第16話

R「はぁっはぁ.....安全だって聞いてたけど、やっぱりちょっとだけ怖かったぁ......。」


真っ暗な路地裏をシスと一緒に速足で抜けて、見覚えのある大通りまで来た私達は、一息ついてから急いで荷物を取りに向かう。今はまだ外は明るいけれど、だいぶ日も沈んできて夕暮れ時になってしまっていた。


R「シス、私荷物と乾かして置いた下着取って来るね!」

S「あ.....はい、私もお手伝いしますねライゼ様。」

S「てっきりそういうご趣味なのかと......。(小声)」

R「ち、違うから!さっきまで水浴びしててそれでついでに下着を洗って乾かして所だったの!」

R「でも、向こう岸で人影を見たから.....洗った直後だったし乾かす余裕とか無かったから仕方なく置いてきたのよ。」

S「そうだったのですね.....。」


シスは何か言いたげな感じだったが、何も言わずそのまま私について来て荷物をまとめるのを手伝ってくれた。私はその間に乾いた下着を履いて、もうすっかり冷たくなってしまっている缶詰を拾い上げてリュックに詰める。


R「それじゃぁ、急いで拠点に帰りましょ?」

S「はい、畏まりました。」

S「私が先頭に立ち、ライトで照らすので行き先を指示してください。」

R「う、うん。分かったわ。」


私が前に立って歩こうとすると、シスは私の腕を引っ張り自ら前に出て暗くなってきた辺りを照らしてくれる。暗くなってから外に出るのは初めてだったからなのか、いつも見ているはずの廃墟の景色は、また違った風に見えて来る。静まり返って暗くなった廃墟からは何処か寂しさと不気味さがあり、水が落ちる音や何かの物音などが聞こえて来てそれがより一層不気味さを際立てているような気がしたのだ。

それでも、今はシスがいてくれるから不安や恐怖を感じない。


R「その先ずっと真っすぐよ。」

S「畏まりましたライゼ様。」


やっと拠点に着いた私は、寒い身体を震わせながら焚き火に火を起して温まり、バスタオルにくるまりながらまた、冷めてしまった缶詰を火に入れて温める。


R「シスも座って。」

S「はい......。」

ウィィィィン(機械音)


連れて来られた子犬のように、端っこで立っていたシスに私は声を掛けると、シスはゆっくり私の方に近寄り横に腰を下ろす。


S「ライゼ様は、ずっとここで住んでいらっしゃるのですか?」

R「う~ん......分かんない。」

S「?」

R「えっとね、私....前の記憶がないのよね。」

R「5日前に、公園のベンチで目が覚めてね......。」

R「そこから前の記憶が無いのよね.....。」

ウィィィィン(機械音)


こちらに振り向いたシスは、少し困った顔をしながら前を向き。


S「そうなのですね。」


とだけ応えてそれ以上は何も喋ることなく、静かな時間だけが過ぎて行った。


R「シスは?」

S「私ですか?」

S「私は、3日前に崩れたショッピングモールの中で目が覚めました。」

S「何故電源が付いてしまったのかは、不明ですが......私は、辺りを見回し状況を確認した後に生存者がいないかサーモグラフィを用いて生体反応を確認しましたが、何故か痕跡等は無く、いたのは見知らぬ生命体だけでした。」

R「やっぱり?」

ウィィィィン(機械音)

S「やっぱりとは?」

R「えっと、見たことない動物とかいたんでしょ?」

S「はい。」

R「シスも知らないってことは、本当に記録にない生き物なんだなって思って......。」

ウィィィィン(機械音)

S「正確には、記録にないわけではございません。」

R「え?」

S「いわゆる伝承や物語、創作物などで登場する生き物や、生物と生物を掛け合わせたような.....いわゆるキメラと呼ばれるような物です。」

S「それらに非常に告示しておりました。」

R「そ.....そうなの?」

S「はい。」

R「凄いね。」

S「はい?」

R「何でも知ってるんだなって.....。」

S「いえ、私に記録されているデータは、2038年以前のネット情報に記録された物でして、それ以降の更新は私がスリープモードに入ったため、記録が一切ございません。」

R「えっと....そ....そうなんだ?」

S「はい。」

S「それから、そろそろ缶詰を引き上げたほうがよろしいかと。」

R「え?あ!そ、そうだね。」


ずっと焚き火の中に入れたままだった缶詰を木の枝で取り出すと、また冷めるまで待ってから開封する。今日初めてのご飯であるため、今更ながらお腹が鳴り空腹だったことを思い出す。


R「えへへ......お腹空いた。」

R「シスは食べ.....れないか.....。」

S「いえ、食べることは出来ますが......現在エネルギーは十分に蓄えられているため、必要はアリマセン。」

S「なので遠慮せず食べてください。」

S「私は、ライゼ様がしっかりと食事をし健康でいてくれることが、機械である私の役目であり仕事です。」

R「えっと....そ....そうなんだ.....じゃぁ、いただきます。」

S「はい。水分補給もしっかり行い、身体の調子を整えてください。」

S「現在....ミネラルが不足しており、身体が冷えやすく疲れやすい状態となって......。」


といろいろシスが真剣に説明してくれているんだけれど、私にはあまり理解出来ていなかった....。でも、誰かとこうやって話したり、心配されたりするのはとても久しぶりに感じて、今までの寂しさや不安が無くなるような感覚があり、嬉しくなったと同時に本当に人がいるのかという不安も同時に出てきた。

もし.....この世界では、私一人しかいないんだったらと思うと.......。

そんな不安に駆られながらも食事を終えて一息つくと、シスにすぐに寝て休息をとってくださいと催促されて、そのまま私は寝かしつけられてしまったのだった。


<寝る前にノートに書いた日記>

- 5日目 -

今日は、水浴びをしに行くと遠くの方で人影が見えたの。

急いで向こう岸まで渡って行き確認すると、既に移動した後がありガッカリしていると、後ろから物音がして振り返るとシスがいた。

シスは、人型の機械で凄い技術?で作られたロボットで.....人の健康と安全を守る?のが役目のなんばーえす1えー05いー?No.S-1A05Eです。←シスに書き直された。

そのロボットがいて、私達はなんやかんやあって二人で行動する事になりました。

それで向こう岸から急いでこっちまで戻って来て、暗くなったから急いで拠点まで帰って来たのよね。

だから、今日は特に探索とかも出来てないし、明日は今日消費した水を分をまた明日作らなくちゃ......。

いろいろ不安もあるけど、取り敢えず一人じゃなくなって会話相手も出来たから、少し寂しさや不安は無くなったかも。

それじゃぁ、隣で早く寝なさいって最速するロボットがいることだし、私はもう寝ることにします。


<制作物>

焚き火場 (石で囲んだだけ。)

拠点の扉 (陳列棚を組み立てて置いただけ.....ただ、それだけでも拠点に熱が少し籠るようになった。)

かまど (タイルと石で積み上げた簡易的なかまど(?))


<持ち物>

巨大なリュックサック

in[ノート1冊、筆記用具(シャーペンと消しゴムのみ)、水の入ったペットボトル1本、栄ヨーバー2本、マッチ1箱]

空の缶詰:3缶

栄ヨーバーの袋(ゴミ)

サバイバルナイフ

汚れたバターナイフ2本

汚れたフォーク1本

綺麗になったフォーク1本 New

汚れたスプーン3本

タオル2枚 (使用中)

バスタオル1枚 (使用中)

懐中電灯:0/500

スポンジ:2個 (未開封)

スポンジ:1個

スコップ:1個 

マッチの箱1箱:39/50 (使用中)

1缶:賞味期限:2028/08/11 カンパン100g (未開封)

1缶:賞味期限:2023/01/01 フルーツミックス! (未開封)

1缶:賞味期限:2025/12/01 ウマっとコーン (未開封)

1缶:賞味期限:2027/08/20 カンパン50g (未開封)

1缶:賞味期限:2017/02/10 缶みかん。 (未開封)

1瓶:大きな瓶に入ったお酒?1000/1000 (未開封)

※ラベルが剥がれているためお酒っぽいという事しか分からない。

水の入ったペットボトル1本:48/100

空のペットボトル2本:0/100

キッチンを美しく!:???/80

綺麗な凹んだ小さな鍋:0/193

錆びたバケツ

in[錆びたハサミ2個、錆びた針12本]

大量の木の枝

段ボールの束

廃材(木の板や紙等.....。)


現在時刻:夜(?)

外の天気:晴れ。

気温:とても寒い(?)

健康状態:健康。

本作の主人公:R = Reiseライゼ

機械人形:S = Sythシス

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