第1話 正しいって楽しい?
通知表で見慣れた文章。
「正義感があり、友達に対してもよくないと思ったことは伝えて正していた」
「自らの役割に責任感を持ち、クラスメイトからの信頼を集めていた」
小学生の頃は、それを見た親が優しく褒めてくれるのが嬉しかった。
スーツを着ることに慣れてしまった今なら、あれらの文面は教師に伝わる定型文の一部だったのだろうと分かる。漢字ノートの隅に押される「よくできました」「がんばったね」と同じ。わたしに合わせて選ばれた採点ハンコ。
何年経っても、担任や学校が変わっても、わたしの所見・通信欄には"正義感"と"責任感"がシミのように付いたままだった。
今でも、きっと。
平日の駅のホームは混む。都市部へ向かう3番線列車ともなれば余計に。
手にしたスマートフォンに頭を掴まれているかのように首を曲げて歩く高校生を避けて、エレベーター横の乗り場へ並ぶ。
時間は7時25分。大抵この場所はいつもわたしが先頭に並べるのだけれど、今日は先客がいた。見慣れない茶色のミディアムヘア。後ろ姿しか見えないが、髪の艶と服装からいって中年の女性。ホームドア手前の点字ブロックから少し離れたところに立っている。その空間はあと2人が並べるくらい。
子供の頃にやったことのあるパズルゲームが脳内を掠めたがとりあえずその女性の後ろに並び、トートバッグから手帳を取り出した。バーチカルタイプのそれを開いて、今日の予定を確認。昨夜の就寝前に見たときと変わらず、午後に小さな会議がひとつあるのみ。しかしその下のスペースには、やるべき仕事がいくつか書いてある。
昨日手を付けられなかったお客様アンケートの集計も含めて、一日の流れを頭の中で組み立てていると、手帳の上、視界の端に影が増えた。顔を上げると、前に茶色のミディアムヘアの女性。そしてさらに前。点字ブロックと女性の間、先ほどまで誰もいなかった場所に黒いニット帽を被った男の子が立っている。
多分大学生。ちらりと見える耳をイヤホンと銀のピアスが飾り、やたらと項をさらけ出してやはりスマホを食い入るように見つめる。ビニール袋が擦れるような小さな音は、おそらく彼が脳内に流し込んでいる音楽が漏れているのだろう。この子はときどき見かけるけれど、いつもは後ろの方にいる。
わたしの前の女性は何も感じていないようで、その後来た電車には男の子に続いて乗った。一瞬迷うけれど順番は大切。のんびりとした彼女とその背中に従うわたしの横を、後ろから何人かがすり抜けていく。最初のひとりはご丁寧に苛立ちのため息を吐いて。2人目のトレンチコートの男性はわたしがいつも座っている席に腰を下ろしたので、その前のつり革を持って立った。会社の最寄り駅まで25分。おそらくそれまで座ることはできない。
喉の奥で糸が引っかかっているような気がする。
アンケートについてまとめた資料を主任に渡し、片付いたデスクで手帳に線を引く。終わった仕事はこうして消しておかないと、いつまでも視界をうろついて補足と反省を促し、他が進められなくなるのだ。
ひとつ息を吐いてハンカチを持ち、席を立とうとしたところで「
やっぱり。営業の
現在わたしは総務関係の事務を担っているが、去年までは経理が主だった。そこでこの「要領がいい」山森さんの無茶ぶりや不備だらけの経費の処理を行うことが多かったのだ。
どんなに頭を下げられようと、おだてられようと、経費は平社員のわたしが決められるようなものではない。駄目なものは駄目なのだ。「これも大事な付き合いで」だの「これくらい適当にやっといて。ね、お願い」だの言われても断るしかないわたしに、山森さんは明らかに面倒くさそうな視線を寄越すことが増えていった。担当が変わってからはそんな関わりもなくなって、正直ほっとしていたのだけれど。
良くも悪くも根に持たなそうな山森さんは、なんの感情も籠もっていない顔で私に手を伸ばしてくる。持っていたのは林檎のカード立て。
「ほい、明日の当番ね」
「ああ、ありがとうございます」
小さいわりに重たい林檎が、閉じたノートパソコンの上に置かれる。受け取ろうとして出した手も合わせてスライドしてしまい、なんとなく気まずくなる。そんな私に最後まで目も合わせなかった山森さんは、用が済んだら仲の良い同僚に大きな声で絡みに行った。今日の朝礼での彼のスピーチは、ほとんど例文サイトの丸暗記だった。どうして知っているかというと、わたしもそのサイトを見たことがあるから。
この会社では、ちょっとした当番がある。その日の当番は、朝礼時に3分程度のスピーチを行う。テーマはなんでもいい。スポーツや趣味、近くの美味しい飲食店から偉人の名言まで、自由に話すことができる。暗黙のルールとして政治と宗教、暗い話以外なら、なんでも。
スピーチのほかにもうひとつ、ゴミ出しも含まれている。当番を分けていたこともあったらしいが、個々はそこまで手間でもないためまとめられたようだ。これは大抵退勤20分前に行われる。
わたしは立ったまま手帳を開き、明日の予定を見た。「朝スピーチ!」の文字。ご丁寧にピンクのマーカーで囲まれ、嫌でも目に付くようになっている。ついでに今日の予定の1番下にも「明日スピーチ!」の文字。
一応内容は決まっている。旬についてだ。秋刀魚にさつまいも、それからこの当番の目印であるカード立ての林檎。秋になると特に旬を意識してしまうのはわたしだけだろうか。とりあえず食べ物の話で始めて、そこから少し変わるが"旬"という言葉そのものの意味について話してみようと思う。これは高校生の頃、国語の先生が授業の隙間の雑談として話していた。
大丈夫だとは思うが、今日は寝る前にもう一度練習して時間を調整しておくことにする。長すぎず、短すぎず、3分から誤差15秒程度で終われるように。
日が傾くのも随分早くなった。ブラインドをすり抜けた夕日がストッキング越しに足にかかるのを感じながら、請求書の整理に取り掛かるためにマウスを動かして所定のファイルを開く。午後の電話対応が少なかったせいか、今日やるべき仕事はすべて終わった。
去年まで経理中心だったわたしにとって、ここからは慣れたものだ。手順が決まっている数字の世界は素晴らしい。山森さんのような厄介な人に邪魔をされることを除けば、わたしは経理の仕事が案外気に入っていた。これを終わらせて、ついでに最近散らかってきた引き出しの書類整理でもすれば17時半、退勤時間になるだろう。そう考えていると、パソコンの横に置いた請求書の束に見覚えのある資料が重ねられた。
顔を向けると、主任が立っている。午前に提出した資料に不備でもあったのだろうか。「どうされました」と言いながら立ち上がろうとするわたしを手で制し、主任は口を開いた。
「さっきの資料ありがとな。そんでさ、ちょおっと頼みがあるんだけど」
来た。その一言が素早く頭の中を駆ける。この感じは馴染みがある。何かひとつの仕事をこの人に提出すると、なぜかもうひとつ仕事が増えるのだ。それは最初の仕事に関連した内容だったり、はたまた全く違うもの、なんなら別の部署のものだったりで、どこかで切れ目を見つけないと抜け出せなくなる。以前断れない新人がそれで専属の駒のように扱われていた時期があった。
「明日な、上の方で、外部の企業も含めた会議があんだよ。そんでさ、住田さんがさっき集計してくれたアンケートのな、ほらこの製品。今回これを合同で開発したところの企業な。住田さん早めに集計終わらせてくれたからさ、ついでにこれも出しちゃおうと思って」
なんとなく先が読めてきたけれど、とりあえず「はあ」や「はい」といった相槌を差し込んでおく。
「ほんとに簡単なやつでいいからさ、会議用にまとめといてほしいんだよね。ほんともう箇条書きくらいで、ぱぱっとやっちゃっていいから」
やっぱり。
「箇条書き……。色々なご意見がありますし、賛否や購入の年齢層等のグラフとかもあった方がむしろ作りやすいような気が」
「あーまあそうだな。そのへんは住田さんに任せるわ」
「明日の会議に使うなら、今日中、ですよね」とさりげなく時計を見ながら言うと、気付いていないのか、それとも気付きながら何も思っていないのか、主任がはじめから変わらない笑顔で言う。
「そうだな、頼んだ。俺8時までならいるから、焦らなくて大丈夫」
「……分かりました」
「ああ、そうだ」
自分のデスクに戻りかけた主任が話を繋げる。
「明日のー、その企業な、社長とちょおっと知り合いの人が経営しててさ」
「はあ」
「この集計の意見のとこ、なるべくいいやつだけ抽出しといてくんない?」
「はい?」
一瞬、言っている意味が分からなくなる。
「それはつまり、改善点を隠すってことですか?」
「や、そういうんじゃないんだけどさ! ほらこの、えーっと、5個目のとこ。例えばこれな。デザインを根本から変えるような意見があったけど、今回の製品な、さっきも言ったけどむこうとの合同だから。しかもデザイン最終的に決めたのボス達だからさ。あのー、な、恥かいちゃうじゃん。な」
「でもこのご意見は、使用するお客様の範囲も広げられるいいものだと思うんですが」
「分かる、そうだよな。でもなにも明日以降この集計使わないわけじゃないからさ。デザイン班には俺から個人的に伝えとくし」
主任の顔はずっと変わらず、笑顔だ。声もできるだけ優しくしようとしているのが分かる。そのせいで、わたしはまるで自分が駄々を捏ねた子供のように思えてしまう。しかし穏やかになだめている主任の目に、声と同時に漏れる吐息に、だんだんと覚えのある色が混じってきたのを感じた。
その時点でほとんど反射的に、諦念のまま返答をする。
「……はい。分かりました」
「ありがとう。いやー助かるよ、住田さん」
じゃ、よろしくと去っていく主任ははじめからずっと煙草のにおいが染みついていて、今からもおそらく吸いに行くのだろう。「喫煙所」と一部の人間が呼んでいるその場所は、一度会社から出て表通りから見えない建物の影に入った一角にあるらしく、この6階のオフィスからそこに行くまでには少し時間がかかる。数えたことはないけれど、主任を含めて何人かの社員は1日にかなりの回数通い詰めている。
わたしだってトイレに立つことも、自動販売機に行くこともある。デスクにいても、伸びのひとつもせずに仕事を完遂するなんてことはありえない。だから休憩くらいは自由だとは分かっている。
でも思ってしまう。もしも仕事から離れた時間を目に見えるデータにしたのなら、あの人達の累計休憩時間は規則に反しているのではないかと。
そう思っても、実際に仕事は問題なく回っていて、主任はわたしよりもずっと評価される手腕があるから主任なのだ。他の人達に関しても同じ。マニュアル通りの行動だけをする融通のきかない私よりも、きっとずっと要領がいい。時間を守っていればいいという時代ではないのだ。
そんなことよりも、わたしは今日の仕事をできるだけ早く終わらせることに集中しなければ。仕方なく請求書の束を引き出しに戻す。今主任に指示されたばかりの仕事をするために。
今朝は、電車に乗ってすぐにいつもの席に座ることができた。結局昨日は会議の資料をまとめるのに時間がかかり、普段なら夕食が終わってひと息ついている時間に帰宅した。
簡単にとは言われたものの、任された以上半端な出来にはしたくない。そう思い見やすさや正確性を考慮してなんとか作成した資料を主任に確認してもらうと、細かな修正を指示されて3回ほど往復する羽目になったのだった。はじめの指示はどこへやら、そんなにしっかりしたものであれば、会議が分かったタイミングで言うべきではないのか。
ためになると思った意見のいくつかは眠ったまま。忖度の会議に意味なんてあるのだろうか。
資料に載せられなかった声が、わたしの胸で囁いている。それはわたし自身の声と混ざって、糸のように
糸玉が少しずつ大きくなっていくのを、見ないふりをしている。
わたしは小さなメモに焦点を合わせた。今日の朝礼のスピーチで話す内容を箇条書きでまとめてある。昨夜寝る前にざっと確認したから大丈夫だとは思うが、念のため。
しかし結局それが役に立つことはなかった。
例の知り合いの企業の合同会議に伴って何か思い出したのか、社長自ら学生時代やら新人としての下積み時代とやらの経験を急遽熱く語ってくれたのだった。それによって私のスピーチの時間はなし。明日は明日の当番が話す。
別に前に出て話したいほどのことではなかったけれど、それなら昨日メモなんか見返さないでとっととベッドに入ればよかった。
力が抜けたせいで余計に瞼が重くなる。
そんな状態だったが、なんとか1日の仕事をやり過ごせたと思う。珍しく午後に外部へ出かける用があったことも、むしろいい気分転換になった。
退勤時間が近いので本当はこのまま直帰したい。しかし今日は当番としてゴミ出しがまだ残っているため、わたしは星がひとつ見える夕焼け空の下を会社に向かって歩いていた。
今日の会議は滞りなく進行できたのだろうか。きっとできたのだろうな。わたしが作った"滞り"ない資料が貢献していると思うほどお気楽ではないけれど。
全部ただのパフォーマンス。意味のない会議にアンケートに作業。
スーツを着崩した若い男性達が横並びに、前からはしゃぎながら歩いてくる。大して狭くもない歩道の幅をいっぱい使って。わたしは軽く睨みながら端へ寄ったが、それに気付くこともなく、むしろ端の男性は話が盛り上がったタイミングで手を振り回して、わたしの肩にぶつけながらすれ違っていく。「あ、すません」と信じられないくらい小さな声を目も合わせずに漏らした後、また仲間に冗談を言っていた。
全員いい靴をお履きのようで。それだけのお給金があるのだ。
せめて聞こえないように漏らした舌打ちは、男性の形だけの謝罪よりも小さくて、胸に溜まった糸玉がまた大きくなった気がした。
「ああー、昨日?そういえば俺か!忘れてた、すいませーん」
へらへら、へらへら。そういうBGMでも流しているのではないかと思うほど、山森さんからはまったく誠意が感じられない。
退勤時間を少し過ぎてわざわざ会社の給湯室に戻ったわたしが見たのは、ゴミ箱からあふれるぎりぎりまで積み重ねられたゴミの山だった。ティッシュ、コンビニ弁当の容器、カラメルがこびりついたプリンのカップ。どれもこれもがそういうゲームのようにゴミとゴミの隙間に差し込まれてバランスを保ち、その上にゴミ箱の蓋が載っている。
今週はまだ給湯室を使っていないから、こんなことになっているとは思わなかった。唖然としていたところにちょうど山森さんが入ってきたから、つい声をかけてしまったのだった。
わたしは何も返答していないのに、言い訳のように山森さんが続ける。
「や、違うんだよ。昨日の朝までは覚えてたんだよ。でも俺外回りが多いからさ、昨日だって仕事終わって帰ったの8時過ぎだし」
「そうですか」
するとわたしの相槌が気に入らなかったのか、山森さんはへらへら顔から一転、いかにも不満ですと言いたげに表情を曇らせる。
どうせこの人は碌なことを言わないと分かっていたからか。それともわたしも寝不足で苛々としていたのか。いつもならこのまま黙ってやり過ごすのに、口を開いてしまった。
「わたしは今日このために戻ってきましたけどね」
本当はそこまで山森さんに怒っているはずではなかった。
遅い時間にわざわざゴミを捨てに戻って来なくてもいい。代わりの人を見つけるか、今回のように明日の当番に任せればいい。それにこのゴミの量、山森さんだけじゃなくきっと一昨日の当番も捨てていないのだろう。もしかしたら、そのまた前も。
だからこうして大して仲良くもない女に嫌味を言われる山森さんは不憫だ。
山森さんもそう思ったのか、棒読みの謝罪を述べた後出ていきながら、こう漏らしていた。
「正義中毒お疲れ様でーす、と」
新しい袋を出して、ゴミ箱からはみ出たゴミを掴んで入れる。分別していないペットボトルのジュースが付着したのか、べたついていた。甘ったるい匂いが目立つので、ペットボトルは濯いだ。
使ったゴミ袋は2枚。どちらもパンパン。
山森さんだけが悪いわけじゃない。でもわたしなら多分、当日が駄目なら次の日の朝に様子を見に行って、半分以上ゴミがあれば捨てる。そもそもわたしなら、給湯室にあんな光景があれば、当番じゃなくても捨てる。少なくとも持ち帰りが推奨されている弁当のプラスチック容器や、べたべたのデザートのカップをクリスマスツリーのオーナメントみたいに飾りつけない。もちろんペットボトルは分別する。
でもそうでない人達がいて、その人達は、異常者ではないのだ。まともそうな顔で、まともな役職について、まともな評価を受けて、まともに笑っているのだ。身近にいる、そういう人達。この会社にもいる、たくさんの人達。
胸の中の黒い糸玉は、もう大きくならなかった。代わりに解けて、出てきて、わたしの体に絡まっていく。胸の奥が、手足が、頬が、ぞわぞわとして気持ち悪い。
異常者は、わたしだ。
弱い者いじめをしてはいけない。
ポイ捨てをしてはいけない。
時間は守らなければいけない。
嘘をついてはいけない。
世の中には色々なルールがあって、そのルールを守ることが正しさであると教わった。ルールは皆のためにあるもの。だからそれは守るべきであると。
間違ったことをしているクラスメイトに注意をする小学生のわたしに、先生達は「いい子だね」と言ってくれた。「正しいことはどんどん伝えていこう」と。
ごみ拾いボランティアをさぼる男子、聞こえるように誰かの悪口を言う女子、嫌なことを目立たない子に押しつける皆。わたしは教えられたルールに基づいて口を出した。
"正義"という言葉を投げる人達が笑っていないことに気付いたのは、15歳を過ぎた頃だった。
いわく、「正義や正論がすべてではない」らしい。「面倒な奴」というわたしへの評価は、言葉にしなくても皆の視線に、声色に滲み出ていた。
ルールは皆を守るもの。でもルールを守るわたしの心を、誰も守ってはくれなかった。
それからはできるだけ口を出さず、"正論"を主張せずに生きてきた。もう「正義感が強い」なんて言われないように。けれど染みついた考えと行動は消えてくれなくて、近道をする皆の背中を横目に、わたしは正規ルートで遅れている。
ゴミの匂いを落とすために洗った両手が冷たい。夜風がさらに温度を奪っていく。
居酒屋の暖簾をくぐる仕事終わりのサラリーマン達は、もう酔っているみたいに楽しそうだった。そのうちのひとりが道に捨てた煙草を見ないふりをして、わたしは歩いていく。
居酒屋から自動販売機に視線を移せば、ゴミ箱の上に並べられた空き缶。
横断歩道を見れば、歩行者用信号が赤になってから小走りで入って半分以上はゆっくりと歩いている人。
下を向けば、吐き捨てられたガムに痰。
わたし、なにやってるんだろう。
それ以上見たくなくて、商店街の店と店の間に体を滑らせた。人が4人程度並べる幅の空間は、すぐに行き止まりになっている。オフホワイトの壁に、木の扉がひとつ。窓はない。
両隣の店より数歩分奥まったところにあるため、正面から見ればきちんと分かるのだけれど、道に沿って歩いていればほとんど気付かない。たまに首を動かして見る人がいても、面白そうなものがないと分かればすぐに興味を他に移していく。
ここなら何も目に入れなくて済む。
ようやく落ち着いた気がして、わたしは隣の雑貨屋の壁に背中を預けて息を吐いた。今日はあと家に帰るだけ。行くところもないし、特にしたいこともない。でもなんだか力が出ない。
手持ち無沙汰に横を向き、行き止まりの壁を見る。すると、扉のほかに黒い円とシミのようなものがあることに気付いた。
一瞬落書きかと身構えたが、シミのようなものは近付いてみると絵と文字だった。扉の横、目線よりかなり下に、ティーカップのシルエットと四角いもの。大きさからして角砂糖だろうか。傍らには「No Bitter!」という言葉が添えられている。チョコレートのように滑らかな筆記体だ。
そしてそれらの下、しゃがんでも少し目線を下げなければならないほどの位置に、人間の頭部くらいの大きさの円がある。もしかして看板だろうか。おそらく点灯するタイプだと思うのだけれど、これは真っ暗で何も情報がない。
店……なのだろうか。情報が極端に少ない。この絵が関係していると考えればカフェか紅茶専門店あたりか。
もしかしたら誰かのアトリエか、最悪怪しい人の溜まり場かもしれない。法律すれすれの薬とか売っている感じの。どちらにせよこんな外観では人が入らないだろうに。
そんなふうにぼうっと看板らしき黒い円を見つめていると、突然そこに光が灯った。さっきまで黒一色だったそこに、「dam」という文字が浮かび上がる。前後のdとmはミルク、真ん中のaは抹茶のような緑。
「だむ……?」
ぽつりと呟いたとき、扉の向こうに人の気配がした。
わたしが慌てて立とうとしたときにはすでに扉が開いており、顔を覗かせるひとりの男性と目が合った。
男性の方も驚いたのか目をぱちくりとさせていたが、すぐににぱっと笑った。
「やあ、お客様だ!いらっしゃい」
階段を下りていく。天井から等間隔にぶら下がる電球と、両側の壁の明かりのおかげで足元は見えるものの、先ほどまでの喧騒とは打って変わって薄暗い。そして静かだ。聞こえるのは階段を踏みしめる2つの足音と、目の前を歩く男性の話し声だけ。
「いやあ実は、お店開けるの久しぶりで看板点くか心配だったんだ。だから確認しにいったんだけど……。よかったよかった。記念すべき……えー、164人目くらいのお客様」
無視するわけにもいかないのでわたしはとりあえず「あはは」と分かりやすい愛想笑いだけを零している。それでも返事があってもなくてもいいかのように、男性は楽しそうだ。白いシャツと黒いズボン、それにチャコールのエプロンといったシンプルな服装の背中を追いかける。
先ほど初めてこの人に会ったとき、わたしはすぐに帰ろうとした。しかしこの人は「運がいいね。今日はとっておきのお菓子があるんだ」と扉を大きく開けたまま戻っていってしまったため、無視することができなかった。
まだひとりで話し続ける男性の声に耳を傾けつつ、壁に目をやる。そこには何枚もの写真が貼られていた。クリームがたっぷりかかったケーキ、大草原で草を食む羊、透き通るような夜空に浮かぶオーロラ……。どれもどこか空気が違くて、日本ではないことがなんとなく分かった。
額縁もお洒落なピンもない、規則性もなしに無造作に貼られたそれらの写真に、どうしてか目を奪われる。
「さ、転ばないでね」
前を歩く男性が止まって振り向く。それほど時間は経っていないはずなのに、もうずっと長い間階段を下り続けていたような気がする。
甘いような、香ばしいような香り。階段でうっすらと感じていたそれが、途端に体を包み込む。
芝居がかった動作で左手を横に伸ばした男性が言った。
「ようこそ、喫茶『
「うわあやっば、真っ黒だ」
カウンターの向こうの、隣の部屋。調理場があると思われる空間から男性の楽しそうな声が聞こえる。フライパンのようなものをガチャガチャと動かす音も。
あの男性はそもそも、看板の調子を見るために階段を上がって扉を開けたと言っていた。そこで偶然にも立ちすくむわたしと会うことになったわけだが。あろうことか、調理中の火を点けたままここを離れたらしい。つまり下ってくる間感じていた香りは、火事寸前の匂いだったわけだ。
なんにせよ、地下から商店街に火災が広がることにならなくてよかった。あの様子だと、料理が失敗しただけで済んだのだろう。勿体ないけれど、人の命には代えられない。
男性が調理場に引っ込んだために置き去りにされてしまったわたしは、とりあえずカウンター席のひとつに腰を下ろしている。
わたし以外に客はいない。カウンター席はわたしの横にあと3つ。それから2人掛けのテーブル席が2つと、4人掛けがひとつ。狭苦しくはないけれど、これ以上の席は置けないだろう。
カウンターやスツールを含め、置いてあるものは重厚感があり、学生のときのイギリス旅行で訪れたカフェを思い出した。それでいて圧倒されるような雰囲気がないのは、窓のように飾られた湖の絵のおかげだろうか。黄色と橙色に色付く葉と、静かな湖畔は、今の季節にぴったりだ。多分、これも日本じゃない。
この店の規模と、ほかに人の気配がないことから察するに、あの男性がここの店主だろうか。「喫茶」と言っていたからには、ここは喫茶店で間違いなさそうだ。
そんなことを考えていると、男性が調理場から顔を出した。
「やあやあ、お待たせ。お腹空いたから賄い作ってたんだった」
「無事でした?」
「今年で1番苦かった」
「食べたんですね⋯⋯」
ちょっぴりだから、と呑気に笑うと、男性はカウンターに肘をついた。
「で、どうする? とりあえずお菓子とー、あと紅茶でいい? てか今それしかないけど」
え、と思わず声が漏れる。
「あの、メニューみたいなものって」
「ああー……?あるけど、今はいいや」
にっこりと、当然のことのように返されて、言葉が浮かばずに口を噤んだ。
すると、男性は注文が済んだと判断したのか「じゃ、持ってきまあす」と言ってふらりと調理場の方へ戻ってしまう。
のらりくらりとした態度に惑わされるようにしてここまで来てしまったが、少しずつ頭がすっきりしてくると同時に、忘れていた胸の糸玉がまた糸を伸ばしてきた。
割り込みをする人達に、道を広がって歩く人達。いい加減な山森さんや喫煙所に向かう主任。
要領のいい人達。走馬灯のように流れていく光景。
それにさっきから引っ掛かっていた、あの男性。今調理場で鼻歌を歌っているあの人。お客様だからと威張るつもりはないけれど、初対面では敬語を使うべきではないのか。わたしが敬語で向こうがタメ口、ってどういうことだろう。
跳ねた黒髪や健康的な肌、少し鋭くて大きな目。間延びした口調から学生のようにも見えるし、余裕のある笑みは30代の大人のようにも見える。後者の場合はわたしより年上になるが、向こうだってわたしの正確な年齢なんて分からないだろう。
なんだか侮られているような気持ちになってきて、さらに山森さんの姿が重なり、心臓のあたりに絡まった糸がきゅっと締められる。
皆、わたしより楽しそうな顔をしている。
わたしも同じようにすれば、あんな顔で笑えるのだろうか。
最近よく考える問いを口の中で転がす。
わたしだって本当は電車の席には絶対に座りたいし、ゴミ捨てなんてしないで早く帰りたい。
周りの人間は疎ましそうな顔をして、わたしだって窮屈に思うことがあるのに、それでもわたしはこの糸を解けない。
解いてしまったら、きっと。
「いらっしゃいませ。お好きな席へどーぞ」
調理場からの声で顔を上げる。気付かないうちに新しい客が入ってきていた。
主任と同じくらいの年齢だろうか。スーツを着た男性は重たい靴音を響かせ、わたしから2つ席を空けてカウンター前に座った。
あの人が調理場から出てくる。わたしには見せなかったメニューらしきものを片手に持って。
「こんにちは、こちら――」
「ブレンド」
客は鞄から資料を取り出しながら言った。目を合わせるどころか、顔を上げもしない。
挨拶を遮られたあの人は「あ」の形に口を開けたまま止まったが、やがて口角を上げた。
「なんのブレンドでしょう? ミルク? 紅茶?」
「は、コーヒーに決まってるでしょ。店員ならちゃんとしてよ」
「すいませんねえ、うちコーヒーは出さないんですよ」
「ああ?」
喫茶店ではおよそ聞かない言葉に、客はようやくじろりとあの人を見る。わたしも笑みを浮かべたその口元に、つい目を向けてしまう。
「ここ喫茶店じゃないの? コーヒーくらいあるでしょ」
「いやあ、香りづけとしてあるにはあるんですけどね、少なくともコーヒー単体はないですねえ。あ、メニュー見ます?」
明らかに不機嫌な客や張り詰めた空気に対し、あの人は少しも動揺していない。それどころかにっこりと心の読めない笑顔を浮かべている。
「なんでもいいから出してよ。こっちは忙しいんだから」
「……かしこまりましたぁ」
客はメニューを受け取らず、小さく舌打ちをしてから資料に目を戻す。あの人はそれを見て目を細めて調理場へ帰っていった。ちらりとわたしを見たような気がしたが、やっぱり何を考えているのかは分からなかった。
「はァいどーぞ、コーヒーでぇす」
注文を受けたあの人がコーヒーを持ってくるまでに、そう時間はかからなかったと思う。待っている間、このカウンター席には頻りに資料をめくる客と、行き場のないわたしだけが残されていた。正直居心地は最悪なので、もう帰ってしまおうかとも思った。
かちゃりと客の前にカップとソーサーを置くあの人は、機嫌よさげに笑っている。
客は手を止めて鼻を鳴らすと、紙面から目を離さずにカップに口をつけた――直後に小さく咽る。
「ぐっ、なんだ、これ」
何か問題があったのだろうか。呻いた客があの人を睨む。
「なあ、俺コーヒーって言ったよね」
「『なんでもいいから出して』と仰いましたので。僭越ながら当店がお出しできる精一杯のコーヒーをご用意させていただきました」
あの人は飄々として返した。
「ふざけてんだろ。これ泥水? まずい、甘すぎる!」
「当たり前でしょ甘くしてんだから」
口元は笑ったまま、あの人が目を大きく開く。突然口調が変わったことで客が一瞬怯み、店内が静かになる。
「『No Bitter!』って扉のとこに書いてあったの、見てないの? うちにブラックコーヒーなんてないんだよ。店主の話聞きもしないで、無理言ってんのはどっちかなあ?」
極めて朗らかに流れていく店主の声とは裏腹に、我に返った客の顔が怒りでじわじわと赤くなっていく。
この地獄のような空気の中でわたしは、この人はやっぱりここの店主だったんだ、なんてあまりにも場違いなことを思っていた。多分現実逃避でもあったのだと思う。
当然そんなわたしに構うこともなく、客は店主に声を荒げる。
「客に対して何様のつもりだ。お前がこれ飲んでみろよ」
「え、嫌だけど。僕さっきココア飲んだし。ていうかさあ」
客って誰のこと。心底疑問に思うように店主が首を傾げて言った。
「まさかあんた? でもまだお金払ってないじゃん。メニューも見ないで扱ってないもの作らせて、文句言ってるだけで」
喫茶店どころか、全業種の従業員としてあるまじき発言がぽんぽんと発せられている。何度か客が言い返したが、どうやっても店主の余裕ありげな態度を崩すことはできなかった。
そのうち客は資料を乱雑に鞄に突っ込むと、代金を支払わずに出ていってしまった。
「二度と来ないからな」という台詞をしっかりと残して。
「はあーい、お好きにー」
荒々しく階段を踏み鳴らし、商店街へ続く扉が大きな音を立てて閉まった頃には、店主は鼻歌とともにあの客が残したカップを片付けていた。ちらりと見えたカップの中身は、なんだかどろりとしていたような気がする。
「よし、お待たせ。お茶にしよう」
手を拭きながら店主がわたしを見る。先ほどのことなどはじめからなかったような態度だ。
あの、とわたしが声を上げたのは、カウンターにティーポットとカップが並び、店主がバターケーキを切ってたっぷりのクリームをかけているときだった。
「うん?」
「あの……」
「うん」
話しかけておきながら、何を言っていいか決めていないことに気付く。この店主のペースに呑まれてしまいそうでとりあえず水を差してみたけれど、言いたいことや聞きたいことが多すぎる。
わたしにもメニューを見せてほしい、コーヒーがないってどういうことか、今出されているお茶とお菓子の代金はいくらか、夕食の時間に甘いものはちょっと……。浮かぶ言葉はどれもしっくりこなくて、わたしの後ろを素通りしていく。
店主が選んで置いたドレンチェリーは、カスタードクリームと生クリームの上で鮮やかに輝いている。いつの間にかケーキはほとんどクリームの下に埋まってしまい、見えなくなっていた。
満足そうに息を吐く姿を見ていると、自然と言葉が出てくる。
「さっきの。よかったんですか」
「さっき?」
「あの男性のお客さん。確かに態度はよくなかったですけど、客にあんな風に言っちゃって」
「ペコペコしてればよかった?」
気分を害したと思い、少し背筋が寒くなった。しかし店主の顔は男性客のときとは違い、子供が分かりやすく口を尖らせて拗ねたように見えた。
「そういうわけじゃなくて。カスタマーハラスメントとかもあるし、店も客も対等であるべきだとは思いますけど」
ここに来てから引っ掛かっていたものを、なんとか取り繕って、綺麗に見せて、言葉にしていく。
「ああいう人は、敬語できちんと説明したり、謝ったりすれば分かってもらえたかもしれないですよね。あんな挑発みたいなことしなくても」
「でもあっちは最初っからタメ口だったよ」
「それはまあ、そういう人もいますし」
目の前の店主を見ながら言った。この人もわたしを下に見てのタメ口なのだろうか。
「喫茶店である以上コーヒーがあって当然って思う人がいることは仕方ないので、やっぱり店として客に形だけでもきちんと謝るべきじゃないかって。『申し訳ありません、当店はドリンクとしてのコーヒーのお取り扱いはしていないんです』みたいに。それかもう特別にコーヒー出しちゃうとか」
店を経営したこともないくせに余計なことを言い過ぎたかもしれないが、この店主のことを指摘したい感情を止められなかった。
跪けとまでは思わないが、仕事である以上は敬意をもって丁寧に客に接するべきだ。もちろん「あんた」なんて言わない。
わたしの同僚にも年上に「ねえねえ」などと甘えた声を出す人がいるが、もちろんわたしは敬語を心掛けていて、その声が聞こえてくる度にまた心の糸が伸びていく。そういう人に限って、周りに好かれていくのだ。ルールやマナーを守っていないのに。
わたしは守っているのに。
もう目的も失ってしまった苛立ちをぶつけているわたしに気付くはずもないのに、「それ、楽しい?」と店主が言ったとき、胸に絡んだ糸が一瞬消えたような気がした。
「べき、べきって。喫茶『dam』ではコーヒーは出さない。他の喫茶店なんて知らないね。僕が決めたんだから、気が変わるまでは出さない。それが嫌な人は来なければいい。僕が何を言うかも、僕が決めるんだよ。したいようにする。したくなければしない」
それがいちばん楽しいよ、と言ってにやりと口角を持ち上げた。
「でも、口コミとかで広がっちゃったりするかも」
「いいんじゃない? 僕見ないし」
「お客さん来なくなっちゃいますよ」
「んー、別にいいけどさ。でも」
ティーポットからカップに紅茶を注いで「君は来たでしょ?」という店主は、やっぱり意図が読めない。でも、すごく自由で、楽しそうだった。
来たというより、連れてこられたのだけれど。まあ、いいか。
「はい、どうぞ。フルーツティーと、あとなんかケーキ」
「なんのケーキですか?」
「インドで下宿先のママさんが出してくれたやつをイメージしてみた。ほぼオリジナル。名前は分かんない」
「インドですか」
そういえば階段を下りてくるとき、壁にたくさんの写真が飾られているのを見た。旅行が趣味なのだろうか。
フォークでそっとドレンチェリーを押すと、半分くらいがクリームに沈む。ママさんもここまではクリームをかけていなかったのではないか。
ひとくち分を切って、クリームが零れないように口に入れる。ある程度覚悟はしていたけれど、想像以上の甘味に体が小さく震えた。バターケーキにもドライフルーツがたっぷりと入っているようで、種類の違う甘味が次々に現れる。たまに感じるナッツが貴重な存在に思えた。美味しい、けど。
「甘い」
「甘くしてるからね」
店主もカウンターの向こうで残りのケーキを頬張っている。「これだなあ」と目尻を下げる様子はまるで酔っているようだった。
カップを傾けるとフルーツティーが口の中の甘味を和らげてくれた。林檎の香りがする。
空になったカップやお皿を下げる店主に問いかける。
「そういえば、どうしてコーヒーを出さないんですか?」
店主は優雅な笑みを浮かべた。
「僕苦いの嫌いだから」
仕事帰りの人が行き交う商店街は、立ち並ぶ飲食店の明かりで幻想的に見えた。まだ現実に帰ってきていないのかもしれない。ずっと現実にいたけれど。
地下にある喫茶店。そこにはコーヒーがなくて、場合によってはメニューもなくて、でも自由な店主がいる。
口に残る林檎の香りと、あの店を出る前に店主に渡した言葉。
「わたしはやっぱり、甘すぎないケーキが好きです」
もちろんおやつどきに食べるケーキが、と付け足したわたしに、店主は「そっか」と微笑んでいた。
パンプスを履いた足を前に出す。右、左、右、左。一歩足を進めるごとに、絡んだ糸が解けていく。久しぶりに息をしたように感じる。
横断歩道の青信号が点滅している。立ち止まったわたしの横を、男性がすり抜けていく。それを見て、わたしはそっと息を吐き、口角を上げた。
わたしは、このわたしが好き。
みんながルールを守らなくても、わたしはルールを守っていく。胸を張って歩くために。
きっと糸は何度でも現れて、わたしの心と体に絡みつくだろう。絞めつけられて痛みを感じることもあるかもしれない。
そうしたら、夜にケーキを食べてみよう。
あまり好みでない、クリームたっぷりの甘い甘いケーキを。
コーヒーのない喫茶店 雨吐流 @rain_99
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