カレカノトライアル

@Rurikawa0316

カレカノトライアル

推し活第一の生涯を送ってきました。

小学5年生の時だった。

推しのテレビで、歌い踊る姿を見て、一目惚れだったと思う。

近所のショッピングセンターでのミニライブを行うと番組で宣伝していて、母に連れていってもらった。


初めて生でみた推しは、本当に実在したんだったと思った。生歌はテレビより上手に聞こえた。

ライブ後には、今度ライブをやります。今日の倍歌います、遊びに来てください〜と。


それを聞いて私は母にライブに連れて行ってとお願いした。まだ小学生なんだし、もう少し大人になってからいけばと母に言われた。

私はめげずに、母にお願いを何度もし、母は私に難題を出した。小学校の学期末に行われる算数のテストで90点台とれたら、連れて行ってあげると。そのテストはいつものカラーテストよりも難易度が高い。しかも中学受験を志す子が取る点数だ。私は元々成績は並レベルだったけど、それから頑張って勉強した結果90点台を取った。

母は、こういうご褒美は今回だけと言い、ライブに連れて行ってくれた。

ライブはミニライブの比ではないくらい、長い時間聴けて、推しを輝かす衣装、スポットライト、笑顔、またあの景色が見たいと幼心に思ったけ。

今は義務教育中だから、バイトはできない。でも、高校生になればできる。推しに貢げるオタクになりたいと。

現実問題、校則が緩くて、進学先が開けそうな高校を中1時点で探し志望校を定めた。将来推し活が有利に進められるように高校、大学を選び頑張ってきた。

就職すると、ノンストップで、推し活のため、給料を増やすため、昇進を重ねて行った結果、どんどん責任が重くなり、その結果、心身調子を崩し、ただいま、休職している。

ここ最近は、仕事優先にしなきゃいけないこともあり、推し活する余裕は一切なかった、まさに本末転倒だ。

休職している今、推しグッズを収納しているボックス型の収納ボックスを久しぶりに開いてみることにした。アクスタ、プロマイド、インタビューが掲載されている雑誌。タイムカプセルを開けたようにたくさんの思い出の品がでてくる。

すると、一つしろいイルカのぬいぐるみが出てきた。胸の中に収まって抱きしめられるサイズのぬいぐるみで、目はつぶらな瞳で愛くるしい。

どこか、水族館で買ったものだろうか?

なんで、推しグッズボックスにと、記憶を辿ると、元彼のことを思い出した。


大学時代私は、学生会に入った。入った理由は、

高尚な理由はなく、バイトに没頭して、就活にアピールすることがなくあまり待遇が良くない会社に入ると推し活第一主義の私の計画は崩れる。学生会は様々な学部の人が集まるし、テストや授業の情報を手に入れたり、インターンや就活のパイプがあると聞いたから入会を決意。

そこで、私は、元彼に出会った。

彼は清潔感がある黒髪短髪、細身のスポーツマン感のある爽やかな容姿。

初めて見た時、この人モテるんだろうな〜と思った。行動にも優しさを感じる。男女構わず重たい荷物を持ってたら、軽々しく持ち上げて助けてくれたり、テスト前に、ノートとれなかった講義がある人のために、グループラインに載せてくれたり。

大学1年生学生会の前期最後の集まりの帰りだっけ。

「好きです!付き合ってください」

あまり絡みがないのに彼に告白をされた。しかし、全て推し活中心の私は、男女交際に一切興味が持てず、振ってしまった。それでも、彼はめげずにアタックしてきた。そんな彼の姿が昔推しのライブに連れて行って欲しいと懇願した自分に重なったのか、結局彼に折れてしまい3ヶ月だけ付きあうことになった。私が3ヶ月後付き合う気にならなかったら、関係解消、解消しても、友達として仲良くする。学生会もやめないという条件付きで。


付き合った当初、彼をゲームセンターにつれていった。ゲームセンターで、ufoキャッチャーが得意な彼に推しのpvに使われていたぬいぐるみをとって欲しかったからだ。ぬいぐるみを見ると彼は、

「これって確か、推しのPVに出てたぬいぐるみだよね?」

私が欲しい理由をぴたりと彼は当てた。なんで?と聞くと。

「覚えてない?前特典回目当てに沢山CD買ったから布教用に1枚CDくれたの」

そうか、それが確か彼との初めての会話だったけ。

「初対面なのにさ、目をキラキラ輝かせて、話していてその...可愛いなと思って」

照れている顔に初めて推し以外のときめきを感じた。その後、彼は赤面になりながらufoキャッチャーのマシーンに小銭をいれ、数回のプレイで華麗にイルカのぬいぐるみをとってくれた。

今まで推しトークしてもうるさいとかオタクと鼻で笑われたのに、可愛いなんて初めて言われた。

結局こんないい人と推し活至上主義の自分が一緒にいても可哀想と思い、トライアル期間で解消した。あれから時は流れた。彼は、元気だろうか。

もっと貴方にゾッコンな人と一緒になれてたらと、幸せをただ祈るのであった。

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