【改稿作業中】まじかる世界にようこそ〜どうして俺が魔法少女に!?〜
どってんかい
1〜30
01 これは現実?①
【水城佑希 (みずき ゆうき)】はいつもより慌ただしい春休みを送っていた。しかし、新天地での生活も慣れてきて久しぶりに朝10時近くまで
上体を起こしてベッドを出ようとすると身体がおかしい。股間は何か物足りなく胸に謎の重量感があり、急激に髪の毛が伸びている。
「えっ……」
声もいつもより高い。これは絶対におかしい。熱や立ちくらみはないので風邪ではないことは確かである。とりあえず洗面所に行って現状を確かめる必要がありそうだ。ドタドタ音を立てながら部屋を出る。
目の前の鏡には翡翠色の瞳に背中の辺りまで伸びた桃色の髪、だぼっとした部屋着をきた美少女が立っていた。
「わあああああっ!! だっ、誰だ! これ」
「うるさい! つむ……って誰?! 何、強盗!?」
「えっ、私、叫んでないよ。誰?! なんでここにいるの?!」
佑希の叫び声に母と妹の【紡(つむぐ)】が駆けつけた。
おかしな女が洗面所に立っていれば恐怖に思うのは当然だろう。
「違う! 俺だよ俺! 俺だよ! 水城佑希!」
「闇のお仕事をするだけじゃなくて、オレオレ詐欺をするなんて……! 早く出ていかないと警察を呼びますよ!」
確かに、服装や容姿は息子に似ているのだが、性別が異なるのだからこの主張には無理がある。せめてさらしを巻いて女性的な身体を誤魔化すなど工夫をしてほしいものだ。
一方、紡の視線は女の首の付け根を見ていた。本物の佑希ならここに黒子があるはずだ。
「……お母さん、あの人はお兄だよ」
「うんうんうんうん」
佑希の首は赤べこのように激しく頷いた。
「……紡がそこまで言うのなら」
2人の警戒心が消えてしまった理由が理解できないため、頭の中には『?』が浮かび上がる。自分が自分である根拠がよく分からないまま納得してしまうのは困ったものだ。けれども、指摘するともっと面倒なことになるのは間違いないだろう。
「でも、これ、プロジェクションマッピング的なやつとかじゃないの? お兄がいきなりお姉になることなんてあり得なくない?」
紡が近づいてきて頬をつまんでくる。見た目はあまり変わらないが、姉の方がスタイルが良いのでふつふつと嫉妬心が湧いてくる。
「これは紛れもない現実なの。この街では普通ではないことが普通なの。そう思えば全部辻褄が合うでしょ?」
発言はともかく、母親に新しくできた丘を触られるのは奇妙な経験である。どのような気持ちで揉んでいるのか聞いてみたいところだ。
「ひんっ……!」
「ちょっと、お母さん……! 私、部屋戻るから」
今度はズボンを強制的に下ろされた。いくら親でも無許可でこんなことをされるのはいかがなものか。
「なってるねなってるね」
「なってるって、無くなってるってこと……?」
「うん。本当に女の子になってる」
「いや、嘘であって欲しいんだけど──」
異性になっていることを普通に飲み込みつつある母親は何者なのだろうか。自分でさえ今起こっていることを理解できない。狭い洗面所に立っている2人の間には大きな海溝のようなものがある。
「嘘って言われてもねえ」
「どうすんの? これ。明日入学式なのに。こんな無茶苦茶言って信じてくれないだろ!」
不運なことに、佑希が入学を予定しているのは男子校。普通の感覚では男子校に女子が入学できる確率はほぼ0に近い。仮に共学や女子校に通うにしても、新しい制服を作ったり身体測定をしたりするので、とても1日で間に合うとは思えない。入学式で制服を着ていないのはとても目立つに決まっている。
「そんなことはないよ。『昨日まで男だったけど急に女になりました』なんて言っても出鱈目だと思わないよ。もし万が一、受け入れてくれる所がなくても通信制高校とかあるんだし」
「本気で言ってる……?」
「とにかく、早めに学校に行って説明しとかなきゃ。早く準備して行くよ」
憂鬱な感情と戦いながら支度をして母に車へ押し込まれる。学校までの道のりは長くて短いと感じた。
学校に起こったことを説明したが、設備や生徒の心情的にここに通うのは難しいという結論に至った。
話を聞いていた校長が提案したのは学力が同程度の女子校。『女子校』という単語は佑希をどきりとさせるが、校長は『そんなに不安なら、性別のことは水城さんと一部の人たちだけの秘密にしておけばいい』と楽観的に語った。
面談が終わり、青春を送るはずだった校舎をぼんやりと見つめる。無骨なクリーム色の校舎は憧憬を抱かせるようなキラキラしたものではないが、掴みかけていたものを手放すのは心に穴が開いてしまう。
窓越しに見える教室では先輩になるはずだった人が教室の飾り付けを行なっている。体育館からも何か作業をしている音が聞こえてきた。
「ほら、ぼっとしてると間に合うものも間に合わなくなるから早く行くよ!」
「うっ……うん……」
この時の母は般若のように感じた。
元に戻る方法をどうにかして見つけたい。自分に起こっている目まぐるしい変化に恐怖心を感じている。
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