魔法少女が見た夢は

卯月小春

第1話 女子高生はメイドになる

「ねぇサキ、メイドにならない?」


 高校生になってすぐのこと。

 私は友人からメイドのお誘いをいただいた。


「ちょ、軽蔑する顔しないでお願いだから趣味とかじゃないからバイトの話!」


「私、叔父さんに顔向けできないことはしないって決めてるの」


「待って待って、萌え萌えキュンとかのメイドでもないから!

 確かに喫茶店ではあるんだけどあたしの親戚のおじさんが働いてくれる人を探してて、そこで働かないかって話!

 制服はロング丈のメイド服だけど、いかがわしいお店とかそんなんじゃなく!」


 見せられた画面にはシックな雰囲気の喫茶店の写真にメイド服をきた従業員が映っていた。

 本当に普通の喫茶店に見える。


「ていうか、もしそういうお店だったとして咲に勧めるわけないじゃん!

 咲の叔父さん、笑顔で詰めてくるのめっちゃ怖いんだからね!?」


 私とこのにぎやかな友人、立花侑里タチバナユウリは小学生の時からの付き合いで、いわゆる幼馴染というやつで。そのためお互いの性格も考え方もわかっているし、なんなら泣き所だってわかっている関係性だ。

 なので、まあ心配はいらない、はずなんだけれども。


「……なんでメイド服なの?」


「みんな同じ服装同じ髪形にすれば身バレしたりストーカーに狙われる可能性が低くなるだろう、っていうのとおじさんの趣味」


 思っていたより真面目な理由だ、と感心するのもつかの間、私は一瞬でジト目になる。


「ほら、時給だっていいよ?

 少しでも叔父さんの負担を減らしたいって言ってたじゃん、ここなら一応あたしの親戚だから叔父さんにも受け入れてもらいやすいかなって!」


 私は養子だ。3歳の時に両親が事故で亡くなり、父親の弟である叔父さんが独身にもかかわらず私を引き取って育ててくれた。遠慮する必要はない、と言ってもらっているがそれでも少しでも負担は減らしたい。


「侑里はそこで働かないの?」


「あたしは茶髪にしちゃったからダメなんだって……。」


 相当こだわりが強そうだ。変態の間違いじゃないのか。


「ねっだからどうかな?咲、絶対このメイド服似合うし見てみたいんだよ~、お願い!」


「……しょうがないなぁ」


 私はメイドになることにした。

 友人の親戚のお店で、時給がよくて、いかがわしくない、叔父さんの許可もとれそう。その条件を確認し、わりと乗り気で。


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