第7編 チョコレート
1 かかし
雨の中、遠くを見ている君一人。休んでいいとは言われても、できることは一つだけ。一人孤独にずぶ濡れに見ているものは何だろう。
2 糸電話
つぶやいた言葉を一つ耳にして、声にならない声が出る。言えずじまいの想いを繋ぐ、糸はか細く千切れそう。
3 羽
見上げると広がる空は深すぎて、気が付くと体が全部落ちていく。どれだけもがいてみたとして、戻ることは叶わない。
4 輪
締め付ける痛みに思わず喉震え、逃れそうとしてみても、もはや外れることはなし。人は祝福、そう呼べど思いはそろえた靴に向いている。
5 通話
懐かしい声を聞きたいそう思い、電話を取り出しかけてみる。思い出の花がどんどん咲いていき時間も忘れて話してる。聞こえてるのはツー、ツー、ツー。
6 チョコレート
口に広がる酸味の波をブラックコーヒー波乗りで、切り抜けていく昼下がり。残る余韻は甘々くそれが心に尾を引いた。
7 ワクチン
痛みより恐怖が勝ったあの日から、絶えず体に流れてくウィルス一味のなすがまま。強張る肩は痛みを呼ぶ。
8 切り株
枯れて朽ちる時を待つ、ボロボロの年輪を指でなぞると浮かぶのは、まだ何もなかったあの日の事、汚れていったあの日の事、顔を出したその日の事。
9 鉄の板
道路に敷かれた鉄板で、道行く人がビートを打つ。重い足取り入り混じり、なのにリズム軽やかに心だけは踊ってる。
10 パントマイム
身振り手振り仕事のふり。生きている確かな感覚見当たらない。手に取ったはずの電話は手にはない。それでも誰かと通話する。
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