第5話 誓いの言葉と指輪とキス

これは悪い夢だ…と自分に言い聞かせながら、誓いの言葉を最後まで読んだ。


「おめでとうございます!これでお二人は晴れてペアとなりました。こちらはその証明となる指輪です、お互いの指にはめてください。」


団長がペアリングの入った箱を取り出して言う。


「誓いの言葉だけじゃなくて指輪の交換もするなんて…!あまりにも結婚式すぎない?アンタどういう感覚してるの!?」


思わず二兎に詰め寄る。


「まぁまぁ、とりあえず手ぇ出せよ。ほら。」


二兎は当たり前のように私の左手薬指に指輪をはめる。

花の彫刻が入った金色の指輪。


「これ、忘れな草が彫ってあるんだ。」


「細かい設定よく覚えてるわね…。」


「ほら、早くしろよ。」


二兎が左手を私に差し出す。

私は団長から指輪を受け取る。

男の人も花の彫刻がしてある金の指輪をはめるって、なんか不思議。


そんなことを考えながら二兎に指輪をはめると、


「おめでとうございます!!!」


と言いながらたくさんの学生たちが出てきた。

どこから出てきたんだ…。


「ひゅーひゅー!」

「おめでとー!」

「キース!キース!」


学生たちは冷やかすだけではなく、キスコールまで始め出した。



「キスなんか絶対にしない!!!」


と私が叫んでも、


「キスしないとストーリー進まなくなるから。まぁここって現実世界じゃないし、キスくらい大したことないだろ?」


と言う二兎。


なんなの、さっきから。

私と結婚式みたいなことさせられてるのにずっと冷静だし、なんなら少し嬉しそうにも見える。


二兎って私のことをどう思ってるんだろう。

私と結婚式みたいなことをしても平気なの?

それって、私のことを好きだってこと?

そんなまさか―――



「ほら、目ぇ閉じろよ。すぐに終わるし。」


二兎が私の両肩に手を添えて言う。


「え!?ほんとにキスするの!?」



二兎の顔がどんどん近づいてくる。

ちょっと待ってよ―――!!!と思いながらも体は動かず、私はきつく目を閉じた。

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