第2話 那須湯本温泉に殺生石を見に行って来ました!!②
…さて、そんな妖しい奇岩、殺生石の上へと風景を見上げてみれば、標高の高い山肌にはようやく色づき始めた木々の葉が秋の陽光を受けて光っていました。
そしてそのさらに上方には、青空を突っつくような那須茶臼岳山頂が姿を見せていました。
しかし山頂付近の空は雲の流れが早いようで、今は青空と思うまもなくスルスル雲塊が流れて来てあっという間に山容を隠したりもしていました。
殺生石に背を向けての帰りは、往路の向かい側、左回りの木道を歩きます。
すると、この殺生石溶岩原の西側端には赤いほっかぶりをした無数の地蔵が並んでいました。
九尾の狐の毒気から、この地への訪問客を護るためなのか?…傍らには「千体地蔵」の表記板が立っていました。
そしてこの千体地蔵付近から、さらさらと流れる小川がこの溶岩原の谷あいを下っています。
この川は「湯川」という名前で、殺生石溶岩原の下端を横切る県道17号線の橋の下をくぐって那須湯本温泉街の方に流れて行きます。
「湯川」と言ってもお湯が流れてる訳ではないんだけど、橋の下の川床は一部硫黄分が付着して白黄色になっていました。
そして橋の下流70〜80メートルくらいの所には温泉ファンの間では有名な公衆温泉浴場「鹿の湯」があります。
これはもう是非にでも入らずにいられようかってな訳で私はさっそく車からタオルやらシャンプーやら持って行きましたよ。
「鹿の湯」は湯川を跨ぐように、手前側に玄関のある木造建物が、川を渡り廊下で繫いだ向こう側にやはり木造の浴室建物がある構造になっていました。
玄関を入って下足箱に靴を入れて受付に行くと、係のおばさんから、
「お客さん、ここは強酸性の硫黄泉なので石鹸シャンプー類は使用出来ませんよ」
と注意を受けました。
「えっ、そうなの?」
戸惑う私に、
「湯治目的の湯屋なので、基本はお湯にゆっくり浸かるだけの感じなんですよね……入浴されますか?」
とさらに説明を受けました。
…しかしそれもまた面白そうだし、せっかく来たんだから私は入浴することにしました。
ちなみに入浴料は500円でした。
渡り廊下を進んで浴室棟の脱衣場で服を脱いで浴場に入ると、中はなるほどいかにも湯治場といった雰囲気の造りになっていました。
大きな浴室には、1.6メートル辺くらいの木枠の四角い浴槽が六つ並んでいました。
浴室の床は木のスノコ状になっています。
お湯はもちろん白濁の硫黄泉で、特筆すべきは各浴槽ごとに湯温が違うんですよ。
41度から始まり、最も熱い浴槽は48度となっています!
今現在、月曜日の朝なのに入浴客はけっこう来てました。
地元の人なのか他の地から湯治に訪れた入浴客なのかは分からないけど、年配の人がお湯に浸かったり、湯上がり中でスノコ床の上で世間話してる人などが寛いでいましたよ。
…ただ、46度と48度浴槽からの湯上がりらしき爺さんは身体が真っ赤っ赤になっていました。
私は無難に43度と44度のお風呂に浸かってへよ〜んたらりんとリラックスいたしました。極楽極楽。
って訳で温泉から上がってポニャリン顔になった私はもう、殺生石の毒気などさらっとお湯に流した気になって車に乗り、高原の道を下ってゆるゆると家路についたのでした。
完
触発ルポ! 那須湯本温泉殺生石を見に行って来ました!! 森緒 源 @mojikun
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