第16話 やっぱり俺はモテない。
俺はソフィアと一定の距離を取りながら校舎に入ろうとする。だが、俺の意図を汲み取らず、ずけずけと近付いてくるソフィア。
流石にここまで来たら分かる。どうやら俺は今更になって本当にソフィアに好かれたらしい。いやなんで今更!?もう彼女いるんですけど!
あと一日、まじであと一日早くこんな態度にしてくれてたら俺ソフィアと付き合ってたって!なんでだ!この世界は俺に恨みでもあんのか!
はぁ、嫌だなぁ、けど言わないと男じゃないしな〜、はぁ、嫌だなぁ。
俺は覚悟を決めてソフィアに言う。
「ソフィア、ごめんだけど俺から距離取ってくれない?」
「照れてるの?」
ソフィアは上機嫌に俺に話してくるが、俺が本気で言ってる顔なのが伝わったのだろう。少し顔に影ができる。
「やっぱ、そうだよね。今まで冷たい態度とってきたのに、都合がいいよね。………ごめん」
ソフィアはそう言って俯き、声が震えていた。
ん?待て!どうゆう事だ?あの手紙を読んでいないのか?か、か、華蓮に殺される!!
※手紙は華蓮が握りつぶした。
「いやそうゆう意味じゃ――」
――バシッ
俺はその先を言うことができなかった。俺の彼女、烏丸鏡花に急に抱きつかれたからだ。
「りゅーせいっ、早速浮気〜?」
「鏡花!?」
えっ、ちょ、なんか、色々というか、何というか、おっぱいというか当たってるんですけど!?あ、強く締め付けてきた。
「えっ?」
やはりソフィアは知らないようで、どうゆう事みたいな表情をしてる。次から手紙なんて、かっこつけずにメールで送ろ。
鏡花はそんなソフィアを見て、少し笑って言う。
「私、烏丸鏡花です。龍征の彼女やってま〜す」
「え、はぁ、えっ!?」
ソフィアがめっちゃ驚く。まぁ、知らなかったらそうなるよな。ていうか今はそれよりヤバい。何がヤバいかって?俺の俺がヤバい。
「だから〜龍征は私のだから狙ったらダメだぞッ」
ソフィアは事態が飲み込めたのか、俺に確認の視線を向ける。俺はそれに対し頷く事しか出来なかった。
だってマジで本当ヤバいもん。考えてる暇ないって前屈みなるって!て言うか鞄を前に持ってきてるもん。
「………なんだ、そうゆう事ね。早く言えば良かったのに。おめでとう龍征」
ソフィアはそう笑顔で言って、早足で学校に行ってしまった。けど俺は気付いてしまう。昨日の笑顔と今の笑顔が違う事を。
けど、これでいい。まだ、出会って日数しか経ってないからダメージはまだ少ないはずだ。
俺のどこか寂しい表情を感じ取ったのだろうか鏡花が俺を見つめて心配そうな表情を作って言う。
「私と付き合った事後悔してる?」
「いいや全く。なんで?」
「だって、あの子の方が私より全然可愛いし、綺麗だから」
「まぁ、見た目だけなら普通にソフィアの方が好みだけどな」
「………」
鏡花は一瞬、素が出かけたがその後、可愛くむくれた表情を作る。
「けど恋愛に正解なんてないだろ。見た目が好みだからって幸せとは限らない。だから、一番大事なのは正解にする事だ」
「ふ〜ん。それなら私の方が可愛いって言った方が正解になったよ」
「………努力する」
「ふふ、じゃ私7組だから。じゃあね〜」
「ああ、昼休みにまた」
そう言って俺と鏡花はそれぞれの教室に向かった。
『正解にする』か、彼女だっつぅーのに鏡花の心を開くには、しばらくかかりそうだな。
だが、やる事は変わらない。烏丸鏡花を全力で愛する。ただ、その事だけ考えて努力するのが俺の漢気だ!
◆
私、ソフィアは一人トイレで悩んでいた。
「なんだろ………」
ちょっとショックで少しだけ寂しいこの気持ち。
昨日初めて、龍征の事が分かった。アホで無鉄砲で根は優しい人だってことを。
多分それを知ってから好きになったのかな?
「………けど、分からないや」
恋なんてしたこと無いし、これが人を好きになる気持ちかどうかも確信が持てない。
もしかして
「………好きになりかけ」
その言葉が妙にしっくりきた。確かにそうだ、まだ龍征との誤解が解けて1日しか経っていない。好きになるには時間が少なすぎる。
「ハハ………恋、してみたかったな………」
私は自分の中で少しだけ大きくなっていた、王子様の存在を消した。
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