第67話

誰かが、窓を開けたらしい。



気持ちの良い風が、俺の髪を揺らした気がした。





眩しい…な。鳥が鳴いてる。





「………ん………」



「ハル……、どうだ?体」



「……おれ……は、どの位寝てた……?」





まだ上手く呂律が回っていないようだ。



あぁ、意識がはっきりしていくにつれて…体中から痛みが襲って来る。




「4日だよ」





窓辺に寄り掛かったままそう俺に告げたスバル君も、何故か頭に包帯を巻いていて傷だらけだった。





「CYBER BOXXの事聞いて、駆け付けた時には、お前はもう床で死んだように眠ってたよ」


「……………」


「俺はライブハウスの事情には詳しくなかったのがイたかった。お前が前線にいるなんて」




そ…か。スバル君は、俺を助けるために、そんな怪我までしながらCYBER BOXXに乗り込んでくれたんだね……。




「……リサコとミツルに電話して来るわ。お前のボロボロの顔見て、泣いてたぞ、2人共」


「……スバル君……」




喉が渇いたな。声が俺の声じゃないみたいだ……。





病室の外に出ようとしていたスバル君が、振り返ったのが視界の端でわかった。





「……誰も…死んでない……?」






体が、痛くて動かない。



俺は白い天井を眺めたまま訪ねた。





「誰も、死んでないって…言って……。」





俺の言葉に、スバル君は少しの沈黙の後呟いた。

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