第8話 後悔と告白
私は目の前が真っ暗になった。
ただお姉ちゃんみたいに素敵な彼氏がほしかっただけなのに。
二兎が書いたっていう訳のわからない世界に飛ばされて、そこで二兎と結婚式みたいなことをしてキスまでして、元の世界には戻ってこれたけど左手には外せない指輪が残っていて―――。
あんな変なガチャガチャ回さなければよかった。
「今日はもう疲れたから帰って寝るわ...。」
「え~、新作読んでくれねぇの?」
「狙われない学園の新作だったら読んでみたかったけど、それはないみたいだから無理。」
「つれねぇな~」
「明日もまた来るから。」
二兎はなんでこんなに平気でいられるんだろう。
彼の指にだってまだ指輪はあるのに。
「あっ、愛おかえり~!」
自分の家の玄関を開けるとお姉ちゃんの弾む声に出迎えられた。
「私より帰りが遅いなんて、二兎くんとのデート相当楽しかったみたいだね♡」
「いや、だからデートじゃないし!しかも今日は最悪だったよ...。」
「私はすっごく楽しかったよ~!」
そこからは聞きたくもないお姉ちゃんのデートの報告が始まる。
夜景がきれいに見えるホテルのレストランでのディナー。
隼人さんの素敵なエスコート。
美味しい料理と美味しいワイン。
いいなぁ...。二兎とはそんな素敵なデート、一生できなさそう。
いや、なんで私は二兎とのデートを想定してるの!?
「あっ、もうこんな時間だ!お肌に悪いから寝なくちゃね!」
お姉ちゃんがふとスマホを見て言う、私も時計を確認してみるとお姉ちゃんが話し始めてから1時間が過ぎようとしていた。
お姉ちゃんはそのままスマホを見ている、隼人さんにおやすみなさいって連絡でもするのかな?
「あっ、二兎の小説が更新されてる!」
「二兎の小説?」
「うん、しかも10年前で更新が止まってた話だからうれしい~!」
お姉ちゃんって二兎の小説読んでたんだ、全然知らなかった...。
「ねぇ、この話に出てくる男の子と女の子って絶対に二兎と愛がモデルだよね?」
「はぁ?そんなの最悪なんだけど。」
「あれ?愛、その指輪ってもしかして...」
お姉ちゃんが私の指輪に気づく。
ていうか、この指輪ってお姉ちゃんにも見えてるのか。
ますます夢を見ていた可能性が低くなった。つらい。
「こんな話、信じてもらえないかもしれないんだけどさ...」
私はこの指輪の経緯をお姉ちゃんに話すことにした。
お姉ちゃんは真剣に話を聞いてくれたあとに、
「私も10年前、愛と同じことやったな~」
と、私からすると衝撃的なことをいつもと同じ明るい笑顔で言ったのだった。
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