蔓生成

 なんだか足が痛い。ちょっと歩いただけでこの痛さなのか?

 残念な気持ちで頭が溢れそうなので、今だけ痛覚鈍化で痛みを和らげておく。


「じゃあ、魔法から強くしていくか」

「アルス、やり方は覚えているか?」

「ああ、たぶん大丈夫だ」


 まずは植物魔法の蔓生成で蔓を生成する。現れた蔓は、一メートルほどの長さだった。

 生成した蔓を拾い、観察しながらヤドに尋ねる。


「これ、なんの蔓か分かるか」

「いや、俺も知らない」


 俺の覚えている蔓よりも、これは木の根といったほうが正解かと思う。ある程度強度はありそうだ。少ないが、ついている葉っぱはギザギザしている。記憶にある限り見たことのない植物だ。

 もう一本、蔓を生成する。先に生成した蔓とほぼ同格のものが現れる。これって一体何本生成できるんだ?

 ヤドの魔法の説明によると、魔法やスキルは使用を繰り返すことで成長する可能性が高いということだった。


「この蔓を生成し続ければ、魔法が成長するってことか?」

「俺の理論的にはな」


 ヤドも魔法の成長や洗剤能力の解放については、完全に把握しているわけではないと念を押される。


「大量に蔓を生成した場合、俺になんらかの害はないのか?」

「魔力の限界に到達したら吐き気や眩暈がするはずだが、その身体からは芳醇な魔力を感じるから相当数出せるはずだ」


 吐き気や眩暈か……それだけなら問題はない。今後のためにも蔓を何本出せるかやってみよう。

 それから、俺は蔓を何度も生成した。

 1,2,3,4,5,6――35,36――。

 吐き気も眩暈もしない。まだまだいける、と思う。

 蔓が五十本を超えた辺りで、ヤドがはさみを上げ俺を止める。


「待て待て、ちょっと待て。気分はどうだ?」

「大丈夫だ」

「本当か?」

「ああ、全く問題ない」


 ヤドが首を傾げる間、生成した蔓を確認すれば、最初のものよりも五十番目の蔓が太くそして長くなっていた。

 こうやって成長の証があると、断然やる気が出るな。

 なんだか嬉しくなって蔓を眺めていたら、自分の指から血が滲んでいるのが見えた。何かで切ってしまったのか? 痛みは感じなかったが――

 おお、痛覚鈍化か。掛けたままなのを忘れていた。

 痛覚度運化を解除した途端、気持ちが悪くなりせっかく食べた魚を砂浜にぶちまけてしまう。

 ヤドが間一髪で悲惨なシャワーを避け、叫ぶ。


「おい! いきなりどうした!」

「気持ち悪りぃ……」


 どうやら痛覚銅貨で吐き気や眩暈も抑制されていたようだ。これは使えるかもしれないけど、今は気持ち悪い。


「ああ、もう一回吐く」

「おまっ! こっちはやめろ! あっち向けよ!」


 叫ぶヤドを避けようとしたが、耐え切れずに本日二度目の嘔吐をした。


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