第48話
まさかこれだけブンブンと振り回されてしまった大鎌。それを回避することなど決して容易くなどないというのに。それで色々と何かしらをするためにと、自転車をバタバタと回していくしかならなくて。そうしたところでも結局はどうにか生き延びられるだけの速度はあって。
窓が一気にバリバリと幾つも割られてしまっていることには変わらなくて。それを追究しようとするだけの余裕もなくて。だとしても本当に色々と遠すぎるという感慨があって。
「いや流石に大鎌だけが動き続けているのはおかしいでしょうがよぉ!」
だとしても、それで決着をするまでに、届くはずもない。その限界など進めていけるだけの高速移動などは叶いそうにもない。これだけバタバタと住宅街を動き回っていくしかないなんて、そうやってでも逃げ切れるはずもない。
たった特に強化などされていない常人が出せるだけのちっぽけな速度で走っていくしか逃げる方法などない。だがそれで逃げ切れるわけもないのが一番に厭らしいことであって。それでどうしろと、結局このままに命とか頸とか首とかを刈り取られてしまうことにでもなってしまうのかとか考えてしまっていて。
「どーして忿怒の持ってくる案件はこんなことばかりなのよさぁ!まぁこれだけの域にまで進んでいないのも多いけれども、というかそれが大半だけれども」
(こんなゾンビパニックが何度も起こって堪りますか。それこそこの世界を創造した存在を疑ってしまうって)
住宅街を越えて繫華街にまで出ていこうとしている。そこにはワラワラ湧いてくるゾンビを含む多くの怪人というのがいる。それを確かに目にしてしまえば、その空間を突っ切っていくだけのパワーなどこちらは持ち合わせてもいないので諦める。それで行く方向というのを変えていくしかないということ。
「………………………………」
ここから一気にでも更に加速をしていく。流石に人体に負担はかかってしまうがそれよりも自転車への負担の方が気になってもくる。それでビルの一つでも破壊されてしまえばそれが頭上に落下をしてしまうことになる。
「ンあぁ⁉」
まさか正確に攻撃の意思を込めて障害物となろうものを利用して仕掛けてくるなんて。たった一撃でこれを見せられてしまえば次があるのは当然のこと。自転車を強く漕いでいけばそれが落ちてくるのを躱していく。
そしてその直後に行われてしまうのは、ビル一本を引き抜いていっての杭として落とす攻撃。これには驚愕というのを隠しているだけの余裕なんてない。
「こういうのはッ⁉」
今回のこれを回避するだけの体力も準備も揃っていない中でやられてしまえばどうしても絶望に近いことはする。だがそれで諦めなどするわけもないけれども。
圧死目前の状況に置かれてしまえば人間というのは立ち上がる気力を失ってしまうらしい。それでぐちゃぐちゃに血まみれにでも散らばる結末などが最期には残ってしまうだけ。
そのだれもが涙を流してなんて悲しみをするだけの心の余裕などもない。どうせここに誰がいるとも判別もつかないほどに潰されてしまうのだから。それで誰かしらがこの火をつけて街を燃え尽きるまでに業火に豪華にでも焼いてしまうだけなのだろう。
「だけれどここで君を殺してしまうのは人類の損失だよ。それは忿怒も望まないことのはずだ。どこかで拾った幼い子供を抱えたままに動き続けるのはかなり大変だろうによく頑張ったとも思うよ」
だがそこで現れてきた謎の人物。突如としてその姿を出してきたかと思えばそこから拳という暴力によってビル一本を破砕してしまった。どういう理屈か。それはただそういうポーズをパイルバンカーを放つのと同時に行っただけだ。どこからそんな物でも持ち出してきたのか。重たい轟音というのを鳴らしていけば後方にへと落下してしまう物があって。
それでバタバタと降り立ちながらもそのドでかい杭というのを拾い上がていくことをしていく者がいて。
「本当にいいものばかりがあって。これがどれだけの重さが分かっていても拾い上げるのが本当に大変なんだから」
そしてその重量たっぷりの杭というのを拾ってはその重たい重機にへと再び装填というのを行っている。
「………………ナナナナナナなんですかこれは」
「あぁこれはただのパイルバンカーだよ。しっかりその通りにするために突きつけてから貫いていくのがかなり苦労はするけれど虎の子で確かに必要分の威力を備えていることは変わらない。これで実際にビル一本を破壊するのは出来ただろう」
なんだこの………………………………………………この…………………………なんだろうかこの人は。性別の自認というのはどれになるのか肉体はどちらであるのだろうかも不安にも感じてしまっていて。
「なんてこれだけのことをしても平然としていられる貴女が怖いのですけれど」
「あぁまぁ多分みんなの元には戻れないというか」
(場所が比喩とか感情とかではなく実際に秘密基地として使っていた場所が荒らされてしまっているのであればこれでも落ち着いてなんていられない)
あれだけ荒らされてしまっていれば侵入を許したというのは明白だし理解もしてしまうことがある。あの惨状は誰かしらが何かしらの目的があって回収する者を、それだけを手に入れて去ってしまったということであって。
「それでもただの一つでも無事であればとか考えていたけれどこれだけの数が揃っていられるのは不満などない。最高傑作の方は使えたりは………………ッ」
そこでその最高傑作というのがある場所にでも向かっていけばそれが確かに無事に記憶通りの姿で置いてあった。問題があるとすれば、それは使える様子ではないということであろうか。未だ完成にまで達成されていなかったがそれで問題などない。
今更だけれども。この最高傑作を完成させておけるだけの時間がなかったことは今は惜しいとも思うよ本当に。だからなんだという話にもなってきそうだけれども。
そして今使える秘密兵器の一つでも現状に適しているという確信を得て使うことに決めた。それでどうにか気合でも入れていけばそのままではこの車検には到底出せないこいつで以て飛び出していく。緊急時だ。この事態となれば流石に法律など律義に守っている余裕などない。そもそもとしてゾンビパニックにして警察機構なども軍隊もマトモに動いている様子もないから。
「で、実際に探し回ってみればこんな困っているヒトも少なくないみたいで驚いたというわけよ。それで尚且つ必死になってまで戦い続けている者達も含めて」
「本当に凄いことだけれど。貴女のいうこともやることも凄いというか。見返りはなんでしょうか」
「ちょっと、人の親切を疑うなんてどうかしているって。君は人を信じるということを知らないんですか」
「知っていますよ。信用も信頼も。それぞれが壊されてしまう光景というのも。貴女はそれも確かに知らないだけなのでしょうけれど。その意味すらも心当たりすらもないでしょうけれど」
意味か。その意味というを憶えてしまえば後戻りなど出来ようもない。目の前にいる彼女のいう通りだ。
「だけれど、その意味というのを現在進行形で暴いていこうとしている私にとってはやりたいことを持てる力で以てやっていくしかない。精々今は子守くらいにしらなれなくても、そしてそれも満足にこなすことが出来ていなくても」
「………………その様でよくもまぁそんなことが言えますねぇ。貴女の抱えることがどのようなそれだというのは知りませんがどうせ一つの事すら為せないとしても」
「その一つのことを為したいからこその私は動き続けている。たった子守の一つでもやれることなど多くあっても最後にたどり着くのは最初のことでしかない」
本当にこれだけだ。確かに目の前にいる女性はなんか人生経験豊富な印象を勝手に覚えてしまうけれど。それはただの偏見でしかなくて。それでもこの口振りからはいろいろと大変な事件や事故にでも関わっているのだろうという感想もある。
「で?それで何の御用ですか。恩をかぶせるつもりでなければわざわざ姿を現すことなく去ってしまえばよかったのに」
「やりましたよ。一度は貴女に対しても。ですがそれでも一時の対処にしかなりませんでしたから」
そこまで聞かせてやれば思わずのけ反るようなポーズというのをしてくる。驚いてくれたようで。どこか心当たりでもなければこんなことはしないだろう。
「まさかあの死神を衝撃で吹っ飛ばしたのは貴女の仕掛けだとでも」
「そういうこと。あぁそれで何か用があるかという話であるが。一度どこか身を寄せないかということだ。まぁ」
周囲には多く死神の大鎌というのが並んでいる。それでヒトの頸というのを命というのを刈り取るための動きをしてきているのか。たった一体を相手にするのも逃げるので精いっぱいであったというのに。残酷にもほどがあるというのがあって。
「逃げるのであれば急いで欲しいですけれど。選択というのは早ければ早い方がいいでしょう。あなただってもそのまま重たいのを担いだままに自転車こぎ続けていくのも大変だとおもッ⁉」
「だったらとっとと速くそのなんとやらをしなさいよッ。どうせ何かあるんでしょうがよぉ」
こうせっつかれてしまえば気合の入れようともいうのも変わってくる。加減の仕方というのが変化ともなって多少の異常にもなるが、それは些細なことなので考慮する必要もないとする。
懐から取り出していくのは死者と聖者の福音と呼ばれる液体。この瓶一本であっても確かに効いてくれるという自信があって。ばら撒いてしまえばそれで死神の大鎌というのが硬直してくれる。この周辺にある全てがだ。
「ここから一気に逃げますよぉ」
そしてここまで来るのに時間がかかってしまった気もする。結構な時間というほどにはかからないが、それでまさかこんなところにまでやってきてしまうなんて。
「………………なんでホームセンターなんて」
「ここなら色々と物が手に入りやすいから。あぁお金なら………………街に蔓延るチンピラが気にすることでもないでしょうしね」
正面の自動ドアが動くことを確かめて入っていけば、そこでは結構なバリケードでも即席で展開されている。というか外も同様のことをされていた。出入りに面倒ではあるが、急いでいる時には裏から入ればいい。実はそちらから入っていこうとするのが最も危険ではあるのだが。
「隙というのは作為的にでも造っておけばそこを越えていこうとするところを一網打尽に焼いてしまえる」
「あのデカいマシンを置いていってしまうのはかなり危ないんじゃないかとか思うのだけれど」
このバリケードの先まで手を引かれて進んでいく。そこにいたのは先ほど助けてくれて分かれ道でそれぞれ進んでいった者二人。
「………………………………なんでこの人達がいるんですか」
「そんなの助けてもらったからに決まっているじゃないですか。まさかあれだけの力を持っているなんて。世界を影から救う魔術師ですか」
「まッさかぁ。それなら
そしてこうやってでも口を開いてくれるのは喜んでいいことなのだろう。嬉しいことなのだろう。いくらゾンビパニックの最中だとしても色々と不安にも心配にもなりそうあって。
「まぁあなたたちが呑気にでも前を抑えてくれることは感謝するよ。私だけであれば手が回らない。外回りにでもいくことが出来ているのは君たちのような英雄がいるからこそ。私は君たちを拾い上げることが出来て」
「絶頂にでも達してしまったか。それで君の不死にでもなってしまうのか。それで貴女のやりたいことなども推測してでもだ、結果の出ない過程と仮定しかない戦いなどを続けていても精神をすり減らしてしまうだけだと」
「まるでそういうことをよく知っているかのような口ぶりですねぇ。
「ッ⁉」
ナゼどうしてという疑問が頭を渦巻く。名乗ったわけでもないはずだという考えでもあったはずなのに。それでどうして名を呼ぶのか。その目的というのを疑ってしまえば、これで解決してくれるわけでもなくて。今の状況を考えて置かれてしまえば
「実情なんだよ。それは君たちだって特に理解しているのだろうからねぇ」
二人の躰というのが一瞬だが動いてしまった。仮にも自分たちを助けてくれた相手にでも頸を刈ってしまおうとしていた。その手元が動かなくなってしまっていた時点でその恐怖というのを感じてしまっている何よりの証明。
「こいつッ⁉ホラー体験でも自分でやっているのかッ」
「………………なんで冗談ですよ」
「「「はぁ?」」」
ここは他の三人で声として疑問符をあげてしまう。そのわけなんて、期待させておいて途中で梯子を外されてしまえばガッカリもする。この手段を取れるというのであれば、今までどれだけのヒトをおちょくってきたのか。
「悪いけれど都合のいい話も都合の悪い話もないんですよ。私に何ができるとしてもあなたたちにやれることなんて多くはないから。ねぇ、
そして彼女はずばりとこちらの名というのを確かにしっかりと呼んでくれた。本当に名乗ってなどいないというのに。
「
「聞くことがほとんどないだろうからその一回でも覚えていれば重要な一回だよ」
本当にこの世界においてはいろいろと不可解な事象のあることだとも思う。その事実としても色々と普段の生活としても支障のあることで。
「この今の事件からして面倒なことばかりであって」
「事件とかいってもこの異常というのがそもそも誰かの手によるのかの不安もある気もしてだなぁ」
「これで済むことなども多くないからこその色々だよ。本当に私だってもかなりの苦労をしていたが何とか対処のしようもあってだなぁ」
「………………………………」
「事件となればそれは誰かしらがこの事象を起こしたということになってしまってということであってだなぁ。今まで色々と大変なことなんて私個人としてはそう多くもなくてだけれども。私よりも貴女方であればよっぽどの経験も多くしているだろうしとか。私なんてあれよりもではなくて引き篭もる日常でのあって………………」
この女、子守はどうしたんだよ。
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