【短編連作!】すすきのアウトサイドパークッ!!
小鳥遊咲季真【タカナシ・サイマ】
各話予告(随時更新)
本日は本作へお立ち寄りいただきまして、誠にありがとうございます。これは文字通り各話の予告、文庫本のウラスジです。目を通して頂いてから本編を読むとより楽しめるかもしれません。
各話予告
第一話 白黒バイナリー・クリック
中国人の姉妹から父親を殺してほしいと頼まれた。街のオーガナイザー茨戸創はガキ共のトップ、IT会社の社長兼会長の友人雁来成哉から話を聞く。どうやらお金のトラブルらしい。街一番の裏稼業、氷永会で幹部を務める友人のタカも参戦。バイナリーオプションのマネーゲームに投じられた奨学金。人外、魔法、炎が入り混じり混沌とする夜の街で金と欲望の社会に対峙する物語第一話。
第二話 死ぬ前に読んだ小説
妖刀使いが娘の親になった。今後は俺の代わりに面倒を見るという。冗談だろ?
俺の娘は正確には俺の娘ではない。名前もそのへんの樹から取ってつけたようなものだ。特別学校に、地域の子供会にお世話になっていて、俺は時々その様子を見に行くことしかできない。社会の歪によって、望まれないで生まれた子供に本当の親はいない。そんな彼女に、親代わりができた。名を桜木坂という、刀だ。
妖刀使いの歴史と、ひとりの女の子がその刀を手にするまでを語る第二話。
第三話 自己責任チルドレン
子供会の補助金が行政から打ち切られた。
近隣住民から非行少年少女のたまり場だと非難を浴びたことが原因。補助金がなくなったことで施設は苦渋の決断で値上げ、有料化した。貧困に苦しみ、身を寄せていた少年少女たちはそのお金を支払うことができずに去らなければいけなくなった。
この状況に情を寄せた施設の職員がガキ共のトップセイヤに連絡。社長の命令が下り、俺が動くこととなった。調べると親は自己破産、ホームレス、豪遊、ネグレクト。好き放題だ。小さな子供たちは普通の生活を夢見る。きちんと勉強したい。学校に行きたい。友達と別れたくない。美味しいものが食べたい。そんなあたり前のことも叶えられないなんて、無念。毒親なんて言葉が流行ったこともあったが、それは俺にとっても耳に痛い話。娘の久瑠美を妖刀使いに任せている俺だって、これから糾弾する予定の大人たちのことを言えた立場じゃない。
社会から邪魔者扱いされ、隅に追いやられる子供たち。貧困とその親の素顔に立ち向かう第三話。
第四話 第三次すすきの抗争
氷永会を名乗る集団が暴力事件を起こした。もちろん名前だけの真っ赤な偽物集団。被害者は創成川リバーサイドボーイズの若者。氷永会の名前が表に出た暴力事件に警察も成哉も動き出す。ガキ共成哉、氷永会タカが対峙。互いに神経質になって、裏では抗争寸前に。両サイドの味方、オーガナイザーは板挟みに。さて、どうする?
一触即発の緊張状態がすすきのを襲う第四話。
第五話 すすきのアウトサイドパーク
連続ひったくり事件が起きた。しかも交番の目の前で嘲笑うように、次々と。すすきの周辺は厳戒態勢に。街のオーガナイザーは交番勤務の昔馴染みのおやっさんから依頼を受け、リバーサイドボーイズたちに情報はないかと声を掛け、調査を始める。すぐにその裏には組織的な犯罪グループがいるようだとわかり……。すすきのアウトサイドパーク周辺を舞台に騒動が巻き起こる激動の第五話。
第六話 混沌非存在
2023年11月末。
妖刀使いはこの街に突如現れた〝非なる存在〟を追いかけていた。それは人の目には見えず、何かしらの能力を持った存在にしか見ることが出来ない存在だった。人の目に見え無いのに、粛々と街に大災害なる災厄をもたらそうとしていたのだから質が悪い。その上強敵。苦戦する妖刀使いはエスオーエスを俺に送る。こうして、茨戸創は未知の生物に対峙することになった。
同時刻。魔法少女、ルルシュシュ・リラ・ルシエも〝非なる存在〟を追っていた。非存在。魔法少女の本来の敵は妖刀使いであったが、妖刀使いの今の敵はこの〝非存在〟だと言うので、仕方なく共闘することに。一方、茨戸創は妖刀使いが苦戦するような相手なら強力な助っ人が必要だとリバーサイドのメンバーに連絡をとる。
未知の存在の討伐という同じ目標を共有したその夜、この〝すすきの〟の街に能力者が勢揃い。魔法少女と妖刀使いと超能力者が神出鬼没正体不明の非存在と会敵!混沌非存在が秋のすすきのを駆け巡る第六話。
第七話 合法ドラッグ待合室
無差別殺傷事件が起きた。場所は薬局。小さな薬局ではなくある程度広いところだ。大学病院のような超大型ではなく、駅の近くのパン屋があったりする。
被害者にガキ共のグループ、ガールズがふたりいたとセイヤから連絡が来た。犯人は依然逃走中。警察も必死になって捜している。つまりこの街一番のオーガナイザー、俺様の出番というわけだ。
皆の期待を存分に背負い、ぶんぶんと街一番優秀な腕を回し、意気揚々と見慣れた街に出かけた。待ち受けていた悪意など想像もできずに。殺意と夜の東側に対峙する第七話。
第八話 盗撮jkアイアンボトム
高校生の女の子が盗撮被害に遭った。無料の占いを餌に、個室で占いに夢中の若い女の子のパンツを椅子の下に仕込んだカメラで隠し撮り。手に入れた動画像をネットで販売、ボロ儲け。被害少女は同じ絵画教室に通っていたリバーサイドガールズに相談し、その相談が俺に回って来た。盗撮占いグループを捕まえて金を巻き上げようと調査を始めるが、ただの低級犯罪組織ではないことが分かってきて。
金と欲望と悪と裏社会。繰り返される負の連鎖が街を大きく巻き込んで物語を進展させる。甦った激戦海域で戦う第八話! (08peep_code/jk:Ironbottom
第九話 気候変動異常気象憂慮詐欺
ひとりの高校生が特殊詐欺の被害に遭った。高齢者が狙われることが多いとワイドショーのいいネタに、エサになっているこの犯罪だが、若者が被害に遭うことはあまり聞かない気がする。俺はよく目の当たりにしているけどね。
いつの時代だって弱い者を食い物にする人間はいる。いつの時代も許すことはできない。被害者の高校生は純心で、環境問題を日々考えて憂いていた。学校の授業だけでは飽き足らず、環境保全活動なんとか団体に参加して募金活動をするほど熱心。しかし悲しきことに、一生懸命になっているときほど自分が見えずに、周りが見えなくなっていることなんてのはよくある話。詐欺師に騙されて借金地獄になった。
これは事件も相手も自分も勘違いした俺が完全敗北したときの物語。あらかじめ言っておくけど結末はどう見てもバッドエンドだから、読みたくない人は飛ばしてくれ。無様にやられる姿を見たい物好きは最後まで楽しんでくれよ。
惨敗、完敗、完全敗北、最凶の詐欺師が微笑む第九話。
第十話 金銭恋愛マッチング、待機中(1/4)
オンラインゲームで対戦相手が見つかることをマッチングという。辞書的に言えば、同一時間に同一ゲームをプレイすること。また、プレイできるようにプレイヤー同士を引き合わせること、みたいに書いてあった。友達とゲームをやる、格闘ゲームみたいな対戦ゲームをやると休み時間に話が決まればロクヨンやゲームキューブを持ってる友達の家にみんなで押しかけるのが少し前の日常だった。おやつなんかを持ち寄ってな。イマドキはインターネットを使ってゲームをすればいい。お気に入りの自分の部屋から出ることなく協力、対戦プレイだ。友達の家に遊びに行く文化が廃れちゃうのは、それで悲しいけどね。
大人も子供も無作為にマッチングする世界でのトラブルはどれも浅漬けのきゅうりみたいな味しかない。街のオーガナイザーがわざわざでるまでもない。しかし大人のマッチングが関わるとなれば話は違う。恋や不倫や人間関係のもつれみたいな問題なら、それはよく漬かったたくあんみたいにおいしいぜ!
しかし話を聞いてみたらなんとゲームでマッチングした相手とリアルでマッチングしてそれが友達に恋人に発展マッチング(?)を目論む男女の駆け引きだって!? えっ、オフ会はイマドキの常識だって? おじさんはもうついていけない。
いつの時代も恋も愛も金が全て。ゲームのコントローラーを握りながら出会いを探しに行く第十話。
〉閑話
第十一話 青時雨、魔法少女と、運動会
今年の久瑠美の運動会の日程が決まった。今度の日曜だ。妖刀使い、桜お姉ちゃんも張り切っている。しかし、カメラがない。そこにやってきた魔法少女ルルシュシュ・リラ・ルシエ。魔珠を賭けたタイマン勝負を条件に専属カメラマンに。めちゃくちゃいいカメラを持っていたからこれが大助かり! 高画質の写真で娘のアルバムが作れるぜ。
妖刀使いと魔法少女とオーガナイザー。主役は娘。この世とは思えない組み合わせで運動会を盛り上げる十一話。
第十二話 さあ無敵だ、これが最後の恋
甘酸っぱい恋はお好みかな。今も昔も「甘酸っぱい恋」は聞く言葉だからきっと若い子からいい大人まで自分事ではない誰かの「甘酸っぱい恋」に夢中なこと間違いなし。しかしこの言葉、辞書で調べると「うっとりと快い気持と感傷的な気持が入りまじって、やるせない感じ」とある。なるほど。やるせない、か。ちなみにやるせないは「思いを晴らすすべがない、せつない、施すすべがない、どうしようもない」とある。つまり甘酸っぱい恋は叶わなかった恋、片思いもしくは両思いでも成就できなかった恋となる。だからタイトルに甘酸っぱい恋とつけた瞬間に出オチ、ネタバレ、結末まるわかり。まあ、最近の映画も漫画も小説もラノベも小説も漫画も映画もタイトルから物語の内容や中身が想像できないと手に取ってもらえない情報飽和情報大正義社会だから、この言葉はきっと尚の事使い勝手がいいのだろうと思ったよ。
それにしても単語ひとつのタイトル、「潮騒」とか「告白」とか「壁」とか「すすきのアウトサイドパークッ!!」みたいな表題の小説は時代遅れなのかな。あらすじみたいなタイトルを読むだけの人間より、言葉の裏側を想像できる人間でありたいと思う。
さて、今回も予告編までの前ふりが長い予告編。第十二話は茨戸創くんの恋のお話。実は前々から真剣に娘のためにお母さんを迎え入れてあげたいと思っていた。妖刀使いは親代わりはできても母にはなれない。桜お姉ちゃん以上の存在にはなれない。だから、本当に久瑠美のことを思うのであれば、俺よりも娘を大切にしてくれる人を探したい。まあ、俺にガールフレンドができなかった理由は女の子よりトラブルを毎日追いかけていたことなんだけどね。
だけど人生分からないもの。そんな俺がある日ふと出会った女の子に告白されたんだ。「好きです! 付き合ってください!」って。嘘じゃない、ほんとほんと。
遊びの恋はいらない。さあ本気に無敵だ、これが最後の恋。ハニーハニーで甘酸っぱい恋の第十二話。
表題:スピッツ、ハニーハニーの歌詞より
第十三話 雪暗て灰雪、慮外の爆散&自己中配信中
修学旅行生が雪まつりの市民雪像をぶっ壊した。悪ふざけがエスカレートした結果だとか。
市民雪像は抽選に当たった有志の方が講習を受けて作ったもの。参加費を取られることもバイト代が支払われることもない。誰でも参加できるが、誰もが抽選に当たるわけではない。そんな市民の皆さんの力作が毎年並び、ずっと国内外の人々を楽しませてきた。作った市民にとって今回の事件では、怒りというよりやり場のない悲しみがただ残るだけだった。
この事件は巷でも、ネットでも話題になった。これにより市、雪まつり運営、修学旅行の中学生、当該者の所属している学校、いろんなところに非難と悪口が殺到した。特に現場の警備体制や運営の対応を糾弾する人が後を絶たず、運営は好き放題にヤジを飛ばす外部の人間どもの対応に苦慮していた。だからといって、ここで該当の中学生を犯人として突き出して晒し者にしようものなら、今度は雪像を壊したぐらいでそんなことするなんて可哀想だと非難を浴びること間違いなし。そう、外野にはたかが雪像だとしか思われない。
俺はずっとこの街の市民だから、行かなくても良いかなと毎年思っているのになんだかんだ文句言いながら毎年雪まつりに足を運んでいる。そのついでに現場を見にいったのだ。そこで運営の人がこの街一番の有名人である俺を見つけて、声を掛けた。運営側からのエスオーエスをこうして正式に受け取った。
時間軸としては第三次すすきの抗争の直後
これは伝統を守ってきた報われない努力と、仲間内の声を無視できなかったガキと、それをおもちゃのように突如主張を始めた自己中心配信者を巡る話。できれば平穏に楽しく楽しみたい雪まつりの二月。雪暗を見上げ灰雪を待つ第十三話。
第十四話 雁来成哉殺人事件
「創、頼みがある。俺を助けてくれ」
殺人事件が起きた。
「犯人だと思われている。そう簡単には覆らないだろう。助けがいる」
今のところ、この電話だけが全てなので、全貌が見えない。
「幸いにも俺には多くの仲間がいる。そのうちのひとりがお前のところへ行く。本当に頼めるのは創、お前だけだ」
電話が切れる。いつもの冷気は感じられない声だった。
目的地に着くと成哉の言う人間はすぐに現れた。
それは俺の記憶媒体が生涯忘れ無いであろう男だった。
「久しいな、オーガナイザー。私のことは覚えているかな」
最凶の詐欺師、死屍累々と殺人事件に挑む。世界変革の時が鳴る前に助け出せ! 真冬の旭川が舞台の第十四話!
第十五話 vsすすきの代理戦争・夏の陣
2024年8月22日。
「創くん、ついに決着をつける時が来たね」
「娘よ。俺はこんな形で敵対したくなかったよ」
「キエン・万丈!」
「いつも熱苦しいのよ、兄さんは」
「創成川リバーサイドボーイズに栄光あれ!」
「創成川リバーサイドガールズに栄幸あれ!」
「決着をつけるわよ、妖刀使い!もう逃さない!」
「まったくしつこい人ですね。息をつく暇もない。毎夜戦うのは私も疲れます。では、こうしましょう。代わりの者を立てるのです。代理戦争です。私も、そなたも自分の代わりに戦う者を選ぶのです。一人ではなく、複数人自分の味方を選んで戦う。もちろん、我々も大将として参戦する。どうでしょう」
「臨むところよ!」
こうして始まった魔法少女と妖刀使いの代理戦争は「すすきの」の街全てを巻き込んでいく。さらに新登場!戦国無頼一刀流『景久弥五郎』!
運命の代理戦争大決戦!出会え!出会え!皆の健闘を祈る第十五話!
第十六話 札幌Black bites/歌う置き配泥棒
置き配は、今や日常に溶け込んで当たり前になっているサービスのひとつ。お陰で時間指定をして、正座でインターホンを待つ必要は無くなった。好きな時に好きな時間に受け取ることができる。物流の人手不足と需要が爆増を続ける世の中。再配達が減るのは、一助になるのではと安易ではあるが思う。
置き配はとても便利で有益なサービスであるが、しかしどんなところにも悪いことを企む人間はいる。宅配ボックスがあれば心配無いが、玄関扉前などを指定するのは珍しくない。置き配泥棒はそこを、その一瞬を狙う。
一方、〝ブラックバイツ〟という暴力強盗窃盗団が〝すすきの〟の街を震撼させていた。個人宅にも営業中の店にも問答無用で押し入り、金を強奪。住人が抵抗すれば全員殴り殺す。凶悪卑劣な犯罪。噂によるとその一部が氷永会と衝突したという。互角に戦えたっていうから驚き。ヤクザ相手に負けないとは、なかなかやるな。
ボーイズも被害に遭っていたらしく、憤った成哉から俺に指令が下った。窃盗団を潰し、目の前に連れて来いと。氷永会も似たようなことを言っている。出番だな。
これは大きな犯罪に隠れた小さな犯罪の話。星空ばかり見ていると、足元の百円玉には気づかない。小さな幸せを感じるのはどっちだろうな。
流れ星と流れない星を見上げて数える時間帯に、ひとりで黒いラーメンを食す第16話!
第十七話 卒業詐欺と白翼のホワイトファルコン
オンラインアイドルグループ、☆奏でる白の翼☆は会いに行けないアイドルとして、ごく一部の人間に好かれているという話を聞いた。なるほど、リアルなライブを一切行わずに動画投稿や配信だけで活動するのか。回収できるかどうかわからない高額な箱代も経費もいらない。無名でも新人でも売り出せる環境がある。地道な活動を積み重ねる事に変わりはないが、事務所などの後ろ盾がなくても活動できる。うってつけの環境ってことか。
その☆奏でる白の翼☆の一人が卒業した。タカの話では卒業詐欺だと糾弾されているとか。そして卒業したその女の子は氷永会の賭場利場で仕事をしているって。何で?
今回は欲が入り乱れるトラブル。金と地位と名誉。画面の向こう側で白の翼を奏でて歌って踊る。苦境のアイドルを救い出す第十七話!
第十八話 静謐完美なりて、すすきの交差点に神が宿る
すすきの交差点を知っているだろうか。札幌駅前通と南4条通りの大きな通りが交わる大交差点。右手にグラス、左手に穂を持つ『W・P・ローリー卿』が六色のLEDで光っている、この〝ニッカウヰスキーおじさん〟が象徴的。半世紀、この交差点をずっと見守っている。映画などでも良く出てくるし、テレビでまず使われるのはここ。〝すすきの〟といえばの文字通り看板名所。道内外問わず使われ、親しまれている場所だと思う。
〝すすきの〟は開拓者が退屈で帰るのを防ぐために赤線(青線)、飲み屋街を作ったのが始まり、とよく言われるがそれは明治の話。キャバレー、ツブ焼き屋台、桃線、トルコ風呂。後世の人間は性文化、慣習を勝手に問題視しているがそれは昭和の話。平成以降の話は語るまでもない。
締めに食べたラーメン店の隣を見たら、一階が「風俗YOASOBI」二階が2時間980円飲み放題串、三階が激安お一人様ホテルのビルだった。これが普通の街。仲良く同居しているってことだな。
風俗、飲み屋・居酒屋、お酒お酒欲望びっしりなのに、令和の〝すすきの〟は治安が良い。すすきの交差点の客引きはカラオケか通常料金居酒屋しかいない。裏道一本入っても悪い店に誘導するチャラい若者は殆どいない。女性が一晩飲み明かしても安心してタクシーに乗って帰ることができる。05年すすきの条例、17年北海道暴対法。現実は警察がしっかり治安維持しているからな。安心して歩ける。おやっさん大活躍。氷永会みたいなのは、まだいるっちゃいるけどおとなしくしているから、ヤクザのお家に遊びに行かなければ大丈夫。
今回の物語は〝すすきの交差点〟の話。戦国無頼一刀流、『千紫万紅・無銘刀』景久が妖刀使いを夜の〝すすきの〟に呼び出し、その大交差点で何か“大きな事”をやりたいらしい。また、その同時期にイッテルビウムという謎の会も妖刀使いに接触してきた。嫌な予感がするな。
令和の妖刀と平安の武士が交差する時、すすきの交差点に神が宿る第十八話!
第十九話 シン・朱色の塔と赤い観覧車
地下に暴力的違法闘技場があるとの情報がビッグボスから入った。今度の命令はそこへ行けという。殺し合い、殴り合い、賭博、クスリ。常に死体が出来上がり、投げ捨てられている死の闘技場。勝者に贈られる景品は最高級のおクスリ。もちろん脱法なんて言う生易しいヤツじゃない。真面目なクスリである、メタンフェタミン、アンメタフィン、フェニルメチルアミノプロパン。これら覚せい剤と呼ばれる白い粉の各種定番商品の品種改良品。派生品だとか。単にスピードを買うだけなら、それだけなら悪い人にお金を払えばスマーファーから買うことができる。わざわざデスマッチに参戦する必要はない。特注品ってこと?
闘技場で貰えるその景品は覚せい剤強化版でもはやシャブでは無いと成哉は言う。別物の新種。名を〝チカ・フィッシュ〟。それを接種すると人間が人間では居られなくなるとか。驚異の肉体変化を手に出来る、人では無い生物になる代物だと言うから、恐ろしい。誰がそんなの欲しいんだろうね。
こうして、茨戸創は意図せずして生死を賭けた殺し合いに身を投じる事になった。生きて帰れるのだろうか、心配。
赤のテレビ塔と観覧車の真下に二つの闘技場。地下深く地下街にて、白いクスリが赤に染まる戦いが幕を開ける第十九話!
第二十話 茨戸創
茨戸創は健康に生まれ、何不自由なく育った。何不自由なく育てたのは生みの親ではなく、育ての親。名前は生みの親が付けたが、家族にはなれなかった。親はふたりいる。特別話すことでも無い事実。ただ、それだけだった。
生みの親は必死に親になろうとした。でも、なれなかった。どうしても親である姿を決めて、世の中が思い描いたような親が親だと思ったから出来なかった。誰でも同じ様な親になれるわけではない。最初から育児をせずに放置する家庭もいる。生みの親の両親、おじいちゃんおばあちゃんに丸投げもいる。でも創の親はそうではなく、頑張ったが親になれなかった。思い悩み、心身を痛めた。育児ノイローゼ。子供のために家族になることを断念した。それが俺の家庭。
世間は親を批判するだろうし、俺を可哀想だと言うかもしれないし、家庭の事情だからと口を出さないだろう。それで良い。物語の主人公はよく親がいないな、と呆れ返れば良い。思い込みと偏見を持ってな。
これは茨戸創の物語。これが本作「すすきのアウトサイドパークッ!!」の第二十話。
第二十一話 桜の時歌、満開のすすきのアウトサイドパーク
誘拐事件が発生!被害者の両親は「警察に連絡したら殺すぞ!」を鵜呑みに。美少年的美少女探偵に依頼が舞い込み、その探偵が俺に依頼。今日も懲りずに事件に首を突っ込むぜ。
犯人の正体はどうやら暗号によって隠されているらしく、一緒に解読することに。……って、いや、そんなの。暗号で犯人特定って、そんなの安いドラマの設定じゃあるまいし。分かったぞ!まさか!僕としたことが!オチは語る前から決まっている。予定調和だ。さて、今回はどんなベタを作者は思いついたのかな。
北海道の桜は五月の頭が見頃!舞台はすすきのアウトサイドパーク!満開の桜の樹の下で、人攫いを追い詰める第二十一話!
第二十二話 隙間バイトの噂。サイレント・エスケープ・サイト
過労で倒れた四十代男性がいるとガールズから連絡があった。ガキ共とは縁がなさそうなおじさんの生き死になど興味はなかったが、そのおじさんの周辺から「骨ネズミ」という懐かしい名前が出てきたので俺は話を聞くことに。
そのガールズはボランティア活動をしていて、同じくボランティア活動に携わっていた「骨ネズミ」と俺は再会した。かつて死屍累々に騙され、自己破産、多額の借金によって人生破滅に追い込まれた当時高校生の男の子。今は立派な社会人。ボランティアは続けているという。偉いな。
ボランティア団体の世話になっている生き倒れた四十代男性の職業は隙間バイト。就職氷河に巻き込まれ、非正規で食いつなげるも、非正規で採用されるのは若い時だけ。年とともに雇ってくれず、履歴書面接不要の隙間バイトに流れ着いた。それの何が問題かは……あとはわかるよな?
今回は現代の労働問題。使い捨て労働者に人権はあるのか。働くとは何か。生きるための労働なら、その人生に意味はあるのか。
雇用側の思惑と労働者側の思惑が交差して歪が生まれる。声なき叫びは誰に届き、逃げ場はどこにある。
隙間バイトの闇に立ち向かい、生きる意味を探し求める第二十二話!
第二十三話 青々くらげに佇む家出少女の全てはifになるか
「助けてください。逃げてきました、助けてください」
リバーサイドガールズのひとりが裸足で半裸の女の子を保護した。
彼女は父親の性的虐待から逃げてきたと言った。家庭内レイプは日常的に行われ、幼い頃から受けてきたと言う。もちろん、そんな認識を幼い6歳の時に持てる筈がない。自覚したのは第二次発育促進期を迎えた最近だった。
尻を撫でられ、胸を触り、濃厚なキスが家族の当たり前。日常。親子のスキンシップとして、これが極当たり前の事なんだと思って生きてきたという。
小学生の高学年、中学生までこれが続くと性について学ぶ機会が増えた。胸も発達し、恥ずかしさを覚えるようになる。しかしこのスキンシップは彼女の日常であり、今更拒否することが出来なかった。家族の常識を否定できなかった。
多少不安な時があっても多くの場合、咥える事も挿入を受け入れる事に疑問はなかった。これらは小さい頃からずっと変わることの無い出来事で、その度に「好きだよ」「一番大事に思っているからね」「何か困ったことがあれば相談するんだよ」「パパはずっと味方だからね」と掛けられ、学校でうまく人間関係を作れずに孤立しがちだったのでなおのこと。その度に安心していたのも事実だという。
ある日父親が知らない男を、母が不在の日に二人連れてきた。セーラー服を着ているように指示されて部屋で待っていた。部屋に入って来た男たちは笑いながら「可愛いね」「可愛いね」とさすりながら手を伸はます。それを見ていた父親もいつものように笑顔。それがだめだった。
結果、三人に回された。普段とは違うこの強引さに、この時初めて近年エスカレートしてきた父の行為が辱めであったことを認めた。逃げた。
破れたセーラー服と靴のない素足。泣くことを許してと歯を食いしばって泣き、細い腕を振って必死に駆ける。〝すすきの〟の夜街に若い肌が切り裂かれる。足を前に進める度に顔と体、膣から流れ出す白濁。
被害者家族と加害者家族。国は児童虐待のうちの性虐待の件数を記録しているが、これに家族は含まれない。隠れた被害者の涙はどこに流せばいい。この少女は俺たちが抱きしめた。その涙は俺たちが受け止める。
この父親と彼女は血縁関係がなかった。また、同様の行為を何軒も同時に養父として父親づらして出入り。何人もの少女を犯していた事が判明。極度のペド。何て奴だ。
男がこの少女を逃がしたとなれば、奴は必ず探しに来る。警察に駆け込まれてはたまらないはず。の母親も含めて早急に解決しろ。ガールズから成哉へ。成哉から俺に。話が回ってきた。
前置きが長くなったな。今回は胸糞悪い話だから気をつけてくれ。犯罪者を追い詰めて懲らしめる。これだけ聞くと、いつものパターンになりそう。結末を期待してくれ。
令和のセクシャルクライム。閉鎖的性犯罪と家庭に隠された暴力に光を当てて少年少女を救い出す。君はもうひとりじゃない。
偽りの家庭を潰し、無垢な少女に植えつけた卑劣な常識を覆して助け出す。悪逆無道な欲情を成敗する第二十三話!
第二十四話 連殺マールク・ピアチェーレ
創成川リバーサイドボーイズのメンバーが殺された。
通夜に参列。悲しみに暮れるガキ共と俺と成哉。悔しさに震え、必ず仇を取ると誓う。
犯人は犬猫を日常的に快楽目的で殺し回り、それをエスエヌエスで発信し続けている事を掴んだ。しかし、それだけ分かりやすい犯罪を繰り返しているのになぜか逮捕されない。おやっさん曰く、「奴の事は名前しか分かっていない。どうしてか、いつもうまく立ち回って捕まらない。見つからないってのが正しいんだが、警察が見つけられませんなんて言えないだろ。全力で捜査しています、としか言えねえ」とこちらも悔しさにため息が止まらなかった。
どうにもできないもどかしさと感情に、俺は6月に訪れた早すぎる夏空に向かって叫ぶ。俺は虐殺された犬猫の死体を辿り、活動範囲を掴んだ。今日も己の正義のために目を見開いて〝すすきの〟を飛び出す。犯人の活動範囲は新札幌。札幌の副都心だ。
今回の相手は犬猫殺しがエスカレートして遂に人にまでその刃物を振り下ろした凶悪犯。仲間がやられた以上、今回も懲らしめる他に結末はない。この街は傍若無人な犯人を許さない。ガキ共が総動員で手にした情報によると、相手は……おいおい、小学生ってマジで言ってるの?
法律と証拠と保護とエスエヌエス。小さき者の歪んだ価値観と一級虞犯触法少年に立ち向かう。この街一番のオーガナイザーが男を魅せる第二十四話!
第二十五話 完全無頼vs完全無敵のシンキングファスト
「創、野球をしよう。野球チームを作る」
王様からの突然のお誘い。今回は野球に関するトラブルだ。端的に言えば野球賭博関係のトラブル。プロ野球は関係ないぜ。我らのビッグボスが理由も無しに野球チーム作りを命令するわけない。でも、野球なんてまともにやったことないし運動も得意じゃないんだけど。人選ミスでは。
今回の相手は巷でブイブイ言わせているトクリュウ製作委員会。令和だと犯罪組織って言わないと罪深さは伝わらないかな。悪の道を極める人間にとって、金のためだけに悪さする人間は悪い人たちの間でも悪い人。つまり半グレ組織たち……が厄介視している存在が対戦相手。成哉が言うに、その名前は「完全無頼」。だせぇ。
白球を手にしたその時から真剣勝負が始まる。キエン・万丈・ホームラン。俺の持ち球は「シンキングファストボール」。超能力みたいな変化球、変化球みたいな速球で相手バッターを打ち取れ。さあ、いざ尋常にプレイボール!半グレ組織とヤクザとガキ共と完全無頼と闇野球場で真剣勝負をする第二十五話!
第二十六話 GHOST OF YOUTOU
「創くん。ヒグマ探検隊は大発見をしました」
いつの間にか結成、活動していた久瑠美率いる「コグマ探検隊」。近所を闊歩する子供の遊びだと思っていたが、見つけたのはなんと妖刀。「桜木坂」とは別物だ。嫌な予感がする。
妖刀使い、影武者、そして三人目の刀の名前は『妖刀・ルカネノエムフリカムイ』。長いので久瑠美は「ルカ」と呼ぶことに。急に可愛くなった。
この刀は全部で七本あり、旭川、日高・平取、釧路桂恋、鶴居、北見、網走の各地に眠るという。「ルカ」は旭川出身だと言うので、他の地域に探しに出ることに。秋の連休の現地学習旅行。たまには遠出するのも良いだろう。北海道は広くて知らないことばかりだということを知ることができる。知らないことを知るということで、知らないことを知る事が幾つになってもわくわくする事も知ることができる。わくわく!
血に飢え、人々を噛み殺して震撼させてきた七本の妖刀を探しに全道各地を駆け巡る娘との北海道旅行。妖刀使いと影武者と風俗ガールと妖刀ルカと娘と俺の大所帯。刀は何処だ。伝説に語られ人々に恐れられてきた七つの妖い刀を探す第26話。
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