彼らの実体を見てほしい

名は体を表す。

名前は大切な人からもらう最初の祝福のようなものだと思います。
そこに込められた願いが、そのものやひとの本当の姿を形つくる。

では、当人たちが己の意志で決めることのできない名字という祝福。
名は体を表すというならば、名字は運命から授かる呪いのようなものといえるのではないでしょうか。

本作は新撰組と同じ名字を背負う登場人物たちが、ヒロインにかけられた呪いを解くために、様々な困難を乗り越えていく人間ドラマです。

一見すると、ラブコメにも思えてしまうほど、主人公とヒロイン、それを取り巻くキャラクターたちのコミカルな掛け合いと、色鮮やかな心理描写が特徴的です。

ですが、彼らへ襲いかかるのは少々理不尽すぎる事件ばかり。ことの大きさはもちろんのこと。こんなのどうしたらいいんだ!と思ってしまうほど絶望的な困難なのです。
そんな事件に見舞われる中で見せる。

キャラクター同士の関係性と情熱的なセリフの数々。時には自分の命さえも、相手の為ならば差し出してしまうのではないかと思うほど、狂気にも似た他者への想いと葛藤。

関係性なんてどうだっていい。自分が今したいから、したいようにする。

一度スイッチが入った時の凄まじい感情の爆発には体を熱くさせるものがあります。

そんなコメディとシリアスの塩梅がこの作品の良きアクセントになっているのだと思います。

名前が新撰組だから、彼らが今ここにいる。
だが、それだけじゃない。

呪いに打ち勝つ為の名字と名前。
彼らのフルネーム。

名は体を表すというならば、その重い名字と呪いに抗うだけの祝福を、彼らはすでに受け取っているのかもしれない。
(一我儘目読了時点)

素晴らしい作品をありがとうございました。

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