第19話 団代表

 見慣れない天井が目に入って、あぁ王宮にいたんだ、と気が付いた。

 窓から差し込む光は、もう起きる時間だと教えてくれている。だが洸哉は、なかなかベッドから出られないでいた。

「よしっ」

 掛け声を1つ、自分を奮い立たせるように掛けて、やっと起きあがる。

 昨夜の出来事が夢であることを祈っていた。


「やあ、おはよう。いよいよだね」

「おはよう。ネロは朝から爽やかだね」

「ダレスおはよう」

「……おはよう」

 挨拶のさなか、ローデンに腕を引かれて輪から外れる。

「コーヤ、昨夜、急にいなくなるから心配したぞ」

「おはよう。ちょっとだけ散歩。へへへ」

 昨夜のことを思い出すと、遭遇した心配事も蘇る。何もなかったと思いたい気持ちもあり、ローデンには伝えないことにする。

 気安く朝の挨拶が飛び交う朝食前の打ち合わせの席に、心なし緊張の面持ちをした全員が揃う。

「じゃあ皆揃ったところで早速私からいい?

 昨日、決めてなかったけど、治療団として、便宜上代表って必要だと思うんだけど」

 今朝の第一声はマリアンだった。年の功って言ったら怒られてしまうだろうけど、さすがだ。

「そうだね。序列じゃなくて、6人もいたらまとめる役目は必要だろうね」

 マコーミックは今朝も積極的に発言する。

「勤務時間によっては副代表も必要じゃないか?」

 昨日と同じく、ローデンも含めた3人が会話の中心となっている。

「年長の私がって言いたいところだけど、王宮では貴族位も重要よね。私はローデンに代表、マコーミックと私が副代表って考えたんだけど、どうかしら」

「私も一応貴族出なんだけどね」

 苦笑しながらネロが続ける。

「性に合わないから最初から辞退するよ。私はマリアンの意見に賛成だ」

「俺も」

「賛成」

「俺は代表で構わない。序列は平等、あくまでも治療団として治療方針をまとめたり、対外的な役目ってことでいいんだな?」

 全員が賛成し、治療団代表が決定した。

 続いてマコーミックが、ちょっといい?と折り畳んであった紙を広げて、注目する皆に見せる。

「昨日途中になっていた診察の組み合わせを考えてみたんだけど」

 メンバーの名前が3人ずつ順番に書かれていた。

「治療院ごとじゃなくするために、各治療院から1名ずつの3人で、3刻(6時間)の勤務としてみた。4時(8時)から7時(14時)、7時(14時)から10時(20時)の2交代にしたらどうだろう」

 会議の後、マコーミックが試行錯誤したらしい案は良くできていた。

 俺は、部屋に帰った後、失態を忘れたくてすぐにベッドに飛び込んで寝てしまった。そんな自分と比べると昨夜とは別の意味で恥ずかしくなる。

「まずは、やってみてだな」

 またもや全員が賛成し、順調に決まり事が出来上がっていった。

「会議は終わりでいい?朝食にしようか」

 今朝からは、まとめて運ばれてきた食事を自分達で配膳することになっていた。

 ローデンやネロは貴族出らしいから、本来なら自分ではしないだろうことも、厭うことなく何でもする。

 治療院で働いているくらいだから、志から違うのだろうが、王宮に来て、ローデンを見る目が少し変わったと、洸哉は感じていた。

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