5-2 兄妹


「作戦は至極簡単だ。全員同時に私に全力で魔法を撃ち込めばいい。」



 何時も感情を捨てた、凍てついたセリスの表情はなかった。他人を拒絶し、自分の感情全てを覆い隠していた姿はなく、ひとりの──、仲間を不器用ながらも信じた騎士がいた。




「──そういう不器用な所、嫌いじゃないが、そんな時には“私にチカラを貸して。”って言って、笑えばいいんだよ。お兄ちゃんとして忠告しておく。」


「だ……誰が兄だ。」



 反論しようと身構えている彼女の細い首に、その力仕事で培われた筋肉質の腕を回す。優しい瑠璃色の瞳を細めながら、エドガーは、セリスの耳元で囁いた。





「良かったな、セリス。」





 その言葉の意味に気がついた彼女は、反射的に軽く、自称“兄”の背中を小突く。


 いつから気がつかれていたのかと、必死に彼女は考えた。ずっと誰にも分からないように隠していた片思いが成就したことを、目ざとく見つけたエドガーは、アレックスと違う形で彼女を見つめていたのだろう。




 柔らかく微笑むセリスの表情は、固く閉じていた花がようやくほころび始めているかのようだった。



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