幼馴染との再会を願うエイリッドが手に入れたのは、異国の言葉で書かれた一冊の手記。古い時代に皇帝の妃が記したものらしい。それは物語なのか、史実なのか――やがてエイリッドの周囲でも事件が起こり、二人のヒロインを中心とした物語が重なり始める。
時代も場所も全く違う物語が同時進行で展開し、読み進める中で一つの物語へと完成されて行きます。その中心にあるのは一冊の本。手探りなまま手記の真実を追う中で、エイリッドは自らに関する現実にも直面することになるのです。
それぞれの生きる世界で悩みながらも戦い、もがく女性たちを応援したくなりますよ。始終漂う不穏な空気感の演出もお見事です。境目の曖昧な物語の世界に、思う存分浸かってみませんか?
一冊の書がすべてを握っています。
三百年前に異国で書かれた手記、それを主人公のエイリッドが手に入れた事で物語が動き出します。
手記を書いたのは大東国の皇帝の妃である雪月。
彼女が経験したことを綴り、それが時を超えエイリッドの手へ。
異国語で書かれた手記をエイリッドが少しずつ読み進めていくのですが、彼女の周りでも不可解な事件が起き始め、より一層手記の内容が気になり出します。
エイリッドと雪月、二人の物語が交錯する様を確かな筆力で表現されていて、ストレスなく読み進めることができます。
先が気になり、つい時間を忘れて読みふけってしまうこと間違いなしの作品です。
リングランドの淑女、エイリッドが手に入れた三百年前の手記。
大東国の妃が書いたその内容は、後宮での異変について。
敬愛していた皇帝陛下が、ある時を境に豹変してしまったというものだった。
とうの昔に起こった出来事といえ、手を差し伸べたくなる妃の境遇。
しかし、胸を痛めるだけには留まれない。
手記を読み始めたエイリッドの周囲でも、不審な事件が起こり始めるのだ。
三百年前と同じように。
桃の薫るような大東国の後宮と、霧の煙るようなリングランドの街区。
時代も場所も異なる両者を描き分けつつ、ストーリーは前進する。
はたして過去と現在に関連はあるのか。
あるとしたら、その正体、その動機とは――――
引き込まれる物語はさることながら、構成の巧みさも輝きを放つ作品。
ご一読を。
土産物として、一冊の書物を手に入れた少女エイリッド。書物を読み解いていくと、それは異国の妃の手記で――やがて、現実と手記の出来事が重なり合っていく。
主人公・エイリッドは、外交官として異国に赴く家族の帰りを一人待つばかりの孤独な少女。けれど、幼馴染サイラスとの約束を胸に、大東国の言語を勉強し、自転車に乗って図書館に出掛ける、夢と憧れを胸に抱えています。孤独につぶれず、夢を決して忘れず、一途に言語を学んだ彼女は、遠い記憶と異国の憧れを忘れずにきらきら輝いています。きっと読む人はすぐにエイリッドが好きになる。
そんな彼女が手に入れた古い手記。エイリッドが憧れる異国はどんなものだろうと横から覗いていると、やがて現実でも同じ事件が起こり、重ならないはずだった二つの世界が混じり合った時にはっと息を呑むサスペンスが幕を開けます。ずっと会えなかった幼馴染との再会、突然の婚約話、次々起こる事件、何が嘘で本当かわからない。そんな波乱な展開の中で、手がかりとなるのはエイリッドが読み解く手記――最初はちょっとした好奇心だったのに、どんどん手記に何が書いてあるのか読者まで気になってしまいます。
さらに、魅力的なのは、手記の中の異国の妃・雪月ももう一人の主人公として好きになってしまうこと。豹変してしまった皇帝、訳を知ろうとする雪月、そして共に謎を追う宦官・万――誰も彼も魅力的で、手記の中の世界にも夢中になってしまいます。手記の終わりはとても切ない。
エイリッドの夢と憧れはどうなるのか、手記に残された想いとは、事件の結末は、二つの世界はなぜ交わるのか。目が離せない展開で一気に読んでしまう二重、三重の世界に引き込まれる素敵な物語でした。
主人公エイリッドの生きる近代イギリス風のリング王国と、彼女が憧れる遥か彼方の中華風の大東国――大東国は遠くにあってエイリッドの国とは何もかも異なるのに、彼女が父の贈り物の机で300年も前の大東国の妃・雪月の日記を見つけた時から、二つの世界が少しずつ重なっていく。奇妙なことに遥か昔の遥か遠くで起きたことがエイリッドの身近でも起こり始めるのだ。そのスリリングな展開には、読み進めるたびにハラハラドキドキする。
イギリス風世界と中華風世界の両方の描写はとても巧みで引き込まれる。エイリッドの幼馴染のサイラスのことや、女性の地位が低い社会でのエイリッドの奮闘も興味深い。
本作を最後まで読めば、雪月のたどった運命は分かってしまうだろうが、雪月を主人公にした物語も読みたくなった。
遥か遠い大東国に憧れる、外交官の娘エイリッド。
彼女はある日、父から大東国の精巧な作りのアンティークのテーブルをもらう。
このテーブルの中に隠すように入っていた、一冊の書物。
紐で閉じた相当に古い書物は、どうやら三百年近く前に滅んだ王朝、その皇帝の妃妾の手によるものだった。
その書物に夢中になるエイリッドでしたが。
その書物を読み始めてから、エイリッドの周りで変化が起こり始める——。
エイリッドの物語と、書物の中の物語が同時に進行するのですが、この書物の文章が抜群に素敵で、読んでいるだけでうっとりします。
どうか皆様にもこの体験を味わっていただけたらと思います!