第17話:九九

願はくは、いつも自然に笑っていたいけれど、

あわよくば、作り笑いで繕っていることにも、気付いてほしい。



あんなにも、自由だと思っていたのに

いつの日から、こんなにも不自由だと感じるようになったのか。


幼い頃、狭い世界は、とても嫌いだった。

今は、狭い世界でしか、落ち着かない。


Excelのファイルだった世界が、特定のシートに収まり、

今となっては、限られたセルの範囲で暮らしている。


そもそもExcelである必要もない。

小さな世界にマクロを組んで満足し、便利だなと悦に入る必要もない。


お風呂の中で、そっと九九を数える。

何十年かぶりのそれは、案外とあやふやなところがあって、恥ずかしくなった。


お利口なふりをする必要は、ないのだ。

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