第55話



とにかく今は何が何でも奪い返そうと

彼の元に近付き手元を目掛けて腕を

伸ばし取り上げようとするも奴の背が

高過ぎるが故に一向に届きっこない。



ほんと何もかも適わなくてムカつく!!

今はそんな事なんてどうでも良くて!



「 ちょっと!!返してよ!!」

そう言って彼の背中をポカポカ叩く。



何を話してるのか上手く聞こえないが

まだ匠海との電話は続いてるらしい。



マジでコイツ何がしたいの?!?!

前に言われた気がするけど、あたし

よりもアンタの方があたしが行く

先々に頻繁に姿現してるよ、?



そう悶々としていると、

『 んじゃ、切るわ。またな。』

と両耳に聞こえて来た。



どうやら長い長い通話はやっと終了した

らしく遙人くんは近くにあったベンチに

向かって歩きその場に腰を下ろした。



ようやく返して貰えると思い、

呼ばれるのを待ち構えていたが

呼ぶどころか返す素振りなんて一切

見せようとはせず、聞こえて来たのは



「 鳴海ー、匠海がここに来るまで

お前はここに居ろよ、」とだけ聞こえ

スマホは結局渡されもしなかった。



イライラしたあたしは彼が居る所まで

近付き、「 …は?!?! 何言って…!

てか私のスマホは? 返せ泥棒! 」と言う。



「 問題が解決したら、な」



「 …は、? 問題 … 、?」



彼の言っている事が理解出来なかった。

今のあたしにそんな事なんてどうでも

良くてお構い無しに近くにあったベンチに

座ってる後ろからイヤだけど全力で

彼の身体に抱き着き、イヤホンなんて

気にしない素振りで思いのまま

彼の右耳にフゥっと息を吹きかけた。



「 …?! は?! お前何してっ!」



「 ふふっ、引っ掛かったね。」



そう言い、彼の気が変わらないうちに

着てるジャージの上着ポッケに右手を

入れ四角いものが手に感じ引っこ抜く。



よし!やっと返ってきた!しかし、

そう喜んでいられたのも束の間。



引っこ抜きに成功し無事に手に自分の

スマホが戻って来て離れようとした

その時彼の右手によってあたしの右手は

簡単に取られて流れる様に彼の膝の上に

跨がされていて更にはあたしの腰には

彼の両腕がしっかり廻されていた。



今あたしの目のには彼の綺麗に整った

お顔がはっきりと映っている。



「 ………… ?!?!?!?!」



「 ふはっ、なんだよその顔。

ばーか、ツメが甘いんだよ。」



____ もうほんとになんなの!!

ムカつくムカつくムカつく!!





___ でもごめん、神様 …… 、

あたしこの瞬間を待ってたの … 。

二度と会わない、金輪際関わらない

と啖呵切ったのはあたしなのに。

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