第40話 食人植物ダンジョン

 紗耶香と紫苑に4種超合金で【土竜】ダンジョンのラスボスは滅多切りにされて血だらけになって消え去った。

 それにつけても4種超合金の切れ味はとんでもなく凄かった。


 4種超合金とはミスリル、オリハルコン、日緋色金、アダマンタイト?と表記されたゴブリンキングが持っていた大剣を1万度の高温で溶かして混ぜ合わせて作った超合金だ。伝説の金属を集めて作った新しい金属で、ダイヤモンドのグラインダー砥石で、丸1日かけて磨いて、刃付けした。

 俺の鍛冶スキルSSと錬金術SSを駆使して作り上げた珠玉の逸品なのだ。

 材料の関係で今のところ俺達3人分しか作れていない。透き通るような銀色の刀身はほれぼれするほど美しい。


 そして今日のダンジョンはラスボスがドラゴンじゃ無く植物系モンスターだ。

 以前俺が踏破した時は大木の幹に顔の有る立って歩くトレントと言う木のモンスターだったが今回は何だろうか?


 1階層に出て来るモンスターは食虫植物に良く似た食人植物が待ち受けている。何と言うことも無い植物が一瞬で変化して襲ってくることが多々ある。えてしてそいう場所の近くには貴重な薬草が生えているもので、薬草採取に夢中になっている時が危ない。貴重な薬草はチョウチンアンコウの提灯の役割をしているんだろう。


 「ちょっとまて紗耶香、足元にハエトリグサが有るぞ」

「うわっ、ほんとだ、気が付かなかった」

ハエトリグサとはハエトリ紙みたいな平い草で

非常に強力なねばねばがそのうえを歩く生き物を捉えて動けなくする。獲物が掛かったのが分かると蔓が地下から延びてきて、獲物に巻き付き、肉に突き刺さって血を啜り肉を溶かして骨まで消化してしまう恐ろしい植物だ。


 ねばねばのついた葉っぱは薬師、錬金術師に売れるので丁寧に収穫する。同じ所に止まっていると、他の植物の根や蔓が延びてきて捕まってしまうので注意が必要だ。


 地面を歩くときは落とし穴に気を付けないといけない。落ちた穴がじつはウツボカズラの壺だったりして、中に溜まっていた消化液に身体を溶かされて吸収されてしまうのだ。

この消化液も薬の原料になるし、武器にも使えるのでガラス瓶に取っておく。


 こんな感じで、細心の注意を払って進むと精神的にまいってしまうのだ。この階層は【静かなる殺し屋天国】と呼ばれている。収集人には地獄なのだが。


 派手な戦闘シーンも少ないので不人気なダンジョンだ。

 だが孤独が好きな収集人にとっては好ましい環境で、静かに自分の時間を楽しんで稼ぎたい者にとっては天国とも言えよう。


 細心の注意を払いつつ辿り着いたのは階層主の広場だった。

「キャッ、可愛い白兎ちゃんだ。モフモフしたい」

「あ、待て、紗耶香!」

遅かった。ほぼ等身大の白兎たちがのんびりと草を食んでいる。そこへ紗耶香が突入した。

罠である。紗耶香が兎の1羽に飛びつき撫でまわした瞬間、さやかの周囲に緑色の壁が出現して紗耶香を閉じ込めてしまった。

1階層の階層主であるウサギ草の消化器官にまんまと嵌ってしまったのだ。

『紗耶香聞こえるか?』

念話が通じるか確認する。

『聞こえるよ。なんか臭い匂いが充満してる』

『刀で壁は切れるか?』

『やってみる……なんか手ごたえが無い』

『火魔法で焼いてみな』

『うん』


壁の膨らんだ部分が焼けて真っ黒な煙と共に紗耶香が躍り出て来た。

「プハァー、臭くて死ぬかと思った!」

結界のおかげで衣服も溶けずに済んだが匂いだけは通過したようだ。もっと結界の強化を図らないと拙いようだな。俺はこの罠に嵌まったことがないので、新しい発見だ。

「白兎は【ウサギ草モンスター】の花なんだ。花に触れた生き物を閉じ込めて消化してしまうんだ、花自体には害が無いから乾燥させると縫いぐるみがわりになるから好事家に人気がある。茎からスポッと引き抜いて茎を水に浸しておけば1か月は咲いたままだ。枯れると黒うさぎになってしまうと言うぞ」

「ええーそれも見てみたいなあ」

「それじゃあ空中から茎を引き抜くイメージでストレージに収納してごらん」

スポッスポスポスポッと軽やかな音と共に白兎の姿の花が次々収納されていく。

「何か楽しくなってきちゃった。後でまたここに来ようっと」

「私も楽しい」

紫苑も抜き取った白兎の花をモフモフしながら微笑んでいた。

アンドロイドでもこんな風に微笑むんだな。可愛いものは正義みたいだ。

俺達はウサギ草モンスターを焼却処分した。

討伐完了だ。

ドロップ品にガラス瓶に入った消化液が100本有った。これも武器に使えないか試してみたいものだ。


さあ、次の階層にいこう。

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