第5-1話 田畑静雄と高橋美夏の新幹線内での出逢い
妻子持ちの専業農家を営む田畑静雄四十五歳が今回、兄の長女娘が大阪で結婚式をする事になった。本当は親戚一同が一緒に大阪まで行く筈だったが、彼の母親の具合が悪くて、病院に連れて行ったりしていて、親戚は皆、一足先に行ってしまい、母の面倒を妻に見てもらうために今回の式に妻は急遽、欠席した。
静雄は一人で青森の津軽の田舎から出て来たが、新大阪行きの新幹線のホームを見付けるのに東京駅でウロウロして、やっと乗る事が出来た。そんな静雄が新幹線の中での思い掛けない、そして生涯、忘れられない出来事を経験することになる。
それほど混んでいない昼過ぎの新幹線で東京を出発、大阪に向かう車中、ケータイに入院した母の事で病院や妻からの電話が何度も鳴り続け、 その度に静雄はデッキに出て殆ど自分の席に座る事ができない状況が続いた。
やっとこれで一息が付けるかなと最後の電話を終えて座席に戻って母の事で今後どうしようかと悩みながら窓の外を見ていると、「こんにちは! ホントお忙しそうですねぇー!?」と隣にいた女性が話し掛けてきた。
電話をしていたので周りの事など気にしていなかった静雄だった。良く見るとこれが絶世の美女で、うら若き女性だった。彼が住む青森の村には絶対に居ないタイプだった。 年は三十歳代前半ぐらいに見え、背は百六十センチを少し超えるぐらいで髪はショートだ。
ショートが似合う女性は美人だと静雄の妻が言っていたので、如何にも仕事ができますといった感じに見え、都会に多いオフィスレディというのかそんな感じの女性に見えた。
彼は訛っているから、ニコッとwって会釈しただけで恥ずかしいから小声で、「あっ、
綺麗な、それも彼よりもだいぶ若い都会的でハイセンスな女性から声を掛けられて、それだけで動揺してしまった静雄。
「電話で話しておられた言葉に、親しみがあって温かみがあり良い方言だなって思って聞いていました」と美夏。
「
「田舎はどちらですか?」
「青森の津軽だ」
彼女は静雄の座席の通路を挟んで隣の席で、電話が鳴る度に何度も席を立っていた彼を見ていた事を知らされたので、こんな若くて綺麗な女性にそんなに見られていたと思うと、 それだけで彼は恥ずかしかった。
静雄と美夏との距離が近過ぎて、あまりジロジロと彼女の身体に露骨に視線を移せなかった。彼女からの会話を聞きながらも少しずつ観察していると、ツーピースのスーツで、中にはブラウスで、その下には結構大きめのバストがあり第三ボタンまで外して開いていたので、白く透き通った豊かな谷間が少しだけ覗いていた。彼はそれだけでドキドキしていた。
靴は黒のパンプスで五センチほどのヒールに肌色のストッキングを穿いていた。話していると片腕を組みながら窓の外を覗き込む時など彼女の腕の上にたわわなバストが乗っかるようになって柔らかそうに揺れていて時折、細くて長い脚を組み直す際に太腿が露わになり静雄の大好きな脹脛の締りが良くてアソコの締りの良さの想像まで膨らませていた。
彼は一礼して自分の席に座っていると彼女が、「隣、良いですか?」と言った。二人は自由席だったので、「どうぞ!」と言って彼女を窓側に座らせた。
「彼女は何でオラのような田舎者さ興味持ったのが、イマイチ分がねがったが、隣さ来てってしゃべるばってそれ阻止する理由はオラにはねがった」と思っていた静雄だった。
また美夏は一人で話した。「会社は東京で実家も東京です。今回は長いお休みを頂いたので大阪の大学時代の友人と明日、逢う事になっていて、その後はまた東京で仕事です」。
「そうだったんだね」と相槌を打った静雄。
「あまり具合が良くない母の看病もしなくてはいけないので仕事との両立とで疲れていて最近、ストレス解消が出来なかったので、友人に会ってパッと飲もうと言う話しになったんです」と美夏は明るく言った。
「大変だよね、家族さ病人がいるどさ、オラも今、
化粧は清楚で、元々顔立ちが上品だから、それなりの良い所のお嬢さんなんだなと思っていた静雄。
「東京には
「私の実家も品川区の西五反田っていう所なんですよ!」と目をランランと輝かせて美夏が言った。
「近ぐだがね? オラの兄貴は東五反田っていう所さ住んでいで、
「はい、実家とは五反田駅を挟んで東西ですよ。亜細亜さんには私も両親と良く行きますよ。美味しいですものね」
美夏の実家と静雄の兄が住むのが同じ区であり隣町だったので話しが盛り上がった。そこに美夏の婚約者の
「美夏、今、何処?」
「新幹線の中」
「何処に行くんだよ?」
「大阪の友人と飲む約束で」
「そうだったんだ。今、俺、本社に居て美夏の部署に行ったら連休だって言われて」
「何で連絡をくれなかったの?」
「忙しくてさ、明日、鹿児島に帰る」
「そうやっていつも連絡を貰えないで急に言われても困るのは私の方なんだけど」
「ごめん」
「仕方ないから今回は諦めるから」
「そうだな、じゃぁな!」
「うん」と言って電話を切った美夏だったが、彼は鹿児島に転勤してから既に三年の月日が経ち、口約束で婚約をしたが、逢うのはいつも連絡なしで急だったので、この三年間で逢えたのが数えるほどだった。
先日、緑子から若いカレが出来てセックスをしている話しを聞いていた彼女にとって、もう二年以上も異性の肌に触れていなかったので自身で慰めているだけだった。
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