第13章 帰還

 気がつくとみっこは見慣れた、けれども懐かしい雑木林の中にいた。達郎とケンカをして。その後教室で怒られて。頭にきて逃げ込んだ、校舎裏の雑木林だ。

 見た限り、季節はあの日と同じ秋と冬の狭間。問題は具体的にいつなのかだが……

 その疑問はすぐに解けた。遠くから錠前いじりが大好きな、湯河原先生の声がする。

「まちなさい、みっこ……!」

 物陰から伺っていると、あの日のみっこが涙を浮かべながら走り去っていくのが見えた。

(頑張ってね、私。色々あるけど、さ)

 みっこは立ち上がり、自分の姿を見直す。まず、ずぶ濡れだ。次に、着ている服の質感がこちらの世界のものとは大きく違っている。正直、一度帰って着替えたほうがいい気もするが。

「思い立ったが吉日ってね」

 まずは、謝ろう。でも、ちゃんと話も聞いてもらおう。今のみっこは幸い伝えたい思いを言葉にすることは慣れている。

「なにせ私は舌戦乙女らしいからね」

 とは言ったものの、なぜ服が違うのか、なぜ濡れているのかをどう説明したものか。

 みっこはそんなことを考えながら湯河原先生を追いかけた。

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