第5話【暗がりの中で】ト【もう一つの物語】
他人からすれば悩む必要がない寧ろ親に感謝すべき事なんだろう。
小学生の時僕はよく女の人から告白された。それは中学生になっても続いていた。初めは何故か嬉しかった。
でも付き合うことはしない。だって僕には告って来た人に対して、その感情がまだなかったからだ。
そんな事が続いた中学1年生のある暑い日、体育祭の準備で体育教師に頼まれた道具を体育倉庫で探していたら、ショートヘアの女の先輩が僕に告白してきた。
女の先輩「ねぇ。私と付き合ってみない?」
勿論僕はいつものように断った。だって一度も面識ない知らない人だったからだ。唯一わかるのは一つ上の学年であること。体操着の袖の部分の色が僕の着ている緑色と違う青色だった。
女の先輩は涙を流しその場から走り去ってしまった。
船星「……また泣かせてしまった」
数分経たぬうちに今度は僕に逆恨みした先ほどの女の先輩と同じ体操着の袖の色が、青色の男の先輩が無言で僕の顔を殴って体育倉庫に閉じ込めた。ご丁寧に鍵まで閉めて。この体育倉庫は中から開けることが出来ない。
暗がりの中で、僕は体育座りをして嘆いた。
船星「どうして殴られなくちゃいけないだ?!僕は……悪くない……悪いのはこの顔のせいだ!!」
船星の顔は目鼻立ちが整っている。幼さが残る所謂子犬系男子だ。
体育倉庫に閉じ込められて以来彼は前髪を伸ばし顔を隠し、誰にも見せないようにすると途端に告白の数は減少した。
彼が家の人以外の女性と話すのが苦手なのはこれとはまた別の話である。
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これから語るもう一つの物語は萌香の友達、
当時中学2年生の真珠星はいつも家に遊びに来る5つ上の兄、
1学期の終業式を終え自宅に帰ると、出迎えたのは家族ではなく遊びに来ている白鳥だった。
白鳥「お帰り、真珠星ちゃん。外、暑かったでしょう。さっさ、
特等席とはリビングの中で一番エアコンのクーラーの風が当たる場所だ。
真珠星は鞄を手に持ったまま白鳥に背中を押されながら
真珠星「……あ、ありがとうございます」
真珠星は自分の家の麦茶だと頭で理解しているものの好きな人が“自分の為“に淹れてくれた。ただそれだけなのに少し緊張してしまい、震える手でコップを持ちそして麦茶を一気に飲み干した。
白鳥「いい飲みっぷりだね。将来が楽しみだ(笑)」
真珠星「どういう意味ですか?!」
と少し嫌味っぽく言うと、兄が白鳥と真珠星の間に割り込んで来た。
源星「そりゃあ、お前が酒豪って意味だよ(笑)」
真珠星「嘘っだ〜。おにぃ嘘つきだから信用できない!」
兄妹のやりとりがこれ以上長引くと喧嘩に発展しそうだったので、白鳥は真珠星の機嫌を取る為、翌日行われる地元の夏祭りに誘った。
真珠星は天にも昇る思いだ。その時決意した、このチャンス逃してたまるか!!と……
5話End
お題【暗がりの中で】24‘10/29
【もう一つの物語】24‘10/30
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