第2話 男ってだけで

 パンツを洗い、どこに干すか見渡すとトイレらしきドアが2つあった。

 1つは予想通りトイレで、もう一つのドアはシャワールームだった。

 とりあえずパンツはシャワールームに干した。


 しかしこの個室、シャワーもあるし、応接セットまであった。

 応接セットのソファーに座り、どうしてこうなった?と考えるも答えは出ない。


 そんな中、入口ドアにノック音が響く。

「失礼します」と入ってきたのは女医さんらしき人と先ほどの看護師らしき人だった。


「目覚められて安心しました。私は男性様担当医師の山花と申します。

 よろしくお願い致します。

 気分は如何ですか?頭病みや体調不良は感じませんか?」


「あっ。えーと、体調は問題ないんだが、俺はどうしてここに入院してるのかな?」


「こちらの田島が出勤時に当医院の前で倒れていた貴方様を発見して、こちらで保護させていただきました」


「そうだったんですね。ありがとうございます。

 実は記憶が無くて、俺の服や所持品に身分証明みたいなものは無かったですか?」


「はい。衣服のポケットには何も無く、所持品もありませんでした」


「そうですか。これから俺はどうやって生きていけばいいのか」

 こんな高級個室の支払いもできそうもないしな。


「記憶が無く不安だと思いますが、これからの生活に関しては男性保護省でサポートして頂けますので衣食住のご心配はありませんよ」


「男性保護省のサポートって何ですか?」


「今、世界は男性が少なく保護対象になってます。

 住居とその他にも支援金が給付されますので、生活に支障なく暮らせるはずです。

 当院から身元不明男性の報告を致しますので、保護省の職員が来ましたら相談してください」


 男ってだけで、お金貰えるのか?

 良い所に転生?したな。


「入院費はどうなりますか?」


「安心してください。入院費もサポートされてますので」


「はぁ、良かった。こんな高級個室の料金なんて払えないと思いましたよ。

 俺はどれくらいの間、意識不明だったんですか?」


「こちらで保護させていただいてから三日間です」


「三日も……あっ、今って西暦… 西暦って使ってますか?」


「使ってますよ。今は2×××年です」


 という事は未来へ来たのか……


 ここで盛大におなかが鳴った。


「何か食べれそうですか?」


「三日も意識不明だったのかと思うくらい、がっつり食べたいです。

 記憶喪失だってのに。あはは」


「前向きでいいじゃないですか。

 何が食べたいですか?」


「えっ。病院食でないの?」


「本来はそうですが、男性様の希望が優先されますので」


「じゃあ、肉料理が食べたい。

 あと……タバコ吸いたい。お金貸してもらえると嬉しい」


「私が立て替えますね。

 田島さん。コンビニまでお使い頼める?」


「ライターとコーラも。コーラってある?

 タバコは10ミリなら、何でもいい」


「10ミリのタバコとライターとコーラですね」

 山花さんからお金を預かり、個室から出る田島さん。


 身元不明者にためらわずお金を貸してくれるなんて、すごい世界だな?

 それかこの先生が凄いのか?

 ワクワクしてきた。








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