第39話知るべき者と知るはず者。

(副護長ドントル「ってことで…セレーヌ王は嘘をついているだろう。セレンを殺害させたい本当の理由があるはずだ。その理由をさぐる数年でもある。"大森シン'ッて言ったか?。数年後…いつになるかわからねぇがまた逢おう。」



ーーー現代へ戻る。ーーー(山本たいき視点へ)


(大森シン「ってことなんだけど…長過ぎたかな?やっぱ。」

(俺「俺が…王子……?そんで……あぁぁ!何が何だが」

俺が王子セレン…?シャナが探し続けた王子。

この俺が?。そんな、俺にはそんな記憶はない。だが…六歳までの記憶もない。もし…その六歳までの六年間を獣人たちの世界ですごしていたのなら…。

(大森シン「やっぱ困惑してるなー。んじゃ、シャナちゃんに感想聞かせてもらおうかなー?」

(シャナ「………そんなはずはないです…よ。たいきさんがセレンなんてこと!だって…セレンは"白髪"です。たいきさんは黒髪じゃないですか…」

(俺「!そうだ!!俺は子供の頃から黒髪で…」

(大森シン「たいき。お前にはあるだろ?白髪だったかもしれない証拠が。」

(俺「は…?そんなもん…ない…」

(大森シン「そうかー。じゃ教えますか。たいき。お前…温泉行ったときのこと覚えてるよな?。あの時さ、お前子供の頃からシャンプーやらリンスやらは孤児院にあるものじゃなきゃ痒くなったりする…って言ってたよな。」

(俺「あぁ…。子供んときから俺は"頭皮"が弱くて…」

頭皮…が……。そう。俺は物心ついた頃から頭皮が弱かった。理由は知らない。それが…どう白髪と。

(大森シン「そうだ。頭皮だよ。お前が来たとき白髪だったたら、先生はきっと"黒髪"に染めさせるだろうな…。もし…髪を染めたせいで頭皮が弱くなっていたら?。」

(俺「い…いや!俺には染められた記憶なんて」

(大森シン「おいー。たいき。六歳までの記憶がないんだろ?ならその前後の記憶…こっちに来たばっかの記憶が薄れててもおかしくはない。」

たしかに、子供は大人に比べ頭皮に対するダメージが大きい。


(大森シン「それに。まだ証拠はある。2つ目も温泉に行ったときのことだ。温泉から上がって帰るってなったとき。お前は"シラガ"が多いのを誰かに指摘されてたよなー。」

シラガ…?俺は他の人よりもシラガが圧倒的に多く。ストレスが原因だと…。


(大森シン「つまりー。あのシラガはシラガじゃない。先生によって染められた色が落ちて元の色に戻っていた…。色落ちだ。髪を染められた記憶がねぇーんじゃ色落ち対策もできない。でも色落ちした地毛をお前はシラガと勘違い。」

認めたくない…

認めたくない…

俺がセレンだと。

だがシンによって突き付けられる証拠は妙に信憑性がある、俺=セレンだと思うしかないほどに。


(俺「俺が…獣人で…王子で…セレン…。」

(大森シン「やっとわかってくれたか?。そんでオレはたいきを殺らなきゃいけないんだー。」

(俺「ふぅ…。シン。お前の言った俺を殺す理由が、ただの嫉妬で妬みで…。そんな理由で人を殺めるのか?!」


(大森シン「おー。そうだよ。そんな理由さ。でも、人間ってのはみーんなしょーもない理由で生きてきてるんだよ。オレがお前の正体が王子だと知ったとき…お前がオレと違い"特別な存在"だと知ったとき…どれほど絶望したか。」

コイツ。孤児院と居たときはそんなこと思ってるなんて思わなかった。コイツが俺を妬んでるなんて。

でも…ここでコイツに殺られるわけにはいかねぇ。

(大森シン「んじゃ…ドントルをここへ呼んでヤッてもらおうかな?」

(シャナ「ダッメ!大森さん!やめてっ!」


シャナの叫びと同時。

重たい鉄製の扉がいきおいよく開く音が。

バァァァァーン。

(サソリ男「…山本たいき?!……どうやって毒を……」

(俺「サソリ男!?。」


まずい。ここでサソリ男に乱入されたら俺の負けが色濃くなる。

(大森シン「………毒?ね。やっぱ裏切ったんだ?サッチー。意外だなぁ。」

(俺「?裏切った??サソリ男が?」

何を言ってるんだ。サソリ男はずっと前から俺たちを騙し、潜入していたようなものじゃないか。

俺に対して毒まで撃ち込んで…いや…なんであそこで俺に毒を?たしか、ドントルに「山本たいきは殺した」って言っていたな。アレは


(俺「…!。シン…お前は前からサソリ男の裏切りを予想してたんじゃないのか?。」

(大森シン「うーん?なんで? 」 

(俺「お前の名前が書かれたクーラーボックス…その中の氷。そしてお前のバックに入っていた救急箱…あれはサソリ男が裏切り、毒を打ち込まれたときの応急処置をするために持っていたんだろ?!」

(大森シン「へぇー。やるじゃん。たいき。」

やっぱりか!?。ムシが良すぎると思ったんだ。

一体いつからサソリ男の裏切りを。いや…そんなのタイミングはいつでもあった。シンが俺たちに接触したときに、サソリ男が怪しい行動などをしたんだろう。

シンは…10年ほど前から…この時を計画してたんだから……。

(サソリ男「なっ…わかっていたのか。」

(大森シン「これでサッチーの裏切は確定か…。残念だなぁ。」

何が残念だよ!。全然残念そうじゃねぇ。

きっとコイツの中ではサソリ男の裏切りはほぼ確定だったんだろうな。

(俺「でも…一体なんで?サソリ男……お前はシンたちを裏切ったんだ?」

(サソリ男「………」

サソリ男はシャナの暗殺を盾に俺に接触した…。多分だがソレ自体は計画なのだろう。

でも…何がサソリ男をここまで変えたんだ。

(大森シン「サッチー。オレも気になるよそれ。教えてよ。」

(サソリ男「最初は…そんなつもりはなかった。最後まで大森に付き合うつもりだった。だが山本たいきたちと過ごしていくうちに…気づいた。」

(大森シン「何を?まさか、情が湧いた…なんたしょーもない理由じゃないだろうな?」


(サソリ男「………あぁ。そうだ。俺は山本たいきたちに情が湧いちまったんだ。」


(俺「え?…サソリ男……」

(大森シン「はっ!ふざけんなよ?お前。そんなしょーもない理由で十年の計画を消すつもりか?!。お前は暗殺一家の長男だろ?!!?!」


(俺「シン。お前がそう罵倒できる話じゃねぇだろ!!!。お前もしょーもない理由で俺の殺害を決意した。さっきだってお前は"人間はみんなしょーもない理由で生きてる"そう言ったろ?!あれは人間も、獣人も、同じだろうが! 」


(大森シン「………はっ。言ってくれるなたいき。そうかもしれねぇな。でも、サッチーが裏切ろうが、オレの計画はなんも変わらない。」

(俺「?!」

シンが何か体を反らしている?。何をするつもりだ。




(大森シン「おぉぉぉぉぉーい!!!ドンドォォォォォル!!!」

(俺&サソリ男「??!!?」

シンが言い終わるとほぼ同時。


ドォォォォーン。

(犬護長ドントル「どぉしたぁ!?大森!!!」


ここでドントルまでもが乱入してきた。


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