第21話【冬のはじまり】ト【泣かないで】
1カ月経たないうちにまた双子の姉から手紙が届いた。前回の手紙の最後に殴り書きで書かれた。
【
という文章を思い出し、手紙を読むことに躊躇する。
あの手紙以降姉に手紙の返信をしていない。
読まずに机の引き出しの奥へ閉まってしまいたい気持ちがある。けれどそうしないのは、もしかしたら祖母や祖父に迷惑がかかる内容かも知れないと思うと途端にモヤモヤしてしまう。
委員長は深呼吸して気持ちを少しばかり落ち着かせた。
手紙の内容は———。
『双子の妹
冬の始まり……。今、7月の下旬夏休みが始まったばかりだ。となると11月の終わりもしくは12月の初めか……。
どうしようかと考えているともう1枚小さな紙が封筒から落ちた。開いて見るとまた書き殴った文字で———。
【逃げちゃ駄目だよ】
と書かれていた。
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夏休みの始まりはどうしても思い出してしまう。
中学生の頃に抱いた淡く涙の味がした初恋の想い出を———。
兄、
あれから数日、リビングでT Vを観ながらカップのバニラアイスを食べている真珠星のスプーンを奪い、源星はそのスプーンでアイスを
源星「うん。美味い!」
真珠星は手に持ったアイスを食べようとしたが、手に違和感を覚える。
真珠星「あれ!?スプーンがない?」
源星「スプーンってこれか?」
真珠星「……ぁ!?お兄ぃ。食べたでしょ!?スプーン返してよ」
源星「食べたさ。そのアイス美味いな!もう一口くれたら返してやる!」
真珠星はカップを兄に手渡した。
真珠星「……はい」
源星「なんだよ、今日はやけに素直だな」
断れると思った源星はいつもと違う真珠星に拍子抜けしてしまった。夏祭りの後家に両親がいるところでは心配かけまいと気丈に振る舞っているのを源星は知っていた。だから源星も普段通り真珠星にちょっかいを出す。一口、二口食べた後カップとスプーンを真珠星に返した。
源星は元気のない真珠星に明後日白鳥の家に行くことを告げる。それに反応した真珠星は、源星の顔を見て一言放った。
真珠星「私も行きたい!連れてけ!」
ー<明後日の夜>ー
真珠星は源星と一緒に白鳥家に訪れた。そして屋上へ上がる。話を聞くに大学の課題で星の観察日誌を提出する為らしい。望遠鏡を覗くと無数の星が輝いていた。
真珠星「すごい綺麗ですね」
白鳥「そうだよね。都会と思えないくらい綺麗に見えるよね(笑)」
真珠星「はいっ!」
真珠星は感動していた。その様子を見て微笑む白鳥。
白鳥「真珠星ちゃん。元気になって良かったね。お兄ちゃん」
源星「お前の兄貴じゃねぇ。
白鳥「そうなんだ。ねぇ、僕達の関係知ったら真珠星ちゃん驚くかな?」
源星「だろうな。あいつお前のこと……」
真珠星「白鳥さん!望遠鏡覗いて下さい!夏の大三角形が見えますよ」
白鳥「……わぁ、本当だね。源星も覗いてみなよ」
源星は望遠鏡を覗き込もうとした瞬間ズボンのポケットに入れていた携帯電話が鳴った。画面を見るとバイト先の店長からだ。
源星「わりぃ、ちょっと電話に出るわ」
そう言って屋上から出て行った。白鳥は真剣な顔をして真珠星に聞いて欲しい事があると伝えると、真珠星は「私もです」と応えた。
真珠星「あの……私、白鳥さんが好きです」
白鳥「ありがとう。……でも真珠星ちゃんの想いには応えられない」
真珠星「どうしてですか?歳の差ですか!?」
白鳥「……違うよ。真珠星ちゃんは僕の事多分男の人だと思っているよね?」
真珠星「はい」
白鳥「ごめんね。違うんだ僕は……女なんだ」
真珠星の目からポタリポタリと涙が溢れた。
白鳥「あ、ごめんね。泣かないで!?騙すつもりはなかったんだ。本当にごめんね。」
何度も謝り焦る白鳥。憧れて好きになった相手が女性だったことにかなりショックを受けてしまった真珠星は走って玄関まで行く、途中リビングで電話中の兄に腕を掴まれたが、それを振り払い家へと帰るのだった。
21話End
お題【冬のはじまり】24‘11/30
【泣かないで】24‘12/1
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