第15話 エロゲをする女子高生

夕食は夕食で豪華という訳ではないがちゃんとした。いわゆる料理と言うものを施された食事にありつけた。


店で出された料理とは違う。いわゆる家庭の料理と言うものだ。

味も間違いはなかった。


「どうぉ? 山田さんの好みに合っているかな?」

「ああ、ここでこういうもんが食えるなんて思ってもいなかったよ」

「そこまで言う? 山田さんも料理すればこれくらいのものなら出来るんじゃない?」


「いや、俺は料理は得意じゃねぇんだ」

「ふーん。そうなんだ。ほとんど外食ばかりだと栄養もかたよっちゃうんじゃない?」

「……まぁな」と俺は少し間を置いてから繭に言ったのであった。


「ごちそうさまでした」と言って俺が席を立とうとすると繭が俺にこう言ったのだ。

「山田さん、お風呂入りましょうよ」と……。

「え!  おま……」と俺は一瞬ドキッとした。

いや、そんなんじゃねぇぞ!  別に、そんなんじゃねぇからな。でも風呂って……まさか繭の奴、本気じゃないだろうな。いやマジでやべぇぞそれ。


「早く支度してくださいよ」と繭が俺に言うので俺は慌てて答えたのだ。

「お、おう……」と言って俺は風呂場に向かったのであった。

もうすでに湯船には湯が張られていたのである。そして脱衣所で服を脱ごうとしている時だ。ドアの向こう側に人の気配を感じたのだ。


そんな繭はこんなことを言うのである。

「ねぇ山田さん。一緒にお風呂に入りましょうよ」と……。

「お、お前なに言ってんだよ!」

「別にいいじゃない。ねぇ入ろうよ!」と言う繭の声に俺は少しドキッとしたんだ。そして続けて繭は言うのである。


「あ、もしかして恥ずかしいの?  山田さんのえっちぃ」と……。

「ば!  馬鹿野郎!  そんなんじゃねぇっての!」と俺が言うとドアの向こう側から繭がこう言ってきたのだ。


「……じゃぁいいじゃないですか」と……。

ば、馬鹿! そう言うのはなしだと言っていたじゃないか! 

「えー、そうなんですかぁ! なぁんだつまんない。なんてね。お着替えここに置いておきますから、ゆっくり入ってくださいね」


着替えか……ほんとびっくりするじゃねぇか。全くからかうんじゃねぇよ。

「ふぅー」湯船に入り温かいお湯に全身が包まれると気が和らぐ。


そして繭のことを考え出した。

お隣で女子高生。なぜか妙になつかれてしまった。

まぁお互い足りない部分を補っていくことにはギブアアンドテイク的な発想であるからそれは良しとしよう。しかしだ気になるのは繭が言った「私家出してきたんだ」と言う事である。


親に黙って出てきたという訳ではなさそうだが、気になることは確かだ。

家庭環境に問題があったのか? それとも繭の単なる我儘でこういう生活を望んだのか?

その真意は分からないが、普通? まぁ普通と言うのがどういう定義なのかは分からないがそう言うことじゃない環境にあったと言うのはたしかのようだ。

最もこれから始まろうとしている俺と繭の関係も普通じゃねぇと言えばそう言うことである。


女子高生との共同生活。同棲じゃない、ここは一線をきっちりと引いておかねぇといけねぇなぁ。俺がしっかりとしないといけねぇ。流されてちゃいけねぇんだよな。

だからこそ会社の連中には知られちゃいけない。秘密事項だ。


……知られてはいけない……。


でもなぁ。偶然出会った水瀬には従妹だと言ってごまかしたけど……。なんか彼奴変に勘ぐっていないといいんだけどなぁ。

「えええええ!! 先輩、女子高生と同棲しているんですか!」

彼奴のことだから目を丸くして拡声器並みに大声を張り上げて言うんだろうな。スキャンダルにはんと敏感な職場だからな。ほんの数秒で拡散されちまうだろうな。そうなれば俺の会社での立ち位置はやべぇよな。


あ! そう言えばもう一人妙にこういうことに関しては敏感な人がいた。

そう、雨宮部長だ。

そう言えば部長と電話していた時……。ベランダの仕切り版が倒れてきて、繭との会話……ああああ! 聞こえていたよな。聞かれちまったか。

でもあれから何も言ってこないというところがなんか怖いんだが。

なんか会社に行くのが恐ろしい。


そんな俺の気も知らず風呂から上がると繭はゲームに夢中? なんかものすごく真剣にエロゲを始めていた。

「おいおい」

「ああ、山田さん。お風呂上がったんだ」

「いやいや、何やってるのかな繭さん?」

「何ってゲームしてるよ」と平然と言うあたりがなんともまた。


「このゲームってすんげぇエロイんだけど」

「うんそうだね。オープニングからエチエチだねぇ」

「そう言うのって抵抗ないの?」

「うん、面白そうだからちょっとやってみていた」

そう言うもんか?


「駄目だった? 勝手にやっちゃ」

「いや別にいいけど。でも18禁なんだけど」

「ああ、そうだね。私もう18だから。大丈夫」

そう言われると返す言葉がない。


黙々とエロゲを進める女子高生。

「うわぁリアルっぽい。結構手が込んでるねぇこのゲーム」

「だろ! 発売日なんか俺、定時にあがって並んだんだぜ。それに結構高かったんだぜ」

こう言うところを自慢したがるのがオタクの悪い癖と言うのかもしれない。


「ふぅーん。そうなんだ」と、スルーされた感じがするがまぁいいだろ。


「ねぇねぇ、これって私なの?  こんな設定あるの?」と繭が俺に声をかけてきた。

「いや、お前じゃねぇよ」

「なんだぁ、違うのか」と少しがっかりした感じの繭だった。

しかしだ。そのゲームはヒロインが繭にそっくりでしかも18禁と言うだけあってかなり過激なシーンがある。


繭はおもむろに立ち上がるとこう言ったのだ。

「ねぇ、山田さん」と……。

「な!  なんだよ……」と俺はドキッとしたがそんな俺の思いとは裏腹に繭の奴、テレビゲームに夢中で俺の方を向いていなかったのである。


「ねぇってば!」と言う繭の声に俺が慌てて答えると彼はこう言うのだ。

「このエロゲってさぁ、なんか私と似ているよね」と……。

「え?  ああそうだな」

「うん、でも私こんなんじゃないよ。もっと清楚だし、可愛いし……」

「あ……ああ……」と俺は言葉を濁した。まぁ確かにそうだ。それに少し生意気だ。だけどそんなことを言ったら嫌われるからな。


でもまぁ確かにこのエロゲの繭は少しわがままなところがあるかもしれないな。なんかこう気が強そうなところがさ。しかし、こう言うところは似ているよな。


「ねぇ聞いてる?」と繭が俺の顔を覗き込んで言ったので俺はドキッとしたんだ。

そして繭が俺にこんなことを言うのである。「ねぇ、今度私に似たキャラクターを攻略してよ」と……。


しかしだ俺の気持ちはお構いなしに繭が言うのである。

「ほら、これなんか私にそっくりじゃない?」と言ってまたもエロゲを進めるのだ。

そして俺は思うのだ。

このエロゲーのキャラが繭に似ているんじゃなくて、お前がそのゲームのキャラクターに似ているんだとな。


でもまぁ確かに似ているかもしれないな。特に性格とかさ。それにこのヒロインって確か繭と同じ高校だよな?  そんな偶然ってあるもんなのか?

「なぁ、繭さん」と俺はゲームに夢中になっている繭に声をかけた。

「何よ山田さん」と言って振り返って俺の顔をじっと睨みつけるのである。

まぁ睨まれても仕方がないのだがな。


それでも怖いものは怖いのだ。それにそのエロゲがあまりにも進みすぎていてヤバいのではないかと心配になったわけだ。

一応18禁だからな。他人んちで勝手に進めていいもんじゃないだろうに……。


「おい繭、そろそろいいんじゃないか?  そのゲーム」と言って俺がコントローラーを取り上げると彼は言ったんだ。

「あー!  もういいところだったのに」と……。

いや、だからお前このままプレイし続けたらマジえぐいぞ!


「やっぱり山田さんってさぁ、なんかオタクだよねぇ」と言いながらニヤニヤするのであった。

そしてだ。

「でもさ、私こういうゲームってした事ないからちょっと興味あるなぁ」と言うのだ。

そんな繭に俺は言うのである。「いや、お前さぁ、18歳だろ? まだ早いって」と……。

すると繭は俺に言うのだ。


「え?  なんで?  なんで18禁ゲームが18歳じゃないと見ちゃいけないの?  ねぇなんで?」と……。

いや、だからそのエロゲはな! 18歳以上しかやっちゃ駄目なんだよ!


「それにさ、私こういうゲームした事ないからちょっと興味あるなぁ。なんか面白そうじゃん!」と目をキラキラさせながら俺を見るのだ。

「いや、だからぁ!」と俺は言ったんだ。しかしだ繭の奴は俺の言うことなんか聞く耳持たないと言う感じで俺に言うのである。


「ねぇ、山田さん!  これやらせてよ」と……。

そして俺は思ったんだ。ああ、もう駄目だなこりゃと……。

「あ! このキャラ私じゃんか!」と言って繭はゲーム画面を見ながら興奮している様子だ。



いやそれは違うぞ!  そのエロゲはお前のそっくりのヒロイン。現実の3次元でもこうして手が届くと言うのは非常にまずい気がしてならんのは俺の男の性なのだろうか?


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