第26話:薔薇園の情事(R-15)
「サキのときは反応が無くて残念だったから、使う花を変えてみたよ。どう? 気持ちいいかい?」
優しく話しかけながら、はだけられた胸に指を這わせる男。
ずっと狙っていたと言うが、一体いつからなのか?
せっかく手に入れたサキを湖面に浮かべて釣ろうとしたものは、どうやら僕個人だったらしい。
「ちゃんと感じられるように、意識と感覚は残してあるからね」
抵抗できない相手に唇を重ねて舌を弄んだ後、美しいものが好きな男は首から胸へと口付けを進めていく。
胸の左右の敏感なところはビクッと反応するのが良いのか、舌先で触れたり吸ったりつまんだりして昂らせる。
サキが愛撫されていた時間よりもかなり長い愛撫だ。
逃げられないが喘いだり悶えたりはできる身体を、レビヤタは存分に愉しんでいた。
「随分親しいようだったけれど、君はサキの恋人かい?」
レビヤタは相手が返事をする余裕が無いと知りつつ話しかけた。
胸から腹へ、腹からその下へと舌を這わせた後、淫魔とも呼ばれる男はその先にあるものを捕らえる。
それは、サキにはしなかった、というかできなかった行為。
完全に意識を失っていたサキでは、そこに触れたところで何も起きなかったから。
ビクッとしたり喘いだりする様子を愉しみつつ、解放を促すように攻め続ける。
攻めに耐え切れなくなった相手が大きく仰け反ると共に開放すると、レビヤタは刺激していたモノから顔を離した。
「サキのここは未通だったけど、君はどうかな?」
レビヤタの片手が、今度は体内への入口を探る。
初めてなのか確かめるため、奥の方まで触れてみたりする。
しばらく調べるように指で探った後、レビヤタは自分の欲望の塊を挿し入れた。
声を上げて悶える相手に興奮したのか、そこからは夢中で突き上げている。
昏睡状態で無反応だったサキでは味わえなかった満足感があるのだろう。
レビヤタが頂点に達して解放した直後。
「さあね? そいつの恋愛事情なんか知らないよ」
「?!」
声に振り返ったレビヤタが、目を見開いて驚く。
僕は悪い顔して、こう言ってやった。
「生憎と、ゴブリンの情事には疎いんでね」
「な……?!」
レビヤタは驚愕して、自分と交わったままの相手を見る。
この後も行為を繰り返すつもりだった新しい玩具が、違う姿になっている。
彼が嬉々として行為に及んでいたそれは、しわくちゃで醜悪な顔の魔物だった。
「いつの間に……」
「お姫様抱っこされる辺りから」
思考がフリーズしかかるレビヤタ。
僕は悪戯が成功した子供のように笑ってみせた。
ファーが得意とする回避スキルの1つ、【
自分と別のものを入れ替えて、危険から逃れるスキルだ。
僕はレビヤタに抱き上げられた後、ゴブリンと入れ替わって隠れていた。
「薔薇の香りで動けなかった筈だが……?」
「僕はそういうのが効きにくい体質なんだよ。一瞬かかってもすぐ効果が消える」
僕は根性値が高いおかげで、状態異常からの回復が早い。
高度な状態異常系でも、効くのは数秒くらいだ。
薔薇の香りでフラッとしても、レビヤタが抱き上げた時点で治り始める。
ゴブリンは城の奴隷として使われていた奴を、軽く眠らせて隠しておいた。
それを風系スキルの転移で僕と入れ替えたのが、レビヤタが色欲の相手にした者。
「そ……ん……な……」
呆然とするレビヤタは、美しくないものの身体を貪った現実が受け入れられない様子。
美にこだわる潔癖症の彼は青ざめた顔で白目を剥き、ゴブリンに刺さっているものを抜く余裕もなくブッ倒れた。
動かなくなったレビヤタに、僕はファーから習ったスキルを放つ。
光×風スキル:
キラキラ光る粒子が混ざった竜巻がレビヤタとゴブリンと庭園の薔薇を巻き上げ、クルクルと回転させる。
レビヤタの黒髪が色落ちし始め、白髪に変わったところで竜巻は消えた。
地面に投げ出された男は、白髪でシワシワの老人になっている。
血のように紅かった薔薇は、白薔薇に変わって地面に散らばった。
巻き込まれたゴブリンはレビヤタの上に落下、蕩けた顔で昇天している。
「あれ? ここはどこだ?」
そんな声がするので視線を向けると、ロボットみたいにぎこちなかった青年がキョロキョロと辺りを見回している。
レビヤタの精神支配から解放されたらしい青年を置き去りに、僕は翼を広げて空へ飛び立った。
◇◆◇◆◇
レビヤタは物理ダメージや属性ダメージが効きにくい。
それは、【快楽】という特殊なパッシブスキルを持つから。
痛みを快感に変えることで、ダメージによる生命力の低下がないという。
サキとの絆スキル【聖なる慈雨】なら、痛みではなく浄化なのでレビヤタを倒せる。
それが使えないので、代替として使ったのが
その前に精神的なダメージを与えることで、代替スキルの浄化が効きやすくなる。
美しいものが好きな奴の弱点は醜いもの。
どう見ても美しいとはいえない魔物と行為に及んだ過ちは、レビヤタには耐えられない精神ダメージとなった。
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