第5話 ボスの攻略は必死です


 中に入ると、そこには、大きな真っ黒い空間が広がっていた。

 あたりには何も見えない。



 :あれ? ボスいなくね?


 :絶対おるぞ


 :隠れてる?

 

 :というか武器は?


 :そういえばずっと素手で戦っているよな?



 僕はコメント欄を見て気付いた。

 そういえば武器を持っていない。


「武器……すみません買い忘れました……すぐに戻ります! あれ?」


 僕が振り返り、来た道を戻ろうとするも、そこには出口はもう見えなかった。

 どうやらこのダンジョンは、一度入ったら攻略されるまで出られないらしい。



 :まじかよ!


 :やばいやばい


 :出られない!?


 :武器無し一人攻略……


 :ええええ!?


 

「どうしよう……」


 バリッ……モグモグ……



 :お菓子を食うなw


 :余裕じゃないかw


 :緊張感もかけらもないな


 :まぁ……初めてだから……



「!? 上!」


 上に何やら気配を感じ僕は慌てて横に飛び込んだ。

 その時、今までいたところが大爆発を起こす。

 持っていたお菓子は吹き飛び、そのまま地面に散乱し、粉々に砕けた。



 :なんだ!?


 :えげつない爆発だったぞ!


 :ボスだ!


 :あれは?


 

 目の前にいたのは、何やら大きな鳥型のモンスターだった。

 全身ほぼ赤色で羽が黒っぽい、明らかに強そうな鳥が目の前に立っている。



 :でけええ!


 :やっば!


 :あれ何? グリフォン?


 :見た目だけだと、少なくともAランクモンスター以上だろ!


 :でかすぎや、貨物飛行機かよ!



「ピィーー!」


 大きな鳥は、片足を挙げるとそのまま予備動作なしに突っ込んでくる。

 めちゃくちゃな速度で、僕も反射で避けるのが精一杯である。

 そうして振り上げられた鳥の片足は、僕が元居た地面に振り下ろされ、猛烈な爆発により地面が割れた。

 爆風により、僕は吹き飛ばされる。


 「あっつい! 死なないとはいえ、結構嫌だなぁこれ……」



 :くそはええ!


 :なんで避けれるんだよ


 :威力エグ


 :チートやん


 :スピードバケモン、威力バケモン


 :どうやって勝つんだよこれ



 その後も同じ攻撃が続けさまに襲ってくる。

 反撃しようにも、避けるのに体力を使っているので反撃ができない。

 

「ピャーーー!」


 その鳴き声と同時に、鳥が大きく上昇する。

 また、上からの強襲だろうか?

 鳥はそのまま羽を大きく一回はばたかせた。

 その瞬間、猛烈な風が僕を襲う。


「さすがに耐えられない……」


 そのまま吹き飛ばされ、地面に転がる。

 さらにそれを見越したように、鳥が突っ込んでくる。

 僕は慌てて這いながら前進すると、真後ろで大爆発が発生し、再び衝撃波で飛ばされた。

 少しでも遅れていたら粉々になっていたと思う。

 本当に危機一髪だった。



 :やばいやばいやばい


 :なんだよこの敵!


 :死なないでー!


 :大丈夫だよな?


 :↑死ぬことは無いけど、これを見たら死ぬんじゃないかって思うよな……


 :それにしてもあの攻撃受けても壁は無事なんだな


 

 いったいどうすればいい……?

 もし仮に、あの風攻撃からの振り下ろし攻撃はかなり厄介……

 一つ余裕があるのが、振り下ろし攻撃をした後にスピードが速すぎて、鳥が前のめりになるというところくらいだろう。

 とはいえ、復帰もかなり早いので攻撃できる時間はほとんどない。


「攻撃受けても壁は無事? そっか!」


 僕はチャットをチラ見して納得した。

 そう、別に



 :お! 何か倒す手段見つけたっぽいな!


 :まじかよ……


 :わかった風に言ってるが何もわかってないんだろうな。


 :もしかしたら本当に倒し方思いついたかもしれん。


 :思いつけても実行できるかはまた別なんだよなぁ……



 そんなチャットで盛り上がっている中、僕はひたすら、鳥の振り下ろし攻撃を避けていた。

 相変わらずな攻撃速度と、威力が尋常じゃないので、かなり怖い。

 

「まだ? 早くしてほしい……」

「ピャー!」


 と再び、鳥が翼を広げ上昇する。

 このモーションは……



 :来たぞ! 


 :にげてええ!


 

 鳥は僕に向かって一つ大きく羽を羽ばたかせた。

 そう……これこそ僕のやりたかったこと……

 僕はわざと風を受けると、そのまま壁に吹き飛ばされた。

 かなりの速度で壁に激突する。


 「かは! 息が……」


 背中から強打したため、一瞬息が止まる。

 しかし、そんなことを言っている場合ではない。

 早く動かないと僕が鳥に殺されてしまう。


「ピィーー―!」


 再び大きな鳴き声を上げると、鳥が僕に突っ込んできた。

 


 :あああ!


 :これはまずいぞ!


 :吹き飛ばしからのその攻撃はもはや反則だろ!


 ;敵が強すぎる


 :これ普通のボスじゃないよな?


 :立ってええ!

 


 そんなチャットが流れていく中、僕はひたすら気配を感じている。

 僕が避けることができて、かつ敵の攻撃が止まらないタイミングを狙って……

 上から振り下ろしてくる足が見えた。

 後ろにはダンジョンの壁……


「ここだああ!」

「キャ!?」


 僕は足が当たるギリギリかつ、鳥が止まらないタイミングで横に避けた。

 タイミング的には本当に、頭と鳥の足が当たる寸前位だと思う。

 鳥は僕が急に避けたためそのままの速度で、ダンジョンの壁に激突し、大量の羽が飛び散る。

 そうして鳥は大きな土煙と、音を立てながら地面に倒れた。



 :うおおおお!


 :やばすぎやろ


 :今のって狙った?


 :すげええ!


 :本当に武器無しでボスを倒した……


 :いや、何その攻略! エグすぎ


 :スピードが早過ぎてダメージがとんでもない事になったんか……


 

「よっしゃあ!」


 僕は、鳥が動かなくなったことを確認して、両手を大きく伸ばす。

 すると何やら前に大きな箱が現れる。

 これがダンジョンでいうところの宝箱なのだろうか?



 :宝箱!


 :これは期待できるぞ!


 :宝箱大きいなw


 チャット欄を見る限り宝箱らしい。

 とりあえず僕は、ゆっくりと宝箱のふたを開けたのだった。

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