デッドエンド③
「《一――」
「――閃》!」
ギソードと魔力で剣を生成したレイドが剣戟を響かせる。
レイドの
そもそもの転機は、ジュラの助言である。
『術式っていうのは、言うなれば省略だ。詠唱と共に魔力を編み、放つ……それが魔術。俺たちは一つの術式を研鑽すること込みで、詠唱破棄で扱えるメリットを重く見ているが……』
(理論上、全ての魔術使いは、全ての術式を扱える――)
言うは易い。理論上、というのは、まさしくその通りである。
実状は困難、無意味、不必要。術核に刻める術式の容量には限界があるし、習熟の観点からも一つに絞った方が当然良い。
例外は、レイド・ミラーである。
(くそっ……! ペチャパイスキーの《
ギソードの《一閃》に限っていえば、ジュラもまた模倣したことがある。少し練習すれば、ユイも似たことができるようになるだろう。
しかし、ジュラもユイも、《一閃》の本質である《
それを踏まえて、このレイド・ミラーはどうか。
《一閃》発動時の
「「《一閃》!」」
互いに半歩退がってからの打ち払いが交差し衝突する。
(組み立てのクセも同じ⁉︎ 鏡かよ!)
どうやら模倣されているのは術式だけではなく、経験と訓練で身につけた技の捌きもらしい。
まるで鏡像と演じあっているような……それがレイドの《
この術式はペチャパイスキーの[外付け]と同じく、自身のアストラル体に直接作用させるものである――彼がジュラ・アイオライトの導きによって開花したアクターであるため、これは当然の発想といえるだろう。
術式の発動に際し必ず発生する魔力の揺らぎ。そこからその術式を逆算し、レイドのアストラル体を覆うもう一つのアストラル体、その
逆算とその刻印スピード、そして技術のトレースは、レイド自身の素質と技能である。《
「《 一」
「 閃 》」
ユイが魔力の暴風を起こしたのとほぼ同時、六度目の相殺。
(…………)
(――ジュラ!)
横跳びでジュラが通りかかり、レイドと視線を交差させる。
「よそ見か⁉︎」
「失礼した!」
七合目。
横槍は不要、なにより無粋。そう判断したジュラは、ユイの背後のゲートから忍び寄ろうとする“イミテレオ”のアクター五名を確認し、手をかざす。
[
術式デバイス二つの同時発動。
まず六枚の魔力で作られた半透明の壁が“イミテレオ”たちの行手を阻む。続いて爆発的に増強された脚力によって彼らのまた後ろへ
[
撃っ――
「させるか!」
――不発。
構えたジュラの横っ腹に、トリアが突っ込んできたのだ。
ユイが開幕に見せた突進……トリア・トリアの
「来ると思ったよ」
その一撃を、ジュラは仕込んでいた七枚目の盾で防ぎきった。
レギュレーション:デッドエンドという混戦必至乱入上等の戦いにおいて、最も警戒すべきはトリアによる不可避の攻撃である。
常に気を配ることはできない。だが、ある程度トリア襲撃のタイミングは調整できる。
今回ジュラが敷いた策は、
・新披露である[
・その[
・ユイの背後を取る“イミテレオ”のさらに背後を取ることで、舞台の最も外側に移動した。完全に浮いたコマとして、トリアの奇襲を誘う。
以上三点。
「――――!」
その徹底した対策に、それを瞬時に理解したトリアはただ言葉を失った。
驚愕はもちろんあった。それ以上に、ジュラ・アイオライトがそれだけの策を弄してまで自分の無力化に尽力したことが、トリアの胸を熱くしたのだ。
[
巨大な刀身となったジュラの右腕が、トリアを薙ぎ払った。
両断される
[
「さすがだ、ジュラ――」
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