第3話 下の方の毛の話。その後。
高校生3年の頃、下の毛の話について書いた。私は体毛が薄い。髪の毛や眉毛はしっかり生えているのに首から下の毛がない。腕や足の産毛がほとんど生えないだけではない。体の真ん中のもほとんど生えない。よく見ると微かに産毛がある程度。わきの下も同じ。高校生の頃は、これがコンプレックスだった。腕と足はそれでもいい。どうせ生えたら脱毛するだろうから。わきの下も生えなくていい。友人たちの話を聞いていると、脱毛にかける労力はかなり大きいようだ。
けれど体の真ん中の毛は事情が違う。たぶん多くの人は脱毛しない。少なくとも高校生だった時、あそこを脱毛している人はいなかった。高校生の時にも書いたけれど、生えない私は合宿や温泉に行くのが恥ずかしかった。なんか視線を感じるからだ。仲のいい友達には事情を話してあるからいいものの、毛の話をするほど仲良くない人にはどう思われているか気になった。たぶん、ネガティヴなことを思われているのでは、と。
高校を卒業して大学に入って、しばらくして彼氏ができた。付き合い始めて最初に思ったことは、毛がないことを変に思われてしまうのではないだろうかということだった。あるいは性的に色々なことをやりすぎている音などは思われはしないか、ということだった。実際私はその頃男性経験はゼロ。
彼氏である以上、セックスすることになる。ということは裸を見られることになる。無毛状態は部屋を暗くしても隠せない。触られた時点でわかってしまうからだ。びっくりされないように事前に話をすべきか。でもそういうことすることこそ、おかしいではないか。初めての彼氏だったので、男の人が毛についてどういうふうに思うのか想像がつかなかった。ネットの世論などは当てにならないし。
実際、彼氏に初めてその部分を触られた時、「あ、すべすべだね」と言われた。コンプレックスをもっていた私は傷ついた。傷つけるつもりはなかったんだろうけど、勝手に傷ついた。それで、しばらくセックスには積極的になれなかった。それを察してか、結局彼は毛のことについて、いろいろ聞いてくるということはなかった。そのことがまた私を傷つけた。
この彼と別れてイギリスに留学に行って、しばらくしたらまた彼氏ができた。彼氏はフランス人だった。この彼が私の体をいつも褒めてくれた。その毛のない部分も。おかげで少しずつ無毛に自信が持てるようになり始めた。
そしてイギリスは日本より裸にオープンだった。女の子同士でも。テニスや水泳の後、更衣室ではみんな全裸で身支度をする。体についてもあれこれ意見交換をする。で、わたしのその部分についても早速いろいろと質問が飛んできた。綺麗!どうやって脱毛してるの?触っていい?などなど。体質で生えないんだ。すっとコンプレックスなんだ、というと、いいじゃん!わたしのみてよ、ほら、脱毛がきれいにいかなくてこんなだよ、と。たしかに、ポツポツと剃り跡が見える。触らせてもらったけど柔らかくチクチクする。
そこで気づいたのだけれど、イギリスでは、出身国を問わず半数以上が真ん中の毛を脱毛していること。毛に対する文化が違う。イギリスに来て無毛の私はヒーローになった。それで、もうコンプレックスを持つのをやめた。留学した最大の成果の一つだ。
留学から帰ってきて、最近日本で付き合い始めたのが女の子だった。その子が脱毛信者だった。おかげで今でも毛のない自分に自信を持ち続けられている。それどころか、私のはだかを男の人にもみてもらいたいとさえ思うようになってしまった。彼氏がいない以上、そういう願望が満たされる状況は考えられないのだけれど。
そして毛があるということがどんな感じか、一度味わってみたい。髪の毛は人よりもたくさん生えているので、少し下の毛に回して欲しいと思ったりはする。
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