第3話 部屋B→斧!→腕!

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「図書館? 急に?

 血の跡もないや」



 ストーリーが繋がっていないどころか、途切れてしまったような部屋。桐生は不思議そうだ。

 あまり怖くなさそうな桐生の説明に、朝霧がほっと力を抜いた途端、ポケットベルが「リリリ」と鳴った。



「ひぇあ!?」


「拾えるものがあるんだね」



 部屋をライトで照らす。

 紙切れがあった。机、床、長椅子にひとつずつ。



「また紙? 新聞の切り抜きみたいだ」



 桐生が何気なく、机の一枚を拾った。

 その瞬間。



 どごん!!



 すさまじい音。

 扉がないほうの壁が破壊された。

 ぬうっと姿を見せたのは、黒づくめの服、頭から黒い布を被った大男だった。

 手には巨大な斧を持っている。

 


 安全地帯と思い込んでいた場所に、唐突なモンスターの出現。

 呆然としている桐生の体すれすれを斧が振り下ろされた。

 がん!! と鈍い音がして、床に斧が刺さった。



「ちょ、ちょっとちょっと!?

 これは本格的すぎないかな!?

 スレスレすぎて危険だと思う……わあ!!」



 桐生の言葉に聞く耳を持たず、斧男は床から斧を引き抜き、再び大きく振り上げた。

 これはお化けのはず。ここはお化け屋敷のはず。

 なのにこの異様な雰囲気、異様な攻撃はなんだ。



「令一! 逃げるよ!!」


 

 桐生は、硬直して動けない朝霧の手を掴んで引っ張った。

 さほど広くない部屋。逃げるには扉を抜けて他の部屋に行くしかない。

 部屋Cへ続く扉のドアノブを握る。開かない。回らない。鍵がかかっている!?



 がつん!!



 扉に斧が食い込んだ。

 ほぼ、桐生の顔のすぐ前だった。

 ちょっとでも桐生が動いていたら。この斧は。



「洒落にならないな!」



 桐生は斧男を避けながら、部屋Fへの扉のノブを回した。

 開いた!飛び込んだ!!

 朝霧を先に押し込んで扉を閉め、体を使って扉を抑える。



 しーん……。



 扉を越してまで襲ってはこないようだ。

 桐生はほーっ、と大きく息をついた。なんなんだろう、あの鬼気迫るお化け。

 ずっと無言の朝霧はというと、無言でぼろぼろ泣いていた。



「あああ、ごめん。

 さっきのは僕も怖かった。

 びっくりしたね」



 朝霧をぎゅっと抱きしめる。朝霧は桐生にしがみつきながら。「ごのべやも、ごわいぃ……」と訴えた。



 さっきの乱闘で懐中電灯を落とさなくてよかった。

 桐生はあらためて、部屋Fを照らしてみた。



 ここは、拷問室?

 まるで魔女裁判で使われるかのような、残虐で趣味の悪い拷問器具がたくさん置いてある。

 どれもこれも、使い込まれたような跡があるような。



 部屋の中央には、革ベルトで人を固定出来るタイプの椅子があった。

 椅子は血でべったりだ。



 椅子の上になにかある。

 肩から引きちぎられたような、血まみれの子どもの右腕だった。

 ポケットベルが、「リリリ」と鳴った。



「え。

 えええ。

 コレを拾えってこと?

 腕を? 血まみれの腕を??」


「ぜったいいやだーーーー」



 朝霧が泣いて懇願する。

 しかし、ポケットベルは今まで、進むためのヒントを確実に示していた。

 さっきの新聞の切り抜きは、化け物登場のきっかけになったような気もするけれど。



 ……新聞の切り抜き?



「令一、怖いのはいったん置いておこう。

 新聞の切り抜き、読んでみない?

 あんな目に遭ってまで手に入れたんだから、ヒントが書いてあると思う」


 

 

 

     つづく

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