第6話 契約
「それでは契約を行います」
村長に案内されてこの村でちょうど出発の準備をしていた奴隷商人のもとへ連れていってもらい、事情を話して急遽私を買ってもらって、一緒に大きな街へと運んでもらうことを話したら、「構いませんよ」と快諾してもらった。
その際にこの服も一緒に買い取ろうかと言われたが、この服を失ったら大和の貴族という嘘が使えなくなると思った私はお断りすることにした。
そんなもの奴隷になったら必要なくなるかもしれないけど、何が必要になるのかわからないもんね。お金は必要だけど、それは働けば手に入るけれど、この制服はたぶん失ったらもう一生戻ってくることはないと思うもの。
数少ない私が日本で生きたという証にもなるし、どうしても手放したくなかった。
奴隷商人のおじさんは全然聞き取れない言葉を早口で口にすると、
「スレイブコントラクト!」
と急に英単語を出してきた。
スレイブコントラクトって「奴隷契約」よね?でも全然発音が日本語英語なんだけど・・・どういうことなん・・・え!?なに!?
私がおじさんの言葉を不思議がっていたら、急に頭の中に色々な情報が入り込んできた・・・え、これは・・・あ、はい。それは嫌なので拒否で。あ、それは大丈夫です。
言葉ではないただの・・・ほんとに情報としか表現できないものがどこからか伝わってきたんだけど、たぶんこれは契約内容だと・・・思う。
奴隷の仕様?ルールみたいなものが最初に伝わってきて、その後に性奴隷として働くことの是非と奴隷を受け入れるかの回答を求められたから、口に出すこともなく答えた。
話し声が聞こえたとか、文字が浮かんできたとかそんなんじゃなく・・・こう・・・うーん、うまく説明できない感じだけど、スッと頭の中にインストールされたっていうの?そんな感じ。
「承諾されましたので、あなたはこれより奴隷身分となります。主人が決まるまでは暫定的に私が主人となりますが、奴隷商人は命令権を持ちませんので、あなたに特に制限はございません。ですが、許可なく逃亡いたしますと、罪人へ落されますのでご注意を」
へー、なんだかほんとに私の思っていた奴隷と随分違うのね。性奴隷なんていう物騒な情報も入ってきたけど、普通に拒否出来たし・・・。
もしかしてこの世界の奴隷ってただの出稼ぎみたいな感じなのかな?実際に自分で体感した情報も感じもそんな感じだし。
うん、一時はどうなることかと思ってたけど、なんだかちょっと気が楽になってきたかも。
あとは変な人に変われないか注意するだけだもんね!
・・・それが一番難しいのかもしれないけど・・・。
「わかりました。よろしくお願いします」
「それでは早速出発しましょう。予定が押しておりますので・・・」
え、もう行くんだ・・・。でも私は特に荷物も無いし、準備することもないから別に今すぐ出発出来るけど・・・フゥ~少しやっぱり緊張するなぁ。
「あ、すいません・・・一ついいですか?」
「はい、なんでしょうか?」
「・・・これから一体どこへ行くのでしょうか?」
うるさい!黙ってついてくればいいんだ!とか言われるんじゃないかと思って警戒したけど、この奴隷商人のおじさんはそんなことはなく、
「私達はこのカームから西に進み、ナナウの村を超えた先にあるファルムンド北西、その貿易の要所であるジテフリアの街へとまいります」
「あ・・・はい」
教えてもらっているうちに思ったんだけど・・・私この世界に来たばっかりだから聞いても何も分からないや・・・。
でも、とりあえずジフテリアっていうこの村より大きな街へと向かうって分かっただけでもよかった・・・のかな?
「それではこちらへ・・・」
奴隷商人のおじさんについていくと、一台の馬車があった。木の荷台に布のテントみたいなのがついている、映画とかアニメでよく見るやつ・・・はじめてみた。
それを引く馬は赤茶色の毛をしていて凄い大きいけど、目がクリっとしてて可愛いかも。
おじさんに促されて馬車の荷台に乗ると、そこには五人の女性と一人の男性が居た。みんな私と違って灰色一色の服を着ている。私も服を売ったらこれを着させられたのかな・・・?
売らなくて良かった。
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