第29話 聞いて無いわ
翌日俺と桜の他にメアリーと恵も養魚場にやって来た。ホテルを出る時に2人でやって来て
「秋葉さんの養魚場を見せて下さい」と言ったのだ。
特に断る理由も無いので承諾したのだが、紫苑と紗耶香に電話するのを忘れていた。
特別なお客じゃないからいいか。と思ったのだが着いてみると
「何?、この子達!私聞いて無いわー!!」
紗耶香の叫び声が響き渡った。
(隆史さんハーレムでも作るつもり?)
「紗耶香、何か不穏な事でも考えていないか?この子たちはS級収集人のメアリーと恵だよ、第3S級ダンジョンの調査の為にパーティーを組んでいるんだ。今日は俺の養魚場を見学したいと言うので連れて来たんだ。仲良くしてくれよ」
「ねえねえ、秋葉さんって綺麗な女性を引き寄せるスキル持ちなの?」
そう言ったのは紗耶香の留守番の相棒の千鳥文絵だった。小声で言ってるつもりのようだけど聞こえてるぞ。
「綺麗な
確かに紗耶香も文絵嬢も人並み以上の美貌の持主だ。本当に美女ばっかり集まっている。
この場を世の男共に見られたら嫉妬されて後ろからナイフで刺されそうだ。
俺は桜を家の中に入れて、彼女の個室に案内した。ストレージから必要なものを取り出して設置していく。殺風景だった部屋が、あっという間に大人の女性の部屋に変わって華やかになった。
残った女性陣は紫苑に案内されて以前食事会を開いた食堂でお茶を飲みながら女子会を開いていた。女3人寄れば
4人も集まるとキャッキャッワーワーと煩いくらいだ。
紫苑だけがお茶を入れ替えたりお茶菓子を出したりと忙しそうだった。
俺はとてもその中に入れないので養魚池の方に行ってみる。歩いて池のふちに行くと稚魚たちが集まって来てばちゃばちゃ騒ぐ、人間の足音が餌を貰える合図だと思っているのだ。
こういう所は鯉みたいでほっこりする。
孵化して餌を食べ出した稚魚には1日数回に分けて餌を与える。
鑑定で目の前の池の稚魚たちの平均体重を測って、餌の量を決めて総量の6分の1の小さなペレット餌を用意して餌撒きを行う。バシャバシャと競って餌を食う。
(うん、元気元気)紫苑がしっかりと管理しているのを確認する。
途中で作業服に着替えた桜が傍に来て楽しそうに見ている。両脇と、両胸にポケットの付いたジャンバーに、いわゆるカーゴパンツと呼ばれるズボンを履いている。足には濡れないように白いゴム長を履いている。ここでは年中このスタイルだ。水虫予防にゴム長には浄化魔法を付与してしてある。服の色は濃紺。どうしても汚れるので白っぽい色は避けている。クリーン魔法を使えるなら何色でも良いがあんまり派手過ぎると魚が警戒して、ストレスを覚えるかも知れない。後、急にお店に配達に行く時にはクリーン魔法を掛けるのを忘れてはならない。
俺が飼育しているのは、ダンジョン内の自然界では猛毒を持っている【オーロラトラウトサーモン】なのだから、お客様にほんのちょっとでも不安感を与えてはならないのだ。
今日は3か所のお店に納品する予定だったので
お店ごとの魚の大きさと数量を確認してストレージに強制収納する。屋内の処理場で血抜きをしておく。
頭の付け根と尻尾の付け根に包丁を入れて魚体をギュッと折り曲げて血を搾り出す。
念の為浄化魔法を掛けて毒の無いのを確認する。
この浄化魔法は配達先のお店でもお客さんの目の前でも行って毒の無いことを確認して頂くのだ。
桜にも鰓や内臓の取り方を覚えて貰ってお客様の前でもスムーズに行えるように練習して貰った。
午後から桜を連れてお得意様のお店に挨拶廻りに行く予定だ。
桜が「魚臭いから嫌!」なんて言う女の子じゃなくて良かった。
俺が留守の間は紫苑が配達をしていた。
今度からは桜にも行ってもらう。魚屋の
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