04 魔法少女に拾われて
「ったく、見つかったらどーするんだよ! お前、保護観察期間中なのわかってんのか?!」
「うるさいなあ…… 保護観察とか国の勝手じゃん。何で私が守らないといげねのさ」
「国の勝手って…… こっちとらお前をいつだってムショにぶち込めるんだぞ!?」
「はいはい、保護観察官さん。それより何が何だかさっぱり分からなくてこの子困惑しとる。早いところ
「はぁ…… 龍使いの粗い魔法少女さんだこと。ピンクちゃん、捕まってろよ!!」
何かカードゲームとかで出てきそうな伝説っぽい赤い龍に乗せられ、なんか青っぽい魔法少女が龍とあれこれ話している。
龍が飛んでいる高さはビル10階分ぐらいなのだが、早さは途轍もない。
窓ガラスが吹き飛ばされないか不安になるぐらいである。
「そろそろ着くぞ〜」
一気に地上に降りると急に1匹の龍が光り出して人間の姿になった。
小学生ぐらいの少女が自分と同年代の魔法少女を罵っていると考えると異様な構図である。
その小学生と魔法少女は同じくらいの身長。魔法少女が小さいのか小学生が大きいのか……
「ちょっと気になったんだけど、君、男だよね?」
魔法少女がじろじろと佑希を見て圧力をかける。
佑希は全身に大粒の汗を流しながらびくびく震えている。
「お……男? いっ……いったい、なっ……なんのことやら……」
「ふ────────ん?! ふ───────ん??!! ふ──ん???!!!」
しまいには佑希の鼻にくっつける程顔を近づけて威圧してきた。
「だっ……だって、私、付いてないでしょ?!」
魔法少女に向けてスカートをたくし上げたが、ふわふわのパニエが邪魔でよく分からなかった。
「……嘘をつくなら、もう少し上手くつかないとそのうち大変なことになるよ」
彼女の発言には妙な説得力があった。
「君の身体に起こってる変化を私たちならどうにかできるかも知れないから、とりあえず上がりなよ」
元に戻らないとどうしようもないので佑希は大人しくついていく。
彼女達の住む家は築年数の浅い一般的な郊外の一軒家なのだが、せっかくある駐車スペースに自動車が1台も止まっていないのは異様に感じる。
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「ふーん。横浜から引っ越してきて2日目に女の体になって、今日初めてこんな格好になったんだ」
佑希の事情を理解した魔法少女は身体を光らせた。
「えっ? 渡会さん?!」
「なんで私のことを……? どこかで会った覚えは無いはずだけど……」
「私、学校で同じクラスの水城佑希。まさか、渡会さんが魔法少女だったなんて……!」
「ごめん。本当に覚えていない。誰?」
「でもさ、アクアマーメイドが知らねえ魔法少女に正体を明かすなんてレアレアのレアだぜ。佑希ちゃん。学校では覚えられてねーけど、間違いなく気に入られてるよ」
「アンタ、そのクソダサネーム出すなって言ってるでしょ!」
「文句なら魔法少女になった時の自分に言え! やーい、アクアマーメイド、アクアマーメイド〜」
「……ごめん。こいつがうるさくて」
海帆は赤龍の口にガムテープを貼った。
アクアマーメイド。なぜか横浜でも聞き覚えのある名前。
警察官や海帆の口ぶりから魔法少女は複数人いると想定されるが、横浜のような街でこの世に存在するとは思われていないであろう魔法少女の名前を聞いたということは、相当強い人なのではないだろうか。
「男の人が女の人になったり、女の人が男の人になったりすることはここではよくあるんだけど、女になった上に魔法少女になることは──」
「ひょっとして、あんまりない……?」
海帆は静かに頷いた。
「私が知っている範囲では初めて見たかも。多分、佑希の場合は魔力の強さが関係あるんだと思う。学校にいる間、どこかから強い魔力を感じてていづかったし」
「いづい……?」
「……なんか合わない感じ」
「なら俺はコスプレ女じゃなくて、魔法少女になったってこと? っていうか早く元に戻りたいんだけど…… できれば男にも戻りたい。」
「変身解除はリラックスする感じで力を抜いてみて。男に戻る方法は……
ごめん、見当もつかない……」
言われた通りに力を抜くと制服姿に戻った。
「わあっ! 元に戻った! ありがとう!! 男に戻る方法は……追い追い考えることにするね」
「魔法少女、大変かも知れないし、私みたいに保護観察系魔法少女になるかも知れないけど、悪くはないかもよ……?
そうだ、LOINE交換しておいた方がいいよね」
猫俣ですら交換できなかったLOINEを容易く入手できたのは誇らしい。
「渡会さん、今日はありがとうね! また明日〜!!」
「うん。あと、私のことは海帆でいいよ。また明日」
玄関でローファーを履いた佑希を見守り微笑んでいた。
「やっぱり、佑希ちゃんのこと気に入ってるんじゃんよお」
「いいでしょ。なんか面白いし」
「あーあ、なんでこんな奴の保護観察官なんか引き受けたかな、アタシ。4000年生きて初めてだ。お前みたいなの」
「アンタに言われたくない」
暫くして佑希から迷子になったとLOINEが来た。
『迷子になったから助けて』とのメッセージに、想定していた困ったこととは違ったが、初めての場所でこうなるのは仕方がない。
海帆は佑希の元へ行き、歩いて数分のところにある地下鉄の駅に案内した。
佑希は家族と合流することに成功し、ご馳走にありつけた。
この物語は魔法少女になってしまった水城佑希が魔法少女から男に戻る、そんな感じの物語である。
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