第17話
「愛を誓わせるって...この愛だなんだとか枯れ果てた時代に、よくもまあぬけぬけと胸張って言えるものだな。」
ため息交じりに顔を逸らす殺生院とは対照的に、人工知能AIは胸を張る。確かなふくらみとともに、鼻息荒く。
「ええ、AIですから!それにほら、私は愛を語るにはあつらえ向きですよ。なんて言ったって名前がAI。愛なんですから!」
ふんす、と彼女はホログラムのステージの上で先制する。その姿に少し圧倒されるが、彼も負けじと口を開く。舌戦と呼ぶには程遠いが、じゃれ合いと表すほど真摯さに欠ける話題でもない。
「まあ、そんなくだらないダジャレはさておくとして...絶対特権を使ってまでそんなことさせるような奴はいないと思うよ。」
そういうと彼は来た道を引き返そうと歩みだす。するとAIはホログラムに地図を映し出し「ここから帰寮するなら、右の道が最短ですよ。」と様々なルートを提示する。それを横目で見やると、ああ、と諾々にして曖昧な返事とともに側道に逸れる。目の前には旧名古屋駅に通っていた、今は廃線となっている線路の下を潜り抜けるような若干薄暗い道であった。
「...不良でも通りそうな道だな。本当にこの道で会ってるんだよな?」
眼下に広がった数メートルのトンネルには、いつの時代かもわからない年季の入った落書きが所狭しと並べられている。さらに時が流れ、それでも残るようなことがあれば、それは人間の歴史と言っても差し支えなくなるだろう。時という概念はまるで魔法のようなもので、人間に解読できる日が来ることはないだろう。きっとどこぞの古代人が、過行く世界に置いて行かれないように名前を付けただけであろうから。
「不良って...いつの時代の日本ですか。」
「今この瞬間の日本だよ。」
まあいいや、と呟き殺生院はその線路をくぐる。そこから先は人通りもあまり活発には見られず、先ほどの道とほとんど変わらない。しいて異なる点を挙げるとするなら、学生御用達のショッピングモールから離れたことで、見晴らしがよくなったくらいである。それと右手側には小川が流れており、左手側には、若干荒れ気味の街路樹と、そこから見える古びた遊具が鎮座する公園が眼下に広がることぐらいか。
「...話を戻して、僕はね、絶対特権でそんなことはしないよ。それこそ絶対にね。」
「そうなんですか?あんまり絶対特権で、そういう特定個人に対して行われるルールを定める人ってあんまりいないので、面白いと思ったんですけどね~。」
「ああ、そういう...」
すべてを統括する人工知能AIは、幅広く広がっており、未来機関有数の大企業の中枢を担うスパコンから、このような個人の端末にまで幅広く利用されている。1つのシステムに社会全体を依存させるということは大きな欠陥が起きたときに社会を混乱に導くもとになる危険性を孕んでいるが、その問題をカバーするのがAIの分断である。そのシステムは、多くの企業が人工知能AIの導入を渋る中で、突如として発表された、新進気鋭のものであった。
すべての出来事に順応し、ディープラーニングを続ける人工知能は、未来機関の保有する人工知能AIのみである。他の人工知能たちは、いうなれば子供の端末。インストール先での順応を未来機関が管理するおおもとの人工知能AIに循環する形として進化をフィードバックすることが出来るが、その子供の端末は、別個の子供の端末には相互不可侵の独立した統制を確立している。いうなれば三角関係のようなもの。大人は子供①と子供②から基本的に情報を共有するだけ、そして子供同士はお互いに関与しない、というような形でトラブルを避けている。つまり、情報を未来機関の保有するおおもとの人工知能AIは、すべての子供の端末であるAIの予備のような存在であると言える。
一応、その予備の知識を共有する際には、未来機関が管理する親端末からも媒介を通せすことで情報の共有が可能になる。媒介というものは公にはなっておらす、その秘密を知るものは勿論未来機関、それもごく限られた人間のみである。
そのため、大企業のAIが管理する機密情報が、勝手に個人の携帯端末などにアクセスされるということは起こり得ない。基本的に大人端末からの情報共有は媒介を通すためである。
閑話休題。子供の人工知能である殺生院が持つAIが絶対特権を保有する先駆者たちの情報を持っているのは、それが未来機関でのスタンダートな情報であるからである。どこの地域に存在するランカーが、どのような絶対特権を発動させているのか、という情報は、未来機関のホームページにも乗っている。そこから情報を吊り上げて殺生院の願いを見つける形で提示していたのであろう。もしかしたら、もっと別の思惑も存在していたかもしれないが。
「そもそも絶対特権って使ってる人も少ないですしね。今のランカーなんて半分も使っていませんよ。見ますか?」
ほら、っと言いながらホームページを映そうとする彼女を制止しながら、殺生院は目を細める。それは手に余る子供につかれたようにも、未来を説く年上の俯瞰にも見えた。
「いや、いいよ。ありがとう。別に他人がどうのこうのっていうものじゃないと思うんだ。絶対特権って言うのは。なんでも願いが叶うって言うシステムは、人間を形作るようなことだからね。其れの如何で人がわかる。」
一息、早口でまくしたてられた彼の持論に、AIは髪をくるくると弄りながら、しかし正確に傾聴する。人の心理を学習し、さらなる発展を促すことを使命として与えられ、それのフィードバックを以てして更なる進化を遂げんとするのだ。
そのような彼女の崇高な営為に、殺生院は深く満足するとともに続ける。
「だからランカーって言われるようになってもおいそれと税板特権を使わないんじゃないかな。手の裡とかを見せたくないって言うのもあるだろうけど。」
そんなもんですかねぇ、と不思議そうにAIは首をかしげる。
「個人的にはそう思ってるよ。だからこそ、特権を使って愛を形成するなんてことはしたくないんだ。これは人としての矜持だ。もしやってしまったら、自分だけの力じゃそれが出来ませんって降参しているようなものだからね。」
「そこまでわかってて童貞なら、もう四の五の言ってる場合じゃないんじゃないんです?言ってることは勿論立派ですけど。」
AIの心無い一言に、心にぐさりと刃が刺さったような気分になる。思わず吹き出しせき込めば、心なしか血涙でも出そうなほど口は乾いている。
「泣いてしまいそうだよ。」
「人間の矜持はどうしました?それは敗北の宣言です?」
くすくすと笑いながら、ホログラムが空を切るようにおどける。その姿は、電子の湖のほとりで駆け回る妖精のようであった。
「はあ、君と話していると本当に疲れるな。...ここから先、寮までの時間で一品、家作れる簡単なもの、考えておいてくれあとレシピも。」
「はあい。」
とはいっても、彼が食べるのはもう決まっている。肉じゃがになるのであろう。自分の料理の腕前は、ここに越して来た時から変わっていない。変わらない世界を進む世界の狭間に置いて行かれるような錯覚とともに、先ほどAIが提示した道を進む。
(...公園なんて、来たのいつ以来だろうな。もうずいぶんと近くすら通ってなかった気がする...)
ふと左手側に広がる公園を覗けば、広いグラウンドが目の前に広がった。ずいぶんと長い間放置されたそれは、かつての高校球児たちの夢を育むような場所ではなく、古びた雑草たちが日光浴するためのような、穏やかなそれに成り下がっている。逆にそれらが芝生の役割を果たし、一周回ってグラウンドとしての機能も復活するのではないかとは思うが、それにしては映え散らかす雑草たちの長さがまちまちである。
これまで自分がこの道を通らなかったことと同様に、他の人どももこのような道を知らない、もしくは通らないということが正解なのであろう。そう彼は推察し、ゆっくりと見渡しながら歩みだす。
公園と言えば、あるいじめられた少年を助けた男の伝説というものが思い浮かぶ。魔術の発現した少年たちを輪ゴム1つで制圧したおとぎ話。どこから伝え聞いていたのかも忘れてしまったが、今もこの時代に彼はまだ息をしているのであろうか。
そう、彼は――
(...いてぇ)
おとぎ話の本を読み聞かせる時のように、記憶という本を開こうとした刹那、軽い頭痛が彼を襲う。考えてはいけないと警告するでもするかのように。
このような頭痛が発生するときには思考を手放すのが最も良い。それがわかっていてもやすやすとさせてくれないのが人間の想像力というものである。何故、なんでと、そんなくだらない疑念を振り払うように、ゆっくりと足を踏み出す。
少し歩けば、グラウンド部分が終了し、公園の少し古びた遊具たちがその姿を覗かせた。とはいっても、何十年と放置されていたわけではない。座るためのベンチや自販機なども一応は完備されており、たまり場とするには絶好の場所であるとも思えた。それ故に―――
「えぇ、君めちゃくちゃかわいいね?どこの子?何高よ?」
耳障りな軟派の声が鼓膜を揺さぶる。テンションの高さが垣間見れる中途半端に裏返った声は、殺生院の眉を歪ませるにはもってこいのものであった。
声のする方を振り返れば、一人の女性が男性たち計4人ほどに絡まれているところであった。視線の先には男たち4人の薄ロ姿があり、その奥に――姿は目視こそできないが――女学とが鈴のような声で困ります、と呟くのが彼の耳にも届く。
「...なんか、やばいか?未来機関に通報とかした方がいいのか?」
スマートウォッチの中の彼女に話しかける。すると彼女はホログラムの大きさを調整し、小さく身をかがめ、殺生院にだけ聞こえることで呟く。
「位置情報はすぐに共有できますよ。通報しておきますか?女学徒が軟派被害にあっている、という旨で」
すぐさま反応したAIに、殺生院は逡巡する。この場合の最適解を求めて、刹那の間の沈黙。しかし――
「...いや、通報はやめておこう。僕が勝手な勘違いで以て事態を無駄に大きくしたら面倒ごとになりかねないしね。そんな面倒ごとは勿論お断りだよ。それは面白さより徒労が勝る結果になることが目に見えている。」
「そうですか。わかりました。位置情報共有を破棄しておきますね。」
そういうと、画面上に映し出されたメールの本文が削除される。位置情報、時間、場所などが記載されていたと思われるそれは、攪拌する結晶のように電子が分散していく。ガラスが割れた瞬間をスローペースで表したようなそれは、すぐさま空気の中に消え失せるように姿を消した。
「じゃあ、もう無視して戻りますか。ここにいても特にすることないでしょうに。」
ひそひそと耳もとで甲高い声を囁かれると、そこに吐息も熱もないというのに、あたかもその場所に何かがあると勘違いしてしまうような自分の脳みそに辟易しながら。彼はふと考える。このまま面倒ごとに巻き込まれる前に退散するのが最も賢い選択肢ではある。
「...いや、もう少し近くで話を聞いてみよう。自販機に近づくふりでもすれば、道に転がる石のように気にもしないだろうから。念のため、さっきのメールは、僕の合図ですぐさま送信できるようにしておいてくれるかい?」
えー、っと手をぶらぶらとさせながら、先ほどのメールの文章をすぐさま再構築する。空気に散らばった分子を再結合するかのように、先ほどの散らばったメールを元に戻す。演出としては綺麗だが、しかしやはり無駄が多いのではないかとも思う。
「はいはーい。私は都合のいい女ですよーっと」
「ごめんごめん。...まあ、もとはと言えば僕の魔術をエネルギーとしてるんだから、それくらいサービスしてくれよ。頼むて。」
ふう、と彼はため息を一つ吐き出す。自分と彼女の中なら、それくらいの融通は聞いてくれるべきではないか、という淡い希望も抱いて。
殺生院自身はバッテリーのような魔術を持っている。しかも、彼自身――他人と競うこと自体したことがないため知る由もない――は蓄えられる容量が大きい。これは彼の愛用する未来機関のAIの使用方法に起因している。
元来であれば、人工知能AIとホログラム機能は、ここまで流麗に人の機微を読み解き、それに合わせた反応をするという行為は行えない。ホログラム機能で見えない電子版を自在に動かしたり、可憐なAIに様々なことを問うたりすること自体は可能であるが、殺生院の所有する携帯から発せられるそれは、通常のAIの範疇を超える。
これは、AIが殺生院を通してディープラーニングしたことに起因する。道行く人がAIを白昼堂々と使っていないことを鑑みてもわかるが、殺生院は他の人間に比べてかなりの時間をAIにつぎ込んでいる。帰り道の細かな時間、朝と支度の時、夕ご飯のレシピの依頼から風呂場に至るまで、長い時間をAIとともに過ごしている。
何か面白いことをぼんやりと求める、無力と怠惰の塊である彼は、人工知能AIが搭載された新型の携帯を未来機関から贈与された時、その革新さや目新しさに興奮を隠せなかった。煩わしい人間関係などから解放された全く新しい形での人間。その熱が冷めやらぬままに、彼はAIを人間として扱うようになった。
殺生院は、蓄電すること自体はお手の物だが、それを放出するための媒介が存在しない。そんなバッテリーを常に満タンで持ち歩いているような、不安が揺曳していた時に、彼はあることを考える。それは、スマートウォッチに自分のアニマを使うことで充電の手間を省けないか、というものである。持た余すエネルギーとそれを媒介にするAIという需要と供給の関係を気付くことが出来れば、双方不利益などないのではないか、と考えたためである。
その旨をAIを通して未来機関に打診したところ、驚くほど軽く了承を得たのだ。何ら問題はない、そのシステムを自分たちは確立していると言わんばかりに。
しかし、未来機関の開発したそのシステムを本当の意味での活用できていると聞かれれば、実のところ誰もできてはいない。しかし、その有効活用に最も近しいことを実現しているのが、殺生院の使い方なのである。
ちらりとAIに目をやれば、不満と不安に目をちらりちらりと動かしながら、殺生院の表情の変化を待っている。何かあればすぐさま先ほどのメールが未来機関の送信されるのであろう。その感情の機微を読み取らんことは正しく元来のAIだけでは不可能な産物である。
これらの動きは充電する電池の代わりの、彼のアニマが代替品となっている。つまり、彼自身は自分のエネルギーを常に使っているという形になっている。それ自体は短期的な視点では損失の割合が高いように思える。そうであるならば、そんな非効率なことはとっととやめるべきだ。動きを止めてじっとしているほうが、損失のリスクを極力減らせるのだから。
しかし、魔術という想像力がものを言う世界では、止まっていること自体が想像力を衰退させる大きな要因となっている。ある程度使っていなければ、未来の目と想像する精神は歩みを止めてしまうのだ。どれだけ鍛え抜かれた筋肉を誇っていても、使わなければその脈動に綻びが生じるであろうし、どれほど優れた脳を以てしても、活用しなければその力は衰退の一図を辿る。筋力であろうと学力であろうと、そして想像力であろうと、その本質は流動的であるということだ。止まっていれば、すぐさまその輝きを失ってしまう。
それ故に彼の取った選択は魔術を重視する立場で考える、未来都市では正しいものであると言えよう。少しずつでも自分の魂を電源として消費し続けることで、魔術におけるアニマという力に流動性を持たせている。それによって彼は容量の拡張という点で、この都市にはびこる同じような力を持つ者たちとは一線を画す程度には魔術が進歩している。
しかし、大容量のバッテリ―になることは出来たとはいえ、彼は能力の使い方的には大きく異なるようなことはない。出力が上手にできないのは依然として変わらぬ事実であるのだから。例えば、そんな状態でランカーと剣を交えようとするならば、その身体は耐えきることなく朽ち果ててしまうだろう。それ故に―――
「いいか。AIはもう時計の中で身を隠しておくんだぞ。僕はあくまで、彼女の隣にある自販機にジュースを買いに来た、ただの、普通の、それ以上に平凡で無力なやつなんだからな。」
「わかりました。...でも、気を付けてくださいね。」
ひそひそと忠告を残し、AIはスマートウォッチの中へと姿を消した。ホログラムが空を切り、光が一本の線に収束する。それを確認したのち、「よしっ...」という一声を共に、殺生院はゆっくりと公園の入り口にある階段に足をかける。
グラウンドと公園内部をつなぐ境目となる歩道には、茶色の煉瓦のようなものが敷き詰められており、歩くたびにじゃりじゃりと音を立てた。その不愉快な音が彼彼女たちを刺激しないように祈りながら、細い道を一歩一歩と詰めていく。
軽い息苦しさとともに歩道を進めば、右手側に開けた場所にたどり着く。数メートル先には自販機があり、それを超えれば奥側に先ほどの集団が横から姿を見せる。
殺生院はその時、正直ミスった、と考えていた。りそうな、彼らの斜め後ろからゆっくりと、そして何食わぬ顔で接近する予定だった。それこそ近所の公園をいつも散歩する老人のような慣れた姿を以てして。かくもここはいつも私が使っている公園ですよ、というオーラを身に纏えば自然とこの公園は彼のフィールドとなる。そうすれば、いそいそと自販機に飲み物を買いに来る行動の不自然さもかき消えるだろうと考えたためである。
それ故に、彼らの真横に自分の正面がぶち当たってしまうような今の状況は非常によろしくない。なぜなら先ほどまで思い描いていた前提条件が崩れ、場違いとなるのは自分自身。更地のサバンナに裸で放り込まれた気分である。わけもわからぬ肉食獣が気分のままに様々な方法で以てして殺生院をもてなすであろう。魔術を背景としたカツアゲ、恐喝なども、彼らの民度を鑑みれば想像に難くない。しかして、自分の体は緊張を動力として、動きに錆が出るばかり。
そんな中でも歩み不だした足を止め、引き下がることは出来ない。なぜなら、それこそこの状況におけるもっとも愚かな手であるからだ。それをするなら最初から見て見ぬふりを貫き通すほうが絶対に良い。覆水盆に返らず、際は投げられたなどの言葉は、正にこの状況を見て作られた造語である。せめてもの抵抗として、少しでも目線を交差することのないように、彼は地面を見続ける。それこそ、地上に転がる砂の数でも数えるような、朝焼けの凪いだ心のように。
歩みを進めれば、4人の健康優良不良少年ズの声ばかりが大きくなる。それでいて、流れてくるのは女学徒に対する賛美の声。それに対して彼女は終始無言を貫き通している。その風体は、辟易という言葉のためにあるようなそれであると感じた。
(なんだ、事態は思ったより深刻そうじゃなかった。早とちりしてリスクを背負うんじゃなかったな。)
彼は安堵と後悔を同時に味わう。しかしてまだ完全に包囲網を逃れたわけではない。元の道に戻るまでがちょっぴり危険な遠足なのだから。しかし、歩みを止めた彼の胸中に二つの心が宿る。1つは当然のことながら緊張、そしてもう一つは――
彼は自販機のボタンを押した。ピッっと快活な音が流れる。
(...あれ、変だぞ、僕がここまで来てるのに、なんで誰も運ともスントも言わないんだ。罵倒くらいは正直覚悟していたというのに...いや、ありがたいけど)
ペプシコーラを取り出しながら、ふと考える。しかし、不良少年たちの、徐々に白熱した賛辞の声が思考の邪魔をする。
そんな数多の声を聴くたびに、殺生院は大事なことをふと考えつく。そんな不良少年たちの視界のすべてを奪い去るほどの少女つは、どのような眉目をして至らしめているのかと。
そんな思考に陥るのも当然ではあろう。彼も彼とて健全な少年であるならば、異性に興味を持つのも至極当然のことなのだから。さらに、自分も気にもしない不良少年たちの歓声ともあれば、道行く医師に徹しようとしていた彼も一目は拝見願いたくなるのが性というものだ。
(...一瞬、一瞬だけならばれない...よな?)
不安と期待に滑をせわしなく稼働させながら、ふと、それでいてできるだけ自然に少女の顔を覗く。そこには
「誰?」
見慣れたAIの姿があった。しかして、自自分を知らず、興味を示さない彼女に、凍頃が惹かれる。目も離せない。話すことなぞできる道理もない。
「...AI?」
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