第46話 図書館と気掛かり⑦

「トゥルルル……」

真人のポケットから着信を告げる音がする。反射的に取り出し、スライドさせる。

「?! 真智か? 」

「安易に繋がりすぎませんか? 」

「真智パイセン! 」

「マーチさまですか? 」

2人がこちらに来たので画面に目が行っている間に慌ててノートを背に隠す。

『なんであたしの部屋にいるのよ? 』

ビデオ通話で助かった。

『リン姉さま! 』

『キャスリン! 』

向こうも2人がまた一緒のようだ。

「姫が不慣れなのでお邪魔しております。すみません。物があまりないシンプルイズベストなお宅ですね」

『待てコラ……』

「シャルは大丈夫でしょうか」

『あ、うん。大丈夫。連れ帰って部屋で寝てるよ。そっちも解決したみたいね』

「俺が話すわ」

事の顛末をお互い話し合う。

『まさかそんなやり方するなんてね。やるじゃない。沢渡が旦那だろうなって当たりはつけてはいたけどさ』

「マデリンだっけ? こっちの知識で何とかなってよかったぜ。それにミシェルさんすげぇな」

ミシェル、確か似たようなキャラクターがいた。『皆の憧れの元女勇者ミーシャ、今はメイドのミシェル』とだけあった気がする

「昔から頭が上がらなかった理由にそんな事が。私も大好きで、どちらも熟読していましたわ。大丈夫、父には申しません」

「真智パイセン、むちゃくちゃなのに何とかしちゃったんすね。やっぱすごいっす」

『むちゃくちゃ言うな。道理には適ってんのよ』

「にしてもですよ。通用するにしてもあまりにスムーズ過ぎます」

合理主義が発動しているのだろうか?

『一番のむちゃくちゃは、俺たちを馬車ごと7日掛かる距離を引っ張ったことだろう? 』

あまりにご都合が過ぎる。

「「「それは流石にむちゃくちゃ……」」」

『ハモるな! 』

『あ、キャスリン。個人的なお願いがあるの』

「はい、何でしょうか? 」

『あたし、シグフィをやりたいんだけどさ。フリックくんがキャスリンじゃないのにって言うから、許可をください』

『ちょ、おま……』

「まぁ! 楽しそうですわね。こちらでも見れたら楽しいでしょうね」

『コラボしたらどっちが喋ってるかわからないし、WinWinでは?! スマホで繋げられないかな。あたしの……」

「検索して登録も済ませています。いつでもどうぞ」

『待って、なんで知ってるの?! 』

「【スピリチュアリスト《マーチ》】。胡散臭さしか放ってねぇなあ? 」

『止めて? ホントに止めて? 』

「外出時はパソコンの電源はお切りください」

『ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙』

『スピなんだ? 』

どちらにしろ、元気でよかった。



通話が終わったあとも余韻なのか、2人は楽しそうに話している。

言えなかった、ノートを見つけたなんてことは。何となくだが、真智の顔に翳りが見えた。今下手に刺激するのはよくないだろう。

まさか彼女がノートのことを思い出して悩んでいるとは知らずにそう思う。あの内容では悪役が書かれていない。

「……真人さん、私たちの予想一段階目のフェーズが終了しましたが、兆しがありません。最悪の事態を想定しましょう」

「いや、進展はあったんだ。まだ様子を見ようぜ」

「───わかりました」

希望は捨てては行けない。弱腰になった自分を叱咤し、前を向いた。

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