰が甘く、蕩けそうな香りがしていた。ふと思い出した逸話さ。

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