第16話 ヘタレだなー、宏人


 

 その頃、祥太に電話をかけてしまった宏人は、すっかり血の気の失せた顔をして一人部屋の中でうずくまっていた。


 祥太に電話したのに、出てくれなかった。

 呆然として、声を出せない。

 自分はどうして電話してしまったのか。


 電話して何を話すつもりだったのか。

 いや、それは考えていた。

 なんで、今朝、家に来なかったの?

 いや、違う。今、何しているの? って聞こうと思ったのだ。


 混乱している。宏人は何も手が付かなくなってしまった。

 すくっと立って、裕一に会いに行こうと思った。しかし、さっきも祥太の家に行ったら、二人とも留守だった。

 祥太は友達の家に泊まりに行き、裕一はバイトだ。

 まだ、バイトから戻っているとは思えない。


 自分の知らないことが増えていく。

 取り残されているような気持ちになって、不安でたまらなかった。

 宏人はスマホの連絡先を検索しながら、瑞穂を見つけた。

 思い切って、瑞穂に連絡する。瑞穂はすぐに出た。


「はーい」

「あ、あの、僕だけど……」

「宏人からの電話って珍しいね。嬉しいけど」

「あの、相談があって」


 宏人は、瑞穂に祥太が電話に出てくれなかったことを伝えた。瑞穂は、少し考えるように間を空けた。


「うーん、そっかあ、祥太くん風邪じゃなかったんだ。友達のところにいんだねー」

「うん……」

「だって、友達のところにいんでしょー」

「う、うん……」


 そうだ。なんで、自分は電話しちゃったんだろう。

 祥太を遠ざけたのは、自分なのに――。

 黙ってしまった宏人を少し心配したのか、瑞穂が明るく言った。


「考えすぎだよー。向こうは、宏人のことなーんにも考えてないと思うよ」


 グサッとする一言だ。

 宏人は泣きそうになる。

 何にも考えていないから、友達のところに行ったのだ。もう、自分は友達でもなんでもないのかもしれない。


 どうしてこうなったのか。どんどん祥太から離れていってしまっている。


「宏人、めっちゃマイナス思考のループにはまっちゃってるね。そういうときは深呼吸よ。それに、世の中、祥太だけじゃないよ。私がいるじゃん。私は宏人の味方だよ」


 宏人の味方。

 瑞穂の言葉に少し元気をもらった。


「う、うん。ありがとう瑞穂」

「へたれだねー。ま、そういうところも好きなんだけどねー」


 瑞穂はどうしてこんな僕を好きだなんて言えるんだろう。聞いてみると、「顔が好き」と言われて苦笑する。

 女の子はみんな、僕の顔が好きなんだな。

 でも、祥太には気持ち悪いと言われた。

 あれがどうやら、ひどいトラウマになっているようだった。


 瑞穂と少し話をして落ち着いた。ありがとうと言って電話を切る。


 でも、ヘタレだなー、と言われた言葉が少しこたえた。

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