特別な聖霊力を持つ者は、己の竜を喚び竜と絆を結ぶことができる、赤の界。
スオウミ王国の双子の姉弟、王女ヴァルと王子カイルは、隣国キルドランの突然の侵攻により祖国を追われ、そこから新たな冒険が始まります——
スオウミ侵攻の背景や、この世界に迫り来る危機、そして双子の意外な運命……
重厚かつ精緻な設定を持ちながら、本作は無駄なく端正な筆致と構成とで、わかりやすく楽しく読み進められる魅力的なファンタジー巨編です。
優れた長編作品の例に漏れず、読むほどに面白くなっていき、後半は圧巻です。
主人公の二人の造形も見事です。
高い聖霊力を持ちながら、最初はお姫様気質が抜けず、新たな環境に馴染むのに苦労するヴェル。彼女の成長していく様がとてもリアルでした。
偉大さと普通さの見事な融合具合が、ヴェルを魅力的なキャラに仕上げています。
一方、非常に美しく聡明でありながら、聖霊力がないために自己肯定感が低いカイル。
英雄的な資質を大いに持ちながらも、竜を召喚できないという理由からヴェルとは別の道を進むことを決意する彼は、己の知性一点がけで大きな勝負に出ようとします。こちらも目が離せません。
もちろん、彼らを取り巻く傍キャラクターたちも、個性的で興味深い面々が揃っています。
さらに、竜との交流もこの作品の重要な要素と言えるでしょう。
人より遥かに長く生き多くを識る竜は、馴れ合うことなく、けれど様々な示唆を与えてくれます。
ヴェルとカイルという2本の軸糸が、やがては周辺の細かな糸も巻き込んで太い一本へと収束していく様は実に見事です。
●こんな方におすすめ
・奥深い設定をもつ重厚な王道異世界ファンタジーにどっぷり浸りたい
・世界の秘密を解き明かしたり、世界の歴史や構造に思いを馳せるのが好き
・やっぱりドラゴンやろ! ドラゴンと仲良くしたい! ドラゴンファンタジーこそ至高!
この作品、単体でも完結していますが、やはり続けて同シリーズの『聖霊の守護王Ⅱ 光の魔女』も読むとさらに楽しさが倍増するので、読了後はぜひそちらに進まれることをお勧めします。