20日目
物語を書く度、読む度、私は常に何かに生み出されている。私を生み出すその「生命」を、私は縋り続けていた。物語というものを、書こうとしたのはいつだろう。あの日の夢を書いてみたい、思いついたものを書いていたい。そうして、理想の私は生み出されていく。否定もされ、しかし、そこに肯定もあった。肯定だけを見ては胸糞悪く、否定だけを蔑ろにするのも、快くない。全てを物語として成り立たせるために、物語が「私」を作りあげる。
「なんて心地いいんだろう…」
気分は爽快そのものだった。普段は偽りをばら撒く私だ。その私が、今ここで知らない何かを生み出し、生み出したものに生み出され、それを繰り返すだけで、快さを手に入れていた。色味のない世界に、自分が呑み込まれる前に、怠惰な自分を認める前に、救ってくれたのだ。 物語を書くのに自信はあった。が、自信は時に怠惰になり、怠惰は時に傲慢になる。傲慢は浅はかな強さを生み、そして、中身のない自信へと繋がる。しかし、私は、自信が怠惰にならなかったのだ。何があるのか、最初は分からなかった。自信は、いつのまにか怠惰以外の何かになることを覚えていた。私の書いた物語が、私の読んだ物語が、そこにあるものを、私に教えてくれた。
そこに、夢中があった。
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