創作怪談
目が
ワンルームの狭い部屋。家具の位置は把握しているし、暗闇の中でもトイレまで問題無く歩ける。
あの冬の夜もいつも通り、真っ暗闇の中を歩きトイレに着いた。
当然トイレの中も見えないが、困る事は無い。
慣れた動作で暖かい便座にゆっくりと腰かける。
この時感じた違和感に、もしもしっかりと向き合っていたら。
そう考えると今でも背筋が寒くなる。
眠気が勝ったため、多少の違和感は無視して用を足す。
何事もなく用便を終え、再びベッドに戻って深い眠りにつく。
翌朝、いつも通りのルーティンをこなす。
顔を洗い、歯を磨き、トイレへ。
ひんやりと冷たい便座に腰かけたとき、ふと昨夜の事を思い出した。
あの時感じた違和感は何だったのか。
答えを出せないまま事を済まし、トイレットペーパーに手をかける。
その時である。
紙に何か書かれている事に気付いた。
電気をつけなくてよかったな
黒いマジックペンで書かれたその文字を読んでようやく、昨夜感じた違和感の正体を知った。
うちのトイレには便座ヒーターなんてついていなかったのだ。
じゃあ、あのとき俺が座ったのは……。
今はもう引っ越して、その部屋がどうなったかは知らない。
そこには四年ほど住んだが、その間同じような出来事が年に数回起きた。
短編 パイオ2 @PieO2
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